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先日6月10日、大阪高裁第12民事部(石井寛明裁判長)原告高橋さんの控訴審が始まりました。
原審の大阪地裁第2民事部の判決はとにかく酷かった。
弁護団は、100頁近い控訴理由書と眞鍋穣医師の意見書等の証拠を提出。併せて、眞鍋医師の証人申請を行い、代理人を代表して事務局長の愛須勝也弁護士が、意見陳述を行いました。

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第1 原判決の判断枠組みの誤り
1 控訴人の高橋さんは、4歳1か月であった昭和20年8月9日、長崎県南高来郡南串山村京泊の親戚方におり、原爆投下から3日後の8月12日、長崎市竹ノ久保町に居住していた祖母と三菱造船幸町工場勤務していた叔父を探すために、母に連れられて、爆心地から約1.1km付近まで入市しています。申請疾病は心筋梗塞です。
2 原判決は、まず、高橋さんの浴びた被曝線量について、「当該申請者の被曝状況、被曝後の行動・活動の内容、被曝後に生じた症状、健康状態等に照らして、誘導放射化物質及び放射性降下物を体内に取り込んだことによる内部被曝の可能性を十分に検討する必要があるというべきであり、また、内部被曝による身体への影響には、一時的な外部被曝とは異なる特徴があり得ることを念頭に置く必要があるというべきである」と判示しました。
3 そして、「DS02等により算定される被曝線量は、飽くまでも一応の目安とするにとどめるのが相当」であるとした上、ここでも、「被爆者の被曝線量を評価するに当たっては、当該被爆者の被曝状況、被曝後の行動・活動の内容、被曝後に生じた症状、健康状態等に照らし、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性の有無を十分に検討する必要がある」と判示しています。
4 そして、控訴人の申請疾病である心筋梗塞については、放射線起因性を肯定する医学的知見が集積している上、近時、放射線被曝がヘルパーT細胞数の減少に伴う免疫機能低下を引き起こし、ウイルスによる慢性的な炎症反応を誘発し、心筋梗塞発症の促進に寄与していることを示唆する最新の医学的知見等に加え、医療分科会が策定した現行審査基準でも一定の条件の下で積極認定すべき疾病とされていること等を理由に、一般的に放射線起因性を肯定しています。
5 ここまでの判示を読んでいますと、これまでの原爆症認定集団訴訟の判決において、何度も繰り返されてきた判断枠組みと同じです。
かつて、原爆症認定は、2km以遠の遠距離被爆、入市被爆は一切認められず、悪性腫瘍以外の非ガン疾患の放射線起因性も認められませんでした。
最高裁松谷訴訟で松谷英子さんが勝訴した後も、原因確率という実態に合わない基準の機械的適用によって被爆者の足切りがされてきました。
そこで、全国の被爆者が集団訴訟を提起し、裁判所の中で、自らの被爆体験を語り、入市被曝・遠距離被爆でも急性症状が生じたりすることが明らかになり、判決でも総合判断の枠組みが定着し、認定基準も拡大されてきたのです。
6 ところが、現判決は、途中までこれらの到達点をなぞりながら、控訴人の申請疾病の放射線起因性の具体的当てはめの段階に至るや、突然、浴びた被曝線量を「具体的・定量的に明らかにすることができない」というまったく異質の基準を持ち出し、高橋さんの被曝線量は大したことがないと切り捨てたのです。
控訴理由書の中でも同種事件の判決を引用して具体的に主張していますが、これまで、多数の原爆症認定訴訟で下されたどの判決にもない異質の基準です。
7 そもそも浴びた放射線を定量化することなど出来るわけがありません。
原判決の立場は、被爆者に不可能を強いるもので、被爆者援護法の趣旨にも真っ向から矛盾するものであり、被爆者が命をかけて明らかにして判決の判断基準に結実させた成果を冒涜するものであり決して認めることができません。
8 付言しますと、原審である大阪地裁第2民事部は、本件判決後も、原爆症認定申請について、4人の被爆者の申請について判決を言い渡していますが、本件と同じ枠組みで判断をしています。
ところが、具体的結論になると、2人については、浴びた線量が具体的に明らかでないとして請求を棄却し、2人については、具体的線量を明らかにしないまま請求を認めています。そもそも、認定申請の却下処分を不服として訴訟に至る原告はおしなべて線量が明らかでなく、被曝線量を定量化できない被爆者です。
被曝線量の具体的・定量的主張を要件とする原判決の枠組みは誤っていると言わざるを得ません。

