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被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(61)

労作性狭心症と原爆放射線との関係を認める画期的判決(1月23日・第7民事部)
この判決を力にノーモア・ヒバクシャ訴訟の全面勝利をめざしていこう!

2018年1月28日(日)

1月16日(火)大阪高裁では、国の攻勢を跳ね除けて甲状腺機能低下症の放射線起因性を再び認めさせることができたものの、心筋梗塞や狭心症の低線量域での放射線との関係を否定される悔しい判決となった。それから1週間後の1月23日(火)、今度は大阪地裁第7民事部で一人の原告の判決が言い渡された。第7民事部(山田明裁判長)で争われているのは5人の原告だが、その内の一人宮本義光さん(79歳、大阪市)だけが先行分離して審理され、この日判決を迎えることになった。宮本さんの申請疾病は労作性狭心症。一週間前の高裁判決では同じ狭心症の原告が二人も敗訴しており、今回はどうしても勝訴を、という弁護団も支援の人々も強い思いをもって迎えた。

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(判決前集会の様子)

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(藤原精吾弁護団長の判決前のあいさつ)

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(原告の宮本さんを先頭に入廷行動)

判決言い渡しは806号法廷。宮本さんは意見陳述の時も本人尋問の時もいつも奥さんと一緒で、この日も原告席の宮本さんのすぐ後ろで奥さんが見守る中開廷を待った。午後1時10分開廷。山田裁判長ははっきりとした口調で主文を読み上げ、「厚生労働大臣の行った却下処分を取り消す」と言い切った。やった!勝訴だ!裁判官退席後の廷内は何人もの弁護士、傍聴者が原告席の宮本さんを取り囲んで握手を求めることになった。

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(「勝訴」の旗出しは諸富健弁護士と和田信也弁護士)

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(支援者の皆さんにあいさつする宮本さん)

支援の人々は全員一週間前と同じ北浜ビジネス会館に移動して、今回は勝利の報告集会を行うことになった。最初に宮本さんご夫妻に勝利のお祝いの花束が贈られた。宮本さんご本人からも喜びとお礼の言葉が返された。

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(勝訴判決に喜ぶ宮本さんご夫妻)

宮本さんと同席した担当の小瀧悦子弁護士から今日の日を迎えた心境が語られた。この間、心筋梗塞に対するひどい判断が続いていたので不安はあった。国からは特に喫煙や飲酒の他原因が厳しく追及されていた。しかし宮本さんが訴えた被爆の実態が裁判長に届いたのではないかと思う。宮本さんは7歳の時(長崎の)爆心地から1.8㌔の距離で直接被爆。翌日には破壊された浦上天主堂などを見て爆心地まで入り、さらにその後も浦上の防空壕で死傷した被爆者と共に何日も過ごした。裁判長は「この被爆者は救わなければ」と思ってくれたのではないか。裁判長の補充尋問も好意的なもので、あの時裁判長の心が動いたのではないかと感じた、とのことだった。控訴されるかもしれないが、仮に控訴されても気を緩めずに頑張っていきたい、と最後は決意で結ばれた。

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(判決後の記者会見の様子)

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(判決の意義を説明する藤原精吾弁護団長)

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(厚労省の認定行政の在り方を厳しく非難する尾藤廣喜幹事長と宮本さんの担当の小瀧悦子弁護士)

