被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(46)
9月14日名古屋地裁判決でも全原告の放射線起因性を認定!
近畿でも地裁、高裁、最高裁の勝利めざして今秋からの運動強化を!
2016年9月18日(日)


 ノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟は7月21日(木)の地裁第7民事部、22日(金)の高裁Cグループと法廷が続いた後、猛暑の8月を挟んで1ヶ月以上お休みとなり、9月16日(金)、地裁第2民事部(西田隆裕裁判長)の弁論から再開となった。この間第2民事部では9月9日に新しい提訴者があり原告は合計7人となっている。前回期日の6月15日以降、6月29日の原告全員勝訴を勝ち取った東京地裁第2陣の判決、つい先日9月14日の名古屋地裁判決があった。

 9月16日の第2民事部は午前11時開廷。この日は豊島達哉弁護士によって名古屋地裁判決の要旨が説明され、裁判所はこの内容を十分に参考にしていくように、と求める意見陳述が行われた。
 名古屋地裁判決は、4人の原告の申請疾病についていずれも放射線起因性を認めたことに最大の特徴がある。原爆症認定訴訟の歴史で積み重ねられてきた司法判断が今回もはっきりと示された。すなわち、国の言うDS02等により算定される被曝線量はあくまでも一応の目安に止めるのが相当であって、個々の被爆者の被爆状況、行動、症状等に照らし、様々な形態での外部被曝・内部被曝の可能性を検討し、健康に影響を及ぼすような相当量の被曝をしたかどうか判断していく必要がある、とするものだ。国の定める放射線起因性判断基準は今回も明確に退けられた。
 判決は、被爆を検討するに当たっては、初期放射線に加えて残留放射線の影響も十分考慮する必要があり、また若年被爆者にみられるように放射線に対する感受性には個人差もあるので、被曝の影響は爆心地からの同心円距離などで単純に測れるものではない、とまで丁寧に指摘されている。
 前もって届けられていた判決要旨を読むと、原告4人の被爆状況と申請疾病が示されていた。原告の一人Mさんは20歳の時に被爆、被爆状況は不明だが申請疾病は右目白内障。Yさんは12歳の時に5.4㌔で被爆し、原爆投下当日1.5㌔まで入市、申請疾病は右上葉肺がんと左乳がん。Tさんは9歳の時に5.4㌔で被爆し、原爆投下当日1.5㌔まで入市、申請疾病は慢性甲状腺炎。Kさんは2.6㌔で被爆し申請疾病は心筋梗塞と狭心症。Mさんの白内障、Yさんのがんは言うまでもなく国の定める積極的認定疾病の対象であり、被爆距離の条件などから国は却下処分したものと思われるが判決はそれを誤りと断定した。Tさんの慢性甲状腺炎は、積極的認定疾病の一つである甲状腺機能低下症の原因となるもので、低線量域においても放射線被曝との関連性は否定できないとして起因性が認められた。Kさんの心筋梗塞は積極的認定疾病ではあるが国は被爆距離を2.0㌔以内などと条件付けており、わずか600㍍の差を理由に却下処分していたのかもしれない。判決は心筋梗塞についても「低線量域においても放射線被曝との関連性は否定できない」としてしきい値論を否定している。
 ただ今回の名古屋地裁判決は原告4人の内2人については要医療性がないとして棄却した。放射線の起因性は認めながら、要医療性の否定を理由に2人が敗訴となった。判決は、被爆者が積極的な治療行為を伴わない経過観察が必要な状態にある場合は、被爆者援護法上は健康管理の検査等で対応すべきで、法の言う医療にはあたらない、と極めて制限的な解釈を示した。
 これに対し豊島弁護士は、外形的には同じように見える「診察」であっても、疾病の再発や悪化の状況有無を判断する「診察」と一般的健康診断とは明確に区別され、当該疾病の場合は医学的処置と判断されなければならないものだと主張し、名古屋地裁判決の不十分さを厳しく指摘した。
 判決要旨を読んで疑問に思ったのは、要医療性の判断についてことさらに被爆者援護法の第3章第2節「健康管理」が持ち出されていることだ。被爆者には健康管理に係る援護として健康診断が行われているのだから、積極的な治療行為を伴わない検査等の経過観察などは「医療」の援護ではなく「健康管理」の援護でカバーすればいいではないか、したがってその場合には原爆症認定における要医療性にも適合しないことになるのだ、と。国がそんなことを主張するのならまだしも、裁判所がそのような理屈を述べることに強い違和感を覚えた。被爆者援護法の趣旨にもとる、物事をまったく履き違えたこんな理屈が通用するのだろうか。国の言う理屈がそのままとりこまれてしまったのではないかと危惧されるような判決だ。
 豊島弁護士の意見陳述は最後にもう一度、名古屋地裁の特に放射線起因性についての判断を尊重し、参考とするように訴えて終えられた。



