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被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(77)
11月22日地裁第2民事部
原爆症認定訴訟が切り開いてきた歴史と到達点に真っ向から逆行する異常な判決!
こんなものに屈することなく前を向いて闘い続けていこう!
2019年11月25日(月)


 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の尾藤廣喜弁護士(弁護団幹事長)の弁を借りれば、「京都・小西訴訟以来30年以上原爆症認定訴訟に携わってきたが、その中で率直に言って最も悪い判決」、というとんでもない判決が、11月22日(金)大阪地裁第2民事部(三輪方大裁判長)で出されてしまった。

 原爆症認定と国家賠償を求めて大阪地裁で争っている原告は第2民事部の7人。そのうちの3人が11月22日(金)、判決言い渡しの日を迎えた。原告の一人は高橋一有さん(78歳、兵庫県三木市)。4歳の時、8月12日に長崎の爆心地から1.1㌔まで入市、心筋梗塞を発症して2011年に認定申請、2013年年1月に提訴。申請から8年、提訴以来ほぼ7年を要して今日の日を迎えた。あとの二人、A・Tさん (77歳・女性、大阪府河内長野市)とM・Yさん(故人・男性、滋賀県)はすでに自庁取り消しで原爆症認定を受けていたが、国家賠償を求めて裁判を続けてきた原告だ。
 判決を下す三輪裁判長は2017年春から第2民事部の担当をしてきた。この2年半、第2民事部は原告数が多かったこともあり12回もの弁論期日を重ねた。私たちもその都度この裁判長と向き合ってきた。そして今回、三輪裁判長が下す初めての判決。どんな人なのか、どういう傾向の人なのか、私たちは知る由もない。ただ、今年5月15日の結審の時には、判決言い渡しが半年も先になることをやや釈明するかのような感じで、あえて「判決は一生懸命考えたい」と最後に一言添えられたのが何故か印象に残っていた。

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 いつものように裁判所前の若松浜公園で判決前集会を行い、入廷行進をして1007号法廷に入った。午後1時10分開廷。主文の読み上げには原告名がなく事件番号だけ。傍聴席の私たちには誰についての判決なのか分からない。しかし、いずれも「棄却する」の言葉だけは明瞭に響いてきて、全員、認められなかったことはすぐに分かった。なんという判決だ!腹立たしくなって席を蹴って退席しようとした時、裁判長が判決の理由を口頭で述べると言い出した。ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟では珍しいことだ。
 口頭なので、詳細で正確なところは分かりかねたが、「一般的には外部被ばく、内部被ばくの影響は肯定されるものの、それ以上に進んで、原告の放射線被曝量がどの程度か具体的・定量的に認めることはできない」、「原告の申請疾病(心筋梗塞)の発症は56歳であり、脂質異常症、高血圧症、加齢が原因となった発症とみても不自然、不合理ではない」等々の言葉が並んだ。原告の浴びた被ばく線量まで具体的な数字で示されたように思う。原告は被ばく線量を具体的に示さなければならない、他原因があればそちらが重視される・・・まるで国の主張をそのまま受け入れた、なぞったような判決理由ではないか。半年もかけてこんな判決を準備してきたのか、と落胆と憤怒の入り混じった気持ちを抱きながら、裁判所前の旗出し集会へ、そして報告集会会場の北浜ビジネス会館へと足を運んだ。旗出しは「不当判決」の4文字。これだけの旗出しは近畿訴訟では初めてのことになった。

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 重い雰囲気の中、午後2時から報告集会。まず愛須勝也弁護団事務局長から今回の判決をめぐる状況と結果について怒りの報告が行われた。要旨は以下の通り。