報告集会に駆け付けた愛須勝也弁護団事務局長から判決内容について要旨以下のような報告がなされた。
先週の高裁判決とは月とスッポンほど違いのある素晴らしい判決だった。我々原告側の主張をとりまとめてくれたのではないかと思うほどのものだ。労作性狭心症の勝訴の意味はものすごく大きい。東京で最後の原告として頑張っている山本英典原告団長も狭心症だが、山本さんの闘いに最高のプレゼントを贈ることにもなった。
放射線起因性の判断枠組みとなる総論部分は従来からの判断がしっかりと踏襲された。国の定めた放射線量算定方式などには限界があり、一応の目安に止めるべきもの。被爆者の行動や被爆内容、症状などに基づいた総合的な判断こそ重要で、内部被ばくの可能性も含めて検討しなければならない。そして宮本さんの申請疾病である狭心症の放射線起因性について、原告と国側双方が示した証拠の一つひとつに非常に丁寧な分析と評価がなされ、踏み込んだ判断が示されている。
その上で判決は、労作性狭心症と心筋梗塞とは、動脈硬化を主因とする虚血性心疾患であるという機序において異なるところはない。心筋梗塞と放射線被曝との関連性は一般的に肯定することができることを考慮すると、労作性狭心症においても放射線起因性を一般的に肯定することができる、と明確だ。先週の高裁判決と決定的に異なる。これは他の裁判にも適用していかないといけない、他の裁判にも影響を与えうる非常に大きな判断だ。
宮本さんに対して国は、加齢、喫煙、脂質異常症、高血圧とたくさんの他原因を指摘した。そのことが労作性狭心症発症に影響していることは判決も認めている。しかし、脂質異常症および高血圧はいずれも重くはないことを考慮すると、これらの他の危険因子があっても原爆放射線の影響が否定されることにはならない。他原因はあってもそれで放射線の影響が消えることはないのだとはっきりと断じられた。むしろ原爆放射線被曝とその他の危険因子が相まって労作性狭心症を発症したと考えるのが自然かつ合理的であると判決は明確に述べている。
この間、よくない判決が続く流れがあったが、被爆者のことをずっと見続けてきてくれた裁判体がしっかりとした判断、これ以上ない判決を下してくれた。今回は宮本さん一人の判決だったが、その意義ははかりしれないほど大きい。国にとっても大きな衝撃となったのではないか。今はとにかくこの判決を確定させよう。そして認定基準、認定制度そのものを改めさせるあらたな運動への力にしていこう。
原告団・弁護団・支援ネット連名の判決に対する声明文とあわせて、いつもは判決骨子文書も配布されて報告されるのだが、今回は骨子は存在しないとのことだった。骨子など必要としないほど明快な、誰もが納得できる分かりやすい判決であったということだ。
藤原精吾弁護団長からも今日の判決の素晴らしさと全国に与える影響の意義の大きさなどが訴えられた。特に福島原発事故のことも視野に入れて、被災者のことも見据えていくことの重要さが強調された。
最後に尾藤廣喜弁護団幹事長から二つのことが訴えられた。一つは何よりもまずこの判決を確定させること。そのために急いで厚生労働大臣に対して「控訴するな」の声を集中していこう。もう一つは今回の判決を全国のノーモア・ヒバクシャ訴訟に広げていくこと。近々全国の弁護団会議も開催されるとの紹介だった。特に「控訴するな!」運動を緊急に繰り広げていくことを参加者全員で確認しあって、この日の喜びをかみしめながら、報告集会は散会した。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の法廷はこの1月4回もあった。16日(火)の高裁判決、22日(月)の第2民事部の原告本人審問、23日(火)の宮本さんの判決、そして25日(木)の第2民事部の弁論と。ノーモア・ヒバクシャ訴訟も長くなるがこんなことは初めてではないか。23日(火)の宮本さんの判決は画期的なものだったが、他の法廷すべてが望ましい状態で進んでいるとはいえない。1月16日(火)の高裁判決では心筋梗塞、狭心症の原爆放射線との関係が否定された。特に「低線量域では一般的に肯定されない」という判断は重大な後退だった。
22日(月)の第2民事部(三輪方大裁判長)の本人尋問も裁判体の姿勢を疑わせる内容だった。この日尋問されたのは昨年6月に他界された原告Ⅿ・Yさんの承継者である息子さん。尋問内容を聞いていると申請疾病である悪性リンパ腫に関わる尋問は何もなく、ほとんど広島市へ入市日時の真否を問い質すものだった。原爆投下当時広島県の因島に居たⅯ・Yさんは軍にいる兄の安否を心配して8月9日(木)か10日(金)広島に向かい、兄を捜索している。ところがⅯ・Yさんの被爆者健康手帳申請書には8月16日(木)が入市日となっていて、国が8月10日入市を否定する根拠にしている。生前のⅯ・Yさんが語られたところによると、手帳申請のための証人証明の事情から16日入市と記載したまでのことのようだ。手帳申請の記載内容が正確ではない場合がしばしばあることはこれまでもたくさんの裁判で証明されてきたことであり、未だにそれを唯一の根拠に被爆者の申請を却下する国の姿勢は許されない。Ⅿ・Yさんも「国はなんで私の言うことを信じてくれんのかな?」と言い残して逝った、と息子さんは語られた。
報告集会での弁護団の報告によると、被告の国の姿勢が問題なだけではない。この第2民事部では裁判長からも、Ⅿ・Yさんの10日入市を裏付けるため72年前当時の尾道・広島間の国鉄運行状況や、因島・尾道間の船舶状況も立証するよう求められた。もし立証できなければ、それはすべて被爆者側の不利となるという酷い訴訟指揮だ。そしてさらにこの第2民事部の大きな問題は、国の新しい原爆症認定審査方針(2013年12月16日改定)に合致するかどうかで形式的に判断しようとしているところにある。私たちが訴えているのは国が勝手に定めた認定基準自体の誤りであって、裁判所が正しくそのことを理解するようにしていかなければならない。残念ながらそれが今の現状であって、そういう裁判所の認識と姿勢を変えていくことが課題となっている。そのためにも毎回の法廷を傍聴者でいっぱいになるよう、さらに支援の活動を強化していく必要がある。
この第2民事部の本人尋問の翌日が宮本さんの画期的な勝訴判決を迎える日であった。宮本さんの勝訴判決こそが他のこうした法廷、裁判体を変えていく力になるのだとあらためて実感することになった。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の原告であった故原野宣弘さんの遺された絵画作品展を1月10日(水)からとりくみ、22日(火)終了した。会場のしんらん交流館(京都市下京区)に足を運んでいただいた方は12日間で463人になる。被爆者が心を込めて描いてきた被爆の惨状、被爆者が生きてきた証、平和への願いの訴えは、観る人々に大きな感銘を与えたのではないかと思う。作品展終了後の作品は希望される方に贈呈することになっていた。50点の作品の内35点までが希望され、それぞれの希望者に贈られることになった。原野さんのノーモア・ヒバクシャ訴訟控訴審勝利をお祝いする作品展にしたかったが、とりあえずその願いは叶わなかった。しかし、原野宣弘さんが絵に託した平和の願いは、これからも各地で生き続けていくことになる。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2018年 3月29日(木)11:00 806号法廷 地裁第 7民事部 弁論
2018年 4月16日(月)15:00 1007号法廷 地裁第 2民事部 弁論
2018年 5月10日(木)14:00 806号法廷 地裁第 7民事部 本人・医師尋問
2018年 5月16日(水)14:00 地裁第 7民事部 本人・医師尋問
2018年 6月 2日(土)午後 大阪グリーン会館 全面勝利をめざすつどい
2018年 6月20日(水)15:00 1007号法廷 地裁第 2民事部 弁論

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