FC2ブログ
被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(66)
スライドを活用して被爆の実相を訴え、内部被曝軽視を徹底批判!
第7民事部は2人の原告が結審、判決は来年2月28日!

2018年10月1日(日)

 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟第7民事部(松永栄治裁判長)では、9月27日(木)、Dグループの2人の原告について最終意見陳述が行われ、結審となった。原告は苑田朔爾さん(76歳、神戸市)とK・Sさん(91歳・男性、京都市)。苑田さんは長崎市で4.0㌔の直接被爆と入市被爆をし、前立腺がんの発症で認定申請してきた。K・Sさんは8月6日当日から広島市で入市被爆し、狭心症を発症して認定申請してきた。二人とも提訴は2015年の8月6日、広島原爆投下の日。結審までに3年を超える時間を要した。K・Sさんは体調不良のため出廷できなかったが、苑田さんはこの日も法廷にあって自らの審理の行方を見守った。

9・27はまもと_convert_20190227205922

 最終意見陳述は、担当の諸富健弁護士と濱本由弁護士により、スライドを使って行われた。はじめに諸富弁護士が原子爆弾投下による被害、被爆の惨状と、二人の受けた放射線被曝線量がどれほど深刻なものであったかを、原爆投下直後を記録した写真や被爆者が描いた絵をスクリーンに写し出しながら陳述した。
 燃えつき、破壊され尽くした広島の街、最大風速440㍍/秒に及ぶ爆風で破壊された広島駅、爆心地付近では3,000~4,000℃にもなる熱線で焼かれた人々、熱さに耐えかね川に飛び込みそのまま息絶える人々、5日間にわたって被災者の救護にあたったK・Sさんの体験を想像させる第二陸軍病院や日赤病院の救護所と人々の惨状、K・Sさんが実際に従事した二葉の里の黒こげた死体が山積みされ、火葬に付されている様子も絵で紹介された。このような過酷な状況の中で、K・Sさんたちの作業はすべて素手で行われ、汚染された水や食物を摂り、5日間も寝泊まりを続けた。多量の放射線に外部被曝、内部被曝したことが明らかにされた。

9・27原告苑田

 苑田さんの体験した長崎の惨状も同じように写し出された。燃えつき、破壊され尽くした山里町、長崎駅周辺、松山町、そして廃墟と化した浦上天主堂。昨年亡くなった谷口稜曄さんが大火傷した時の姿。苑田さんは8月15日になって爆心地を縦断するように歩いて西彼杵郡長浦村へ避難したが、その経路にあたる松山町交差点一帯、浦上駅プラットホーム、大橋付近の惨状も写し出された。苑田さんは避難の途中大橋付近で水浴びしたことを記憶しているが、その記憶とも重なりあう絵だ。苑田さんは爆心地から4㌔の自宅に原爆投下後6日間も止まり、15日になって砂埃や土埃が立ち込める爆心地を経て避難した。途中で水浴びもしている。苑田さんも多量の放射線に外部被曝、内部被曝したことが明らかにされていった。
 続いて濱本弁護士が、国が今も主張し続け、頑なに被爆者救済を阻み続けている最大の根拠=内部被曝リスクの過小評価の問題に焦点をあて、図解とキノコ雲の実像写真も示しながら、要旨以下のよう内容の陳述をした。国側の準備書面ではアメリカのネバダ核実験が実例として挙げられているようだが、ネバダのような砂漠での核実験と、広島・長崎のような海や川のある都市でしかも湿度の高い真夏での核爆発とでは水蒸気の量がまったく異なり、同列に論じることなどできない。実際に爆発後に発生したキノコ雲を比較するとその大きさや厚み、構造がまったく異なる。広島・長崎では放射性降下物の降下範囲も相当に広いことも示している。放射性降下物による放射線量については、東神戸診療所の郷地秀夫所長が、昭和20年9月以降広島・長崎に駐留した米兵の推定被曝線量をもとに推計されている。8月15日の長崎爆心地付近の空間線量は少なくとも12.5μSvであった。これは福島原発事故で立ち入り禁止となった警戒区域の線量に相当する値で、国側の主張をはるかに上回るものだ。
 放射性降下物を体内に取り込み、体内で被曝する内部被曝は、局所的に高濃度被曝を起こし、体内で長期間にわたり被曝し続けるという高いリスクを持つ。鎌田論文では、被爆から60年も経った一人の女性被爆者に、局所、高濃度、長期的内部被曝が実際に確認されていて、そのことが実例で証明されている。内部被曝は臓器内で被曝するところ、しないところの不均一性があるため、その実態を把握するには局所的な線量評価が不可欠であり、外部被曝の計算式などで内部被曝の線量評価などできるわけがない。外部被曝線量を基準にして内部被曝による健康影響を低く評価する国の主張は意味をなさない。
 国が誤った主張を続けているにも関わらず、これまで先行してきた原爆症認定訴訟で多数の遠距離被爆者、入市被爆者の申請疾病の放射線起因性が認められてきた。今年3月27日の東京高裁判決も、国は残留放射線による内部被曝の危険性を過小評価していると断罪した。アメリカでは、終戦後日本に駐留した兵士が後に白血病やがんを発症した場合、治療費や生活費を補償している。それはアメリカは9月以降の入市でも残留放射線の内部被曝の危険性を認識していた何よりの証左ではないか。
 最後に、内部被曝のリスクは外部被曝と同じかそれ以下という国の主張が誤りであることはもはや明白であり、国は直ちに内部被曝の危険性を直視しなければならないと訴えて陳述は締めくくられた。
意見陳述を終えて、裁判長が弁論の終結を宣言し、二人への判決言い渡しは2019年2月28日(木)13時10分から行う、と示して閉廷となった。