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 大変残念な結果となった。今回の裁判長については、これまでの他の裁判の判決状況などから警戒感をもってはいたがこんなことになるとは。
 原告の高橋さんの申請疾病は心筋梗塞。積極的認定範囲とする翌日までの入市、爆心地から1㌔以内入市という基準からは少しずれるが、同じ近畿訴訟でも同様の被ばく状況で心筋梗塞を原爆症と認定された判決実績がある。それは心筋梗塞発症にはしきい値はない、線量基準はないのだと明瞭に判断されたものだった。今度の高橋さんの判決でそのことをより確固としたものにしていく、高橋さんで勝てなければ認定される人はいないことになる、そういう位置づけでのぞんできた裁判だった。
 しかし、判決は国の主張をそのままなぞるようなものだった。冒頭から高橋さんの被爆の程度について論じ、国の主張する今中論文に依拠すれば高橋さんの被ばく量は0.0014グレイだとそのまま述べ、そればかりか裁判所自らがわざわざ入市状況の係数などを計算して実際の被ばく量は0.000056グレイになると示した。残留放射線、内部被ばくはまったく無視してよいとし、高橋さんの浴びた被ばく線量は非常に低いのだと断定。「誘導放射化物質及び放射性降下物から発せられる放射線による外部被曝及び内部被曝を受けた可能性があるということができるものの、それ以上に進んで、その放射線被曝量がどの程度かを具体的・定量的に認めることはできないといわざるを得ない」というのがこの部分の結論だ。言葉を変えれば、原爆症と認定するには根拠のある具体的な被曝線量を立証しろ、と言うことだ。一体、被爆者援護法の国家補償的性格をどう見ているのか、原爆症認定訴訟の歴史で積み重ねられてきた判決実績をこの裁判長はどう受け止めているのか、まったく理解していないのではないかと言わざるを得ない。そんなものは一切無視して、普通の民事訴訟と同じ論理で判決されてしまっている。
高橋さんの心筋梗塞発症の危険因子は上げれば山ほどある。高脂血症も高血圧も、そして加齢も。今回の判決は、放射線の影響は否定できないものの、その程度は立証できない、そして他原因も高いので認定申請を棄却するというもの。原爆症認定訴訟で積み上げられてきた成果を根本からひっくりかえす結論であって、これまでの判決の到達点に照らしても到底認めるわけにはいかない。
 原爆症認定訴訟において国家賠償請求が認められた例は過去2件しかなく、実際には難しいことになっている。それでもA・Tさんの場合は、平成7年と平成20年と2度にわたって同じ疾病の申請が却下処分され、行政処分のひどい実態が明らかになっていた。それに加えてさらに、国は遂にはA・Tさんの疾病を認めざるを得なくなり平成29年に自庁取り消しを行ったが、謝罪の一言もなく認定通知を送り付けただけだった。こんなひどいやり方はない。当然国家賠償するに値するとして請求を続けてきた。
これに対して判決は、「認定申請についての審査会の意見に従って却下処分した場合は、特段の理由がない限り、違法の評価は受けないと」とした。審査会の答申通りやっているのだから行政(厚労大臣)には問題はないというわけだ。これも認定行政の実態をまったく無視したとんでもない判決理由だ。
 このような判断枠組みでいくと、今後も続く裁判の原告は誰も認められなくなってしまう。実際に第2民事部は年明けの1月、それから4月と、同じ裁判長の下での判決が続く。何とか克服していかなければならない。
名古屋、広島、福岡の各高裁から上告された3件の訴訟は最高裁で受理され、年明け1月に弁論が開かれることになった。2003年以来の集団訴訟と運動によって原爆症認定制度は被爆の実態に基づきながら拡大を勝ち取ってきた。そのことを最高裁にも社会的にもしっかりと訴えていく機会にしなければならない。原爆症認定訴訟の終局的な解決に向かっていく今、そういう状況だからこそ今回の判決は控訴して、高裁で絶対にひっくり返すことが必要だ。
今日の判決言い渡しにはA・Tさんと高橋さんの二人の原告が出廷し、自身で直接判決を聞くことになった。A・Tさんは体調不良をおしての出廷だった。高橋さんも体調が十分ではない中、自宅の兵庫県三木市を早朝に発って駆けつけられた。高橋さんの場合、ご家族が高橋さんの健康を心配して裁判には反対だった。それでも高橋さんは、自分のような被爆者が原爆症に認められないような事態を放置しておくことはできない。自分のためだけではない、多くの被爆者のための裁判なのだと、氏名も公然と明らかにし、周囲からいろいろ言われるようなこともこあったようだが、すべてを乗り越えて今日まで訴えてこられた。
こうした被爆者の思いに裁判長は向き合おうとしなかった。被爆者一人ひとりの思いがここまでの裁判の到達点になっていることをまったく理解していない、理解しようとしなかった。私たちはこうした被爆者の姿を裁判長に見せられていなかったのだといわざるを得ない。

