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被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(59)

11月28日、広島地裁で
原爆症認定訴訟の歴史を覆す不当判決!
近畿訴訟は年明けの控訴審判決と地裁判決(一人)の
勝訴判決をめざす!
2017年11月29日(水)


11月28日(火)、広島地裁おいて、2003年以来の原爆症認定訴訟の歴史と実績をすべて覆すようなとんでもない判決言い渡しが行われた。この日原爆症認定についての判決を受けた原告は12人(その他国家賠償請求が12人)。具体的な被曝線量なるものを提示し、他原因の可能性を理由にし、そもそも病気にはかかっていないなどとまで言って、被爆状況の事実認定までを否定して、原告の訴えを退けるための理由を総動員するようなやり方で、全員が却下、切り捨てられた。
www.asahi.com/articles/ASKCX44NNKCXPITB00M.html

広島地裁判決の日程と広島への所用の機会を調整し、判決言い渡しのある広島地裁の傍聴に駆け付けた。運よく傍聴席の抽選にもあたり、法廷内で判決言い渡しを聞くことになった。小西洋裁判長は冒頭の主文読み上げでいきなり、原告全員の訴え却下を言い渡した。広島訴訟の経過についてはほとんど何も知らない私でも結論ははっきりと理解できる言い渡し方だった。そんな馬鹿な・・・と思いつつ、引き続く一人ひとりの原告に対する簡単な判決理由説明に耳を傾けていった。
手元に資料など何もないので耳にするだけでは詳しいことは分からない。しかし、「4グレイを超える放射線量に被曝したと認められない」とか、「放射線被曝を理由としなければ、医学的にみて不自然、不合理な経過があるとはいえない」の文言が何度も、どの原告に対しても同じように繰り返される。この2点が判決の基調のようだと私にも分かる。被曝線量基準の数値を具体的に示して判決するなどこれまで聞いたこともない。ましてや4グレイなんて。「不自然、不合理な経過があるとはいえない」とは、他原因の要因があればそれだけで放射線起因性をばっさりと切り捨てるということではないか。
とんでもない判決だという怒りと、全員敗訴という落胆と悔しさ。それらがごちゃまぜになったまま、重い足を引き摺りつつ、全員が報告集会の行われる弁護士会館に移動した。
弁護団の声明が準備されるまでの間、判決の主文と要旨のようなペーパーが配布された。法廷の中で感じたことも含めて、ペーパーに書かれている判決要旨は以下のようなひどいものだった。
(1) そもそも申請された病気の発症そのものを認めない例が4件もある。例えば「原告Aについては甲状腺機能低下症であったとは認め難い」などと。甲状腺機能低下症だけでなく、貧血や、白内障の要医療性も否定されている。
法廷では診断書の証拠提出や医師の証人尋問などもあったはずだが、それらを否定する根拠は何なのか。
(2) 上記のように、「4グレイを超える放射線量に被曝したと認められない」、「放射線被曝を理由としなければ、医学的にみて不自然、不合理な経過があるとはいえない」として甲状腺機能低下症の放射線起因性が5人も否定されている。それだけでなく、心筋梗塞、狭心症、白内障、脳梗塞については「0.5グレイを超える放射線量に被曝したと認められない」と数値を置き換えて否定されている。
4グレイとか、0.5グレイとか、一体どこから出てきた基準なのか。そもそも4グレイなんて人が生きることも容易ではない高線量ではないか。それは甲状腺機能低下症と原爆被爆とは関係ないと言っているに等しい。
脳梗塞は厚労省の積極的認定基準でも挙げられていない疾患だが、それとの整合性もないのか。
(3) 高脂血症、高血圧については、「生活習慣病が原因で発症した疑いがある」と決め付け、それだけで放射線起因性を否定した例は3件にもなる。
(4) さらに、入市したこと、黒い雨を浴びたこと、急性症状を発症したことなど、被爆状況のかなりの部分の事実認定そのものが「認め難い」として一方的に退けられた原告は多数に上る。

佐々木猛也弁護団長から短い声明文が読み上げられた。内容は「今日の判決は行政に追従したもの。被爆の実相を無視し、被曝線量数値を持ち出してきて判断した不当かつ特異な判決であり、強く抗議する。裁判所は広島の被爆の実相、被爆者の苦しみを理解できていない。われわれは被爆者の全面救済のために引き続き力強く戦うことを決意する」というもの。あまりにもひどい判決だから、判決文の内容のあれこれに立ち入って述べる以前の問題だ。短い声明文であることに強い憤りと抗議の意思が表されていた。
報告集会に詰めかけた原告と支援の人々への説明と報道記者からの質問に答えて、弁護団の怒りの見解が続けられた。2003年から始まった原爆症認定集団訴訟は、それまでの爆心地の距離から推定した被曝線量基準に基づく審査を止めさせ、そのあり方を改めさせてきたものだった。今日の判決はその流れから完全に逸脱し、新しい審査基準についてすら何も触れず、被曝線量だけを基準にした完全な「復古型」判決だ。「4グレイ」などという具体的な数値も今日の判決で初めて示された。
全員敗訴という思いもよらない結果なった。しかし全員敗訴だから、これからも全員が一致団結していくことができる。全員控訴で頑張っていきたい、と最後は締めくくられた。
特異な裁判長による特異な判決ということになる。しかしそんなことによって人生を、特にその晩年を左右される被爆者はたまったものではない。今回の広島訴訟の原告も長い人は7年もの時間をかけて裁判を続けてきている。最高齢者は90歳を超える。報告集会会場でも原告の方から裁判に要する時間の長さに辛い思いの声が漏らされた。被爆の実相に、被爆者の実態に一切向き合おうとしないこんなひどい裁判所の姿勢には、強い憤り以外の何もない。広島訴訟がこれから控訴審に向けて巻き返し、真っ当な司法判断を勝ち取っていかれることを願って弁護士会館を後にした。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の方は11月17日(金)に大阪地裁第7民事部(山田明裁判長)、11月20日(月)に第2民事部(三輪方大裁判長)の弁論を終え、これが今年の最後の法廷となった。両日ともに口頭での意見陳述はなく、法廷では文書の確認や今後の日程調整が主となり、証人尋問の日程等は進行協議の場において確認された。