第2 被曝後の状況についての判断の誤り
1 原判決は、高橋さんの被爆状況について、
・昭和20年8月12日に、爆心地から約1.1~1.2kmの地点に入市し、水を飲んだり、野いちごを食べたりしたこと。
・入市後、すり傷程度の怪我で化膿するようになり、予防接種を受けるたびに化膿し、酷いときには骨が見えるくらいまで化膿したこと。
・昭和43年頃、結膜炎が悪化して眼球摘出をして失明していること。
などの事実を認定しています。
2 ところが、判決は、入市以前と比べて、化膿の態様が酷くなった時期やその程度のほか、化膿の原因となった怪我の状態や化膿に至った状況、経緯等の詳細は具体的に明らかではなく、また、結膜炎として治療を受けたにもかかわらず失明するに至った状況、経緯等の詳細も具体的に明らかではないとし、高橋さんのこれらの症状、健康状態が「放射線被曝による影響で免疫力が落ちたことに起因するものであると直ちに認めることはできない」と結論づけているのです。
3 しかしながら、原判決は、被爆後、高橋さんに生じた症状について評価を誤っています。高橋さんは被爆をする4歳までは元気でしたが、被爆後の予防接種による化膿や眼球摘出などの事実は、免疫力の低下によって生じたとしか考えられません。
4 この点については、40年以上にもわたり、内科、小児科の臨床医として医療に携わり、免疫アレルギーに対する専門的知見を有する眞鍋穣医師の意見書を提出していることろです。
眞鍋医師は、京都大学医学部を卒業後勤めた同大学附属病院小児科で免疫アレルギーの研究を開始するとともに、臨床医として急性心筋梗塞や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病の治療に携わってきた経験豊かな専門家です。原爆症認定訴訟においても、大阪地裁、高裁のほか、東京高裁、広島高裁でも証言するなど放射線の人体影響について専門的知見を有しています。
その真鍋医師によると、高橋さんの病歴の特徴は、4歳まで元気であったにもかかわらず、被爆後、予防接種を受けただけで骨が見えるほど化膿する、若くして眼球摘出を受けるなどの症状にあり、特に、結膜炎から眼球摘出を受けるという経過は、細菌感染に対する抵抗力の著名な低下がなければ考えられないとされています。
眞鍋医師は、高橋さんのこれらの症状の発症時期からして、高橋さんの免疫力の低下は先天的なものではありえず、後天的なものであるとしか考えられないこと、その原因としては原爆放射線の被曝による免疫力の低下と考えるのが最も妥当と結論づけています。具体的には、後天的な細菌感染に対する免疫不全である好中球(もしくはマクロファージ)機能不全とされています。
5 眞鍋医師の意見のポイントは、高橋さんの症状は被爆後に生じているということです。その点は、原審においても立証しているにもかかわらず、原判決はその評価を見誤り、化膿の態様が酷くなった時期や程度が明らかでないとして放射線の影響を無視してしまったのです。
6 このほか、原判決には、心筋梗塞の危険因子である脂質異常症、高血圧症等との関連性についても誤った判断をしていますが、この点の詳細については、眞鍋意見書に譲ります。

第3 結論
以上のとおり、原判決には、看過できない重大な違法があります。
多くの被爆者が自らの生命をかけて築き上げた司法判断の到達点を後退させる原判決を確定させることは認められません。
控訴審の審理においては、すでに眞鍋医師の証人申請を行っていますが、裁判所におかれましては、ぜひ、同医師を採用していただいて審理を尽くし、誤った判決をただしていただきたいと思います。
以上



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2020.06.12 Fri l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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