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 かって、文字通りの集団訴訟を闘っていた頃は、難しい症例の原告があっても集団訴訟の中で一緒に乗り超えてきた。今は一つひとつの裁判が1人から2人の少ない原告での闘いになっている。普通の民事訴訟のように、具体的な症状についてより緻密な審理が行われ、本来の訴訟の趣旨から外れていきおい医学的な分析などにはしりがちだ。
この事態をなんとか克服していかなければならない。今、原爆症認定訴訟は本当に山場、踏ん張りどころとなっている。こんなところで止まっていたら、今まで何年も何をしてきたのかということになってしまう。

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 判決の分析、判決に対する声明の作成、そして記者会見を終えて弁護団の人々も報告集会に駆けつけてきた。まず、代理人として高橋さんを担当してきた小瀧悦子弁護士から原告団・弁護団・支援ネットワーク連名の声明について説明と報告が行われた。予想もしなかった判決結果、しかもあまりにもひどい内容であったため声明について検討し作成するのも随分時間がかかったようだ。声明は、被ばく線量の確定という不可能なことの立証を原告に求めた問題、高脂血症や高血圧など他原因自体が放射線被ばくによるという知見が確立していることを無視した問題、そして行政のやり方を追認しただけの国家賠償請求棄却の問題等にまとめられ、強い抗議と国及び厚生労働省に対する3点の要求を示した。

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 次いで尾藤弁護士から記者会見の状況なども含めて以下の報告が行われた。
会見では、これほど線量にこだわった判決がこれまでにあったのかとか、高橋さんのような入市日で認定されたことはあるのか、等々相当に詳細な質問が相次いだ。
 私はこれまでで最も悪い判決であることを強調した。その理由の第一は、原告である被爆者に被ばく線量の確定を求めていること。被爆当時どこをどう歩いたかも分からない人に対して、どのような放射線をいくら浴びたのか立証しなさいと言っているわけで、およそ不可能なことを強いている。それに答えられないと認められないというのであれば、認められる人は一人もいなくなる。すでに自庁取り消しによって認定されている二人の原告だって、被ばく線量の確定を求められていたら棄却されていたことになる。今の厚労省の基準よりもとっと厳しいことを求めたのがこの判決だ。
 もう一つは、他原因について。脂質異常症、高血圧、加齢、こういうものが申請疾病の発症に一定程度要素としてあると立証されれば、原爆症は認められないとしたこと。これまで積み重ねられてきた判決の考え方は、申請疾病に放射線起因性が一応認められれば、他原因があったとしても、他原因がもっぱらの原因として立証されない限り、原爆症を認めるとしてきた。まったく逆転した反対の考え方だ。
 今回の判決は、原爆症認定訴訟の歴史で積み重ねられてきた考え方をまったく踏み外した、特異な判決と言わざるを得ない。こんなことに屈することなく頑張っていこう。

 報告集会参加者からも、判決に対する率直な感想、意見、これからさらに頑張っていこうという発言が様々になされた。このノーモア・ヒバクシャ訴訟、狭い範囲での裁判運動に止めてはならない。原爆投下によってどれだけの被害が起きたのか、原告となっている被爆者個人の健康問題に狭めるのではなく、被害の実態をもっと掘り起こしながら大きな世論作りをめざしながら進めていく必要がある。同様に、核兵器廃絶をめざす運動、憲法9条の改悪を許さず平和を守り抜くとりくみと共に、その中で、そうした運動に支えられたノーモア・ヒバクシャ訴訟にしていこう。11月11日に「公正な判決を求める署名」を第2民事部に提出したがその数は千にも満たない688筆だった。率直に言って私たちの支援運動も決して十分なものとは言えなかった。どのような裁判長の下であっても幅広い世論に押された、そのことが具体的に示される支援運動にしていく必要がある、といった内容であった。

