上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(48)
放射線被曝影響を隠し他原因のみ取り上げる国側意見書を徹底批判!
放射線被曝との関係を語ることのない証人申請に断固反対!

2016年10月23日(日)

 10月20日(木)、7月22日以来となるノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟控訴審・大阪高裁Cグループ(一審原告6人、高橋譲裁判長)の口頭弁論が行われた。前回法廷において、一審原告・被告双方ともに心筋梗塞や甲状腺機能低下症など個別疾患についての意見書を提出すると表明しており、国側は、これまでの判決が「心筋梗塞と放射線被曝との関連性について一般的に肯定できる」や、「心筋梗塞と放射線被曝との間には低線量域も含めて関連性が認められる」としてきたのは科学的に間違いだとする意見書(「赤星意見書」と言われている)を提出していた。

 一審原告の被爆者側は、国のこの赤星意見書こそ科学的に誤りだとする反論の意見書を提出し、この日の法廷で和田信也弁護士がその内容を説明する陳述を行なった。被爆者側の意見書は数多くの被爆者の実際の診療や健康診断にあたってきた医師団によって作成されたもので、法廷では「真鍋意見書」と称された。
 和田弁護士は陳述において、放射線に被曝すると心筋梗塞の発症リスクが高まることがこれまでの数々の研究で裏付けられ、一般的に認められていることを証明していった。まず、放射線影響研究所の多数の被爆者を対象とした調査であるLSS報告(寿命調査報告)やAHS報告(健康調査)において心筋梗塞と原爆放射線との有意な線量反応関係は既に報告され指摘されている。そのことは国連科学委員会(UNSCEAR)2006年度報告文書でも紹介されている。UNSCEARは他の危険因子の影響に関わりなく放射線被曝によって心筋梗塞の発症リスクが高まることまでを強調している。そして他ならぬ国側の意見書の幹をなす赤星氏自身がこれまでの論文で放射線被曝と心筋梗塞発症リスクの有意な関係を報告している。さらに、清水論文によって、心臓血管疾患と放射線との間には低線量域でも関連性のあることが明らかにされ、その論文は国際放射線防護委員会(ICRP)2012年報告において、しきい値ゼロと算定されたことが紹介されている。
 放射線と心筋梗塞発症の関係がこれだけ明らかにされていて、そしてそのことを十分に承知していながら、放射線と心筋梗塞との関係は未だ不明であるかのような意見書を作成するのは、科学者の意見書として不誠実極まりないものだと、和田弁護士は厳しく批判した。
 和田弁護士の意見陳述はさらに放射線被曝による心筋梗塞発症のメカニズムにも及んだ。マウスによる実験で、放射線被曝によってアテローム(血管の内側にたまるコレステロール等)生成が促進され、そのために動脈硬化が進展することが明らかにされている。アテロームの発生には血管内皮の慢性皮膚炎が不可欠の要因としてあり、放射線障害によってその炎症が発生する。最近の他の動物実験論文でも低線量被曝による累積放射線量の増加とともにアテロームが生成促進されることが発表されており、これらの研究結果を受けて、国際放射線防護委員会(ICRP)も「線量効果関係と(血管)障害のメカニズムが明らかになってきた」と報告している。
 被爆者を対象とした最近の報告でも、放射線被曝による影響は心臓血管疾患のリスクだけでなく、高血圧や慢性腎臓病との関係も示されている。国連科学委員会(UNSCEAR)の2006年度以降の報告でも、交絡因子(喫煙、飲酒、糖尿病、肥満、教育程度、職業)はLSS(被爆者の寿命調査)にはほとんど影響を与えておらず、放射線の心疾患への影響は、放射線による血圧の変化、炎症反応、脂質代謝などが影響している、とまとめられている。したがって、心筋梗塞の原因とされる因子の高血圧、糖尿病、脂質異常、アテローム性動脈硬化、慢性腎臓病などは、すべて放射線被曝によって引き起こされており、こうした危険因子の存在は、原爆放射線被曝の影響を否定するものではなく、むしろ肯定する根拠となるものだ。
 和田弁護士は結論として、赤星意見書は、被爆者の放射線被曝の影響を考慮することなく、他原因だけをことさらに取り上げ、一般的な心筋梗塞発症の総論を述べたものに過ぎない、とその誤りを指摘した。今日、放射線被曝によって高血圧、慢性腎臓病、脂質異常症等が引き起こされることは明らかになっていて、にも関わらずそうした研究成果に触れることなく、被爆者の心筋梗塞の発症と放射線被曝との関係を否定することは、国際的な科学的知見に反する非科学的なものだと断じてまとめられた。