豊島弁護士_convert_20171203103327


2017年は14回の法廷を数え、毎回々々一定数の以上の傍聴支援者が駆け付け、原告や弁護団の奮闘を支え続けてきた。1月には初めて奈良地裁での出張尋問が行われ、法廷は非公開となったが終了後の報告集会に多数の支援者が集まり、運動を盛り上げた。国側のいたずらな裁判引き伸ばし策には目に余るものがあったが、それを乗り越えて7月には控訴審グループの結審に至り、9月には地裁第7民事部の5人の原告の内1人、宮本義光さんが結審となった。2018年以降に向け、判決言い渡しが集中する時をこつこつと準備してきた1年間だったような気もする。

報告集会風景_convert_20171203103256

2017年度中には判決を聞くことなく永眠された原告もあった。また裁判で争っている最中に、申請疾患とは別のがんなどの病気を発症し、そのことでより強く放射線起因性を示すことになる原告も相次いだ。速やかな訴訟進行、そしてより根本的には裁判で争ったりする必要のない制度への変革が求められていることを、あらためて強く実感する一年でもあった。
今年の法廷ではパワーポイントなどを駆使したより分かりやすい、より訴える力のある陳述への工夫もチャレンジされた。7月の控訴審と9月の地裁第2民事部では裁判長の頑なな態度によって実現しなかったが、9月の第7民事部の最終意見陳述では遂に画像によるプレゼンをすることができた。かっての集団訴訟当時には当たり前のように行われていたビジュアルプレゼンテーション。京都地裁の原発関連訴訟などでは毎回のように行われていること。ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟でも粘り強く追及して、ビジュアルプレゼンなど当たり前となる法廷にしていきたい。

尾藤先生_convert_20171203103155

年明けには、いよいよ1月16日(火)6人の原告の控訴審判決を迎える。さらに1週間後の1月23日(火)には宮本義光さんの判決が控える。残された期間、やるべきことはすべてやり切り、最高の判決を迎えていきたい。

2017年度は、被爆者のもう一つの悲願である核兵器廃絶に向けて世界が大きな一歩を記す年となった。7月7日(金)国連において核兵器禁止条約が採択された。国連加盟国の63%に相当する122ヵ国の圧倒的多数の賛成による採択だった。条約は、被爆者運動の果たしてきた役割を高く評価し、核廃絶に向けて被爆者の願いに深く留意することを明記した。そして、被爆者と共に世界に核廃絶を訴えてきたICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)に対して2017年度ノーベル平和賞が授与されることになった。
しかし、核保有国と、日本政府も含めた核の傘に依存する国々の核兵器に固執する姿勢は依然として変わらない。したがって、核廃絶に向けた運動はこれからさらに強めていかなければならない。核兵器が人間に何をもたらしたのかを具体的に教えていく被爆の実相、体験の普及はいよいよ重要となる。一方で被爆者に残された時間は多くはない。そのためにも、ノーモア・ヒバクシャ訴訟の持つ意味、果たす役割は大きい。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の原告であった原野宣弘さんが昨年11月27日、控訴審の判決を聞くことなく他界され、一昨日が一周忌となった。原野さんは生前身体の機能障害回復のためにリハビリを兼ねた絵の制作に励まれていた。その点数は50点にものぼる。テーマの多くは、故郷の長崎の情景、原野さんの住み慣れた宇治の街並み、そして原爆の惨禍と平和への願い。さらに原爆投下後5人のきょうだいを女手一つで育て上げられた母親への深い愛も題材となっている。
この原野さんの絵画作品展を、“原爆の惨禍、生きてきた証、そして平和への願いを絵に託す”と題して年明けの1月に開催することになった。開催日程は1月10日(水)から22日(月)までの13日間。会場は京都市下京区の「しんらん交流館」。「しんらん交流館」は京都駅から北へ歩いて10分、東本願寺北側となる。京都原水爆被災者懇談会と京都「被爆2世・3世の会」、原野さんのご遺族が共同し、そして「しんらん交流館」の全面的なご協力で実現した企画だ。
遠方からでも、この期間に京都においでになる機会のある方には是非ご鑑賞いただきたいと思っている。
原野宣弘さんはこの絵画展期間中の1月16日(火)控訴審の判決を迎える。(ご長男が裁判を承継) 絵画展が勝訴をお祝いする展覧会となることを祈っている。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2018年 1月16日(火)11:00  202大法廷 高裁第13民事部 判決
2018年 1月22日(月)14:00 1007号法廷 地裁第 2民事部 弁論・尋問
2018年 1月23日(火)13:10  806号法廷 地裁第 7民事部 宮本判決
2018年 1月25日(木)11:00  806号法廷 地裁第 7民事部 弁論
2018年 3月29日(木)11:00  806号法廷 地裁第 7民事部 弁論
2018年 4月16日(月)15:00 1007号法廷 地裁第 2民事部 弁論
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2017.12.03 Sun l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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