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 最後に藤原精吾弁護団長から今日の日のまとめと、これからさらに頑張っていこうというよびかけが以下のように行われた。
今日の判決がどのようなものであろうと、私たちのめざすべき目標はハッキリしていて、それを目指して歩まなければならない。その一つは、国が起こした戦争によって、原爆が投下され、それによってもたらされた過酷な運命を被爆者は何十年も生きてこざるを得なかった。それに対して国は責任を取らなければならない。被団協は命の保障、暮らしの保障、平和の保障と3つの保障を求めているが、被爆者援護法はその保障の中の一部でしかない。法の下での裁判なので今私たちは放射線被ばくに限ってしか要求できていないが、本来被爆者は現行法=被爆者援護法の抜本的改定を求めてきた。その中で裁判は勝利を重ね、認定制度を少しずつ拡大してきた。裁判官の当たりはずれはある、心得の悪い裁判官はいる、それは裁判だからしようがない。しかし私たちはそれにくじけるわけにはいかない。

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 明日(11月23日)ローマ法王が来日する。被爆者を励まし、被爆者と同じ気持ちで核兵器を止めなさいと言い、日本政府にもそのことを示しに来る。私たちは法王の来日をそのように受け止めたい。
近畿訴訟でこれから予定されている判決は同じ第2民事部であり、厳しいことは予想せざるを得ない。しかしたとえ不当判決が出ても私たちの歩む道は変わらない。被爆者に対する責任を果たさせること、核兵器をなくすこと、この二つ目標に向かって歩み続けよう。
 12月に何度目かとなる厚労相との定期協議が行われることになった。大臣が官僚答弁を読み上げるだけの何にもならない協議はもうやめて、今回は私たちの側が言いたいことを言えるスタイルの協議会にしようと話し合っている。
年明け1月21日には最高裁で弁論が開かれることになった。原爆症認定訴訟で最高裁の口頭弁論が行われるのは初めてのことだが、だからと言っていい判決が期待できるわけではない。最高裁が何を言おうが、口頭弁論の開かれる機会に、私たちの訴えを広く社会に知ってもらう、そういうチャンスにしなければならない。最高裁での弁論機会というチャンスを生かして、被爆者の実態、国の政策の誤りを明らかにし、メディアには全国に広めてもらう。広範な人々に、この問題についての認識をもう一度持ってもらう、そういう活動をしていきたい。
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟もまだまだ終点に行き着かない。これからまだしばらく闘う必要があるが、目標はハッキリしている。みんなで共通の目標に向かって前進していきたい。

 原告のA・Tさんは体調を考慮して報告集会には参加できなかったが、高橋一有さんは集会の最後まで参加され、みんなと共にあった。「判決後の弁護士のみなさんの検討会議に参加していて、私どものためにここまで一生懸命やっていただいているのかと感動した。体が悪いとかしんどいとか言っておられないと強く思った。ここまで来たら、最後の最後まで頑張ります」と力強い決意が述べられた。
 報告集会参加者と支援を続けてきた人々全員から、高橋さんへの労いと激励の思いを込めた花束が贈られて、報告集会を閉じることになった。



ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2019年12月24日(火)13:10 控訴審・高裁第6民事部 81号  T・Iさん弁論
2020年 1月29日(水)14:30 控訴審・高裁第2民事富 82号 苑田さん最終弁論
2020年 1月31日(金)13:10 地裁第2民事部 1007号法廷
Y・Mさん、O・Hさん、Y・Iさん判決言い渡し
 2020年 2月28日(金)13:30 控訴審・高裁第6民事部 81号  T・Iさん弁論
 2020年 4月10日(金)14:00 地裁第2民事部 1007号法廷  N・Kさん判決
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2019.11.30 Sat l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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