 大阪弁護士会館に会場を移して短時間の報告集会が行われた。今日の最終意見陳述を担当した二人の弁護士からそれぞれ感想と思いが述べられた。第7民事部は今年に入ってから裁判長が今の松永裁判長に交代した。それまでに積み重ねてきた被爆の実相、実態の主張が正確に理解されていない可能性もあるので、あらためて写真や絵も見せて再認識してもらうつもりで最終準備書面を作成したとのことだった。K・Sさんと苑田さんが具体的に関係した場所、状況も写真や絵と一緒に説明し、視覚的にも訴えられるよう工夫した書面となったようだ。その中から抜粋で今日の法廷でのプレゼンとなった。

29・27はまもと_convert_20190227210019

 諸富弁護士によると、原告側の最終準備書面はこれまでの他の裁判でも主張されてきた意見などもしっかりと参考にし、100ページを超える内容で提出された。これに対し被告国側の出してきた最終準備書面はそれぞれ20ページそこそこのあっさりしたもののようだった。証人尋問でもどこまで本気で争おうとしているのか疑いたくなるような被告側の態度だった。こんな相手の裁判に負けるわけにはいかない。原告の思いはしっかりと裁判官に届いたのではないか。いい判決を期待し、5ヶ月後にはみなさんと共に喜びあいたいと述べられた。

9・27諸富_convert_20190227205957

 苑田さんは報告集会にも参加され、弁護士のみなさん、支援のみなさんへのお礼の言葉を述べられ、来年2月28日にはいい結果が出るよう願っていると挨拶された。参加者全員からねぎらいと激励の拍手が贈られた。
 報告集会では残念なことも報告された。今年1月16日の大阪高裁第13民事部判決で敗訴となった3人の原告の上告に対して、9月19日までに上告受理申し立てを棄却するとの書面が届いた。最高裁は3人の被爆者の訴えを審理することもなく事実上の門前払いとしてしまった。原告の中岸勝さんと原野宣弘さんの申請疾病は狭心症だった。塚本郁男さんは火傷瘢痕を申請していた。いずれもこれまでの地裁や高裁では認定された判決事例もたくさんある疾病ではないか。何故受け止められないのか、残念でならない。この悔しさ、無念さを乗り越えていくためにも、闘い続けている他の原告の裁判を必ず勝利していかなければならない。
 10月は第2民事部の本人尋問、医師証人尋問、第7民事部の本人尋問、医師証人尋問も含めて法廷が連続する。尋問が行われれば結審も近く、判決の日も具体的に見通せてくるようになる。ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟もいよいよ大詰めだ。支援の手を緩めることなく、被爆者の願い実現に向けてこれからもさらに頑張っていこうと誓いあってこの日の報告集会は閉じられた。

9・27梶本_convert_20190227210042

 2017年に採択された核兵器禁止条約は、各国の署名・批准のとりくみが開始されて1年が経過した。核兵器廃絶国際デーの9月26日、国連本部では条約の署名・批准書提出式が行われた。この日新たに4つの国の批准が報告され、批准した国は合計19ヶ国になると報道された。署名国は67ヶ国にのぼる。化学兵器や対人地雷禁止条約など他の非人道的大量破壊兵器禁止条約の時と比較して、核兵器禁止条約は記録的な早いペースで批准が進んでいるとの評価だ。
 9月26日には核兵器廃絶国際デーに呼応して日本国内でも全国各地で条約のアピールと「ヒバクシャの訴える核兵器廃絶国際署名」のとりくみが行われた。京都でも、「ヒバクシャ国際署名を大きく広げる京都の会」が雨をついて街頭署名宣伝行動を行った。
世界の大勢は明らかだ。核兵器禁止条約署名と批准はどんどん進んでいく可能性は高い。3回目となる朝鮮半島南北首脳会談は南北の軍事的敵対関係の完全終結を宣言し、朝鮮半島の非核化に向けた具体的な行動の一歩を踏み出した。世界はこの変化と行動を心から歓迎し、支持と期待を高めている。多くの国々や世界の市民団体が平和の実現に向けて惜しみない努力を重ねている今、本来なら東アジアの一角を占め、被爆体験国の日本こそ東アジアと世界の平和と安定のために能動的で積極的役割を果たさなければならないはずだ。
 ところが8月28日に閣議了承された平成30年度防衛白書では、北朝鮮の核・ミサイルについて「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と明記された。2019年度概算要求では北朝鮮などのミサイル攻撃に備えるためとしたイージス・アショア配備が数千億円もの予算要求を伴って計画されるなどしている。世界の大勢に真っ向から対抗する、水を差すどころか、世界の平和と安全を損ない、脅かしかねない、時代に取り残された、孤立に向かう日本政府、安倍政権の姿勢は憂うばかりだ。
 核兵器禁止条約の一日も早い発効のために、世界からの核兵器廃絶のために、ヒバクシャ国際署名を中心とした運動をこの秋も一層強力にとりくんでいきたい。特に、核兵器禁止条約に署名・批准し、世界の運動に貢献していくような日本政府を実現していくことが、私たちにとって固有の最大の課題だ。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2018年10月17日(水)13:10 1007号法廷 地裁第2民事部 本人・医師尋問
2018年10月31日(水)10:00  407号法廷 地裁第7民事部 本人・医師尋問
2018年10月31日(水)15:00 1007号法廷 地裁第2民事部 弁論
2019年 1月30日(水)15:00 1007号法廷 地裁第2民事部 弁論
2019年 2月28日(木)13:10 806号法廷 地裁第7民事部 2人判決言い渡し
スポンサーサイト



2019.02.27 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://fujiwaradannchou.blog50.fc2.com/tb.php/436-f0584aec
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)