 和田弁護士の意見陳述が終わった後、裁判長から今後の裁判進行について双方の予定、意見が尋ねられた。原告側からは今回の心筋梗塞に続いて、甲状腺機能低下症についての国の意見書に対する反論の意見書も用意していることなどが示された。国側からは甲状腺疾患の証人として紫芝(ししば)医師の証人尋問の申請をしたいとの意向が示された。いつもは双方が言いたいことを言い、それぞれが聞き置くだけで終わってしまう法廷だが、この日は国側の医師証人の意向が示された瞬間から様相が変わった。一審原告代理人席から藤原精吾弁護団長、尾藤喜廣弁護団幹事長が次々と立って、国側承認申請の問題について批判し、問い詰めることになった。
 国側は甲状腺機能低下症についても意見書を提出しているが、その内容は、放射線被曝との関係には一言も触れない、放射線以外の他原因で甲状腺機能低下症が発症する一般論を縷々述べたものに過ぎない。裁判の争点は放射線の影響にこそあるのだが、そのことには触れず、「他原因がこれだけある」ことを強調して、強く印象づけることを目的にした意見書だ。証人申請の狙いも同じところにある。藤原、尾藤両弁護士は、放射線被曝とは関係ない内容の国側意見書の根本問題について厳しく批判しつつ、甲状腺機能低下症一般論しか語らない証人尋問には何ら意味の無いこと、争点とは関係の無い証人申請には同意できないことを強く主張した。
 国側の今の基本戦略は徹底した他原因論を展開して、司法判断を他原因重視に向かわせようとするところにある。そうはさせず、本来の争点である放射線被曝の影響問題こそ中心としていくために、短い時間ではあったが、極めて重要な局面、主張であったのではないか。後の報告集会でのコメントだった。
 国側代理人は批判にはまともに応えず、私たちからすると意味不明の説明に終始していたが、最後は裁判長が証人の採否は正式に申請が出てから判断するとして、この場はひとまず納められた。国側は次々回の期日を証人尋問の日とする目論見があったかもしれないが、次々回期日の3月7日(火)はあくまでも弁論期日としての日程確認に止まった。

14670794_1276834629057928_7771272664152004893_n_convert_20161025211449.jpg

 閉廷後の報告集会で藤原弁護団長から述べられたことだが、昨年の10月、高裁Bグループ、故梶川一雄さんの控訴審で山科章という国側証人の尋問が、十分な検討もされずに日程設定されて行なわれた。心筋梗塞の一般論を述べるだけで放射線被曝との関係は何ら見識のない証人だった。しかしこの証人尋問が効果をもたらしたのか、今年2月の判決では梶川さんの心筋梗塞は放射線起因性が否定され逆転敗訴となった。今回の紫芝(ししば)医師の証人申請もよく似た同じようなパターンだ。同じ轍を踏むわけにはいかない。だから今日の法廷では国側から証人申請の話が出るとその場で直ちに反論し、その不当性、欺瞞性を訴えたのだ、ということだった。

 14716325_1276834162391308_4801591890050092450_n_convert_20161025212659.jpg

 この日の国側代理人は14人が席を占めた。和田弁護士が意見陳述を始める前、国側代理人は陳述書の事前提出を求めたり、陳述内容の範囲について確認したりと、いつもにはない注文をつけてきた。証人申請の件についても執拗に食い下がった。これまでになく神経質な対応で、いつもとは違う力の入れようを感じさせるものだった。国もそれだけ追い詰められていることの証であり、また、なお一層被爆者に立ち向かおうとしていることの表れでもある、との報告集会での感想だった。

 来週10月27日(木)はいよいよ地裁第7民事部の2人の原告に対する判決言い渡しの日だ。絶対に完全勝訴を勝ち取り、近畿訴訟の巻き返しをはかっていくスタートにしていこう。当日の判決前集会から始まる一日の行動計画などを確認して、この日の短時間の報告集会を終え、散会した。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2016年10月27日(木) 13:10 地裁 第7民事部 806号 判決(原告2人)
2016年12月16日(金) 11:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年12月16日(金) 14:00 地裁 第7民事部 806号 弁論(原告5人)
2016年12月21日(水) 15:00 地裁 第2民事部 1007号 弁論(原告7人)
2017年 2月28日(火) 11:00 地裁 第7民事部 806号 弁論(原告5人)
2017年3月7日(火) 14:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)



スポンサーサイト
2016.10.25 Tue l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://fujiwaradannchou.blog50.fc2.com/tb.php/413-92a34629
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。