 いつものように大阪弁護士会館に会場を移して短時間の報告集会が行われた。豊島弁護士からあらためて今日の意見陳述の要旨が説明された。国は放射線起因性で争っていたのではもはや国の主張に沿った判決を得ることができなくなっているので、それに代わる意見をなりふり構わぬ形で強めており、そのターゲットが要医療性の否定であり、もう一つが徹底した他原因の主張だ。今回の名古屋地裁だけでなく、近畿も含めた全国的な状況となっていて、それは国側が追い詰められていることの証でもある、との説明だった。
 愛知県の被爆者支援ネットワークからは、名古屋地裁判決での勝訴原告に対して国は控訴しないよう求める要請運動を、全国から強めて欲しいとする訴えが呼びかけられている。控訴期限は9月28日(水)。近畿からも厚生労働大臣に対する要請を積極的に集中していきたい。

 報告集会のまとめの中で尾藤廣喜弁護団幹事長から全国の状況、全国弁護団会議のことなども簡潔に紹介された。裁判に勝たなければ原爆症認定を得ることができないこの異常な状態を一日も早く解決し、司法判断の到達点に従った認定制度の抜本的改革をはかるために、今一番重要になっているのは圧倒的な国民世論の形成だ。そして与野党含めて国会議員への働きかけも強めていく必要がある。そうした状況の中で、近畿から上告されている2人の原告の最高裁での動向が決定的に重要な意味を持ってくる。最高裁の場合は国民の声が届かないまま判断されていく可能性もあり、そうはさせてはならない。そうはならないよう私たちの声をしっかりと届けていくとりくみがとても重要になっている。先日の全国弁護団会議でもこの最高裁に対して全国的な支援を行なっていくこと、そして全国の弁護団として最高裁への要請活動を強化していくことも確認された。最高裁の動向と、各地のノ―モア・ヒバクシャ訴訟の地裁・高裁の状況とがお互いに響きあって、相乗効果をもたらしながら大きな運動にしていく必要がある。この秋、運動を一層強めていこうと訴えられて報告集会は締められた。
 尚、大阪地裁第2民事部の次回期日は12月21日(水)15:00となったことが報告された。
 近畿訴訟は、地裁、高裁あわせて3つの法廷が同時進行しており傍聴参加も結構大変だ。閉廷後の報告集会を毎回々々時間をかけて丁寧に行なう必要もないとは思うが、オール近畿の支援者が一堂に会するこの貴重な機会を生かして、時にはしっかりとした状況報告、意見交換、とりくみ方針の確認などが行なわれるようにしていくことを望みたい。
 7月末には弁護団、医師団合同の会議が行われ、個別疾病についての意見書作成がなされると前回期日後の報告集会で説明されていた。8月5日・6日には全国の弁護団合宿も行なわれている。こうした夏の期間の弁護団、医師団の大奮闘と成果が、私たち支援者にも分りやすい内容で伝えられ、共有化され、力になるようにしていきたい。9月3日にはノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団支援団体合同会議も行なわれている。その内容が近畿のみなさんにも報告されて、近畿の実態に即したとりくみが検討がされていく必要があると思う。最高裁に上告された二人の原告の闘いは全国的な支援でとりくまれるとの報告だったが、私たち近畿こそその先頭に立たなければならず、そのための具体化も急がれる。近畿の次の判決、10月27日の地裁第7民事部の2人の原告の判決も目前に迫っている。
残暑は厳しくても、夏の間に培ったエネルギーと成果を今こそ発揮して、これまで以上に力強い運動を進めていきたい。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2016年 9月30日(金) 16:00 地裁 第7民事部 806号 弁論(原告5人)
2016年10月20日(木) 11:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年10月27日(木) 13:10 地裁 第7民事部 806号 判決(原告2人)
2016年12月16日(金) 11:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年12月21日(水) 15:00 地裁 第2民事部 1007号 弁論(原告7人)


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2016.09.19 Mon l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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