被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(44)
“ノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟全面勝利をめざすつどい”に86人の参加!
文字通りの全面勝利を誓いあう!
2016年6月20日(水)

支援集会1

 “ノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟全面勝利めざすつどい”が6月11日(土)、大阪グリーン会館で開催された。86人の参加だった。プログラムの最初は藤原精吾弁護団長による「ドイツからのレポート」と題した特別報告。今年3月ドイツ・フランクフルトとアルノルツハイマンで開催された“核使用に反対する世界会議-「路上で、裁判所で、核リスクに抗議する法と宗教」”に出席されての報告だ。

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この世界会議は、市民の運動と法的な闘いとを合体させて核兵器廃絶をめざしていこうとするもので、プロテスタント教会の人々の主催による。5年目を迎える福島原発事故発生の日、3月11日に焦点をあて、3月9日~11日が開催日にあてられた。広島・長崎の被爆者の今も続く苦しみ、ビキニ環礁含むマーシャル諸島における核実験被害、そして福島第一原発事故による被害の実相が報告されている。藤原弁護団長がノ―モア・ヒバクシャ訴訟の現状を報告、マーシャル諸島の核実験被害はドイツの研究者が調査報告、フクシマについてはデルテ・ジーデントップ医師(核戦争防止国際医師会議)、中島孝氏(生業を返せ!福島原発訴訟原告団長)、おしどりマコさんらによって報告された。全体の報告者は20人ほどにもなっているが、中には、自然エネルギーから起業し、再生エネルギー発電で商業ベースにまで達しているシューナウ電力会社設立の報告もあった。
世界会議では、どのようにして核廃絶への道筋をつけていくのか、様々の角度から報告、提言、意見交換が行われている。中でも特に関心を持った報告は、マーシャル諸島共和国による国際司法裁判所への提訴のことだ。小さな国マーシャル諸島共和国が核保有9ヶ国を相手に、NPT条約に従って早期に核軍備競争を停止し、誠実に核軍縮の交渉開始を行なうよう訴えている。ちょうどこの世界会議の開催時期と同じ時、3月8日~16日の日程で国際司法裁判所での口頭弁論が行われていた。意見陳述したのはオランダの弁護士とマーシャル諸島共和国の外務大臣とのこと。訴訟の道筋は容易ではないようだが、今後の動向を注視していきたいと思う。
 世界会議では、法律と宗教の力、それに市民の運動を加え、世界中の市民運動が連帯して核兵器廃絶の実現をめざしていくことが確認されている。この日、藤原団長の特別報告は15分という短い時間枠でのものだったが、もっと詳しく聞きたいと思った人は多かったのではないか。

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 次いで、福島医療生協わたり病院の斎藤紀(おさむ)先生による記念講演が行われた。当初の開催案内では「ヒロシマ・ナガサキとフクシマをつなぐもの」(仮題)と題した講演テーマだったが、講演時間との関係から「なぜ原爆訴訟を継続してきたか」に内容変更されてお話しされることになっていた。
 講演は、原爆投下から医療法、特別措置法の制定、原爆個別訴訟、集団訴訟、ノ―モア・ヒバクシャ訴訟へと続く71年の歴史を俯瞰することから始まり、被爆者と援護制度の成立、それを生みだしてきた一つひとつの裁判闘争の成果、意味が語られていった。歴史全体を振り返りつつ、その中での一つひとつの運動と事象の意味、値打ちがあらためて解説され、私たちの認識が深まっていく。ABCC(後の放射線影響研究所)の研究目的が被爆者の疫学調査へとシフトしていき、それに伴って残留放射線の人体への影響が否定されることになっていったこと、それを背景にした1968年の原爆特別措置法成立であることなど、あらためて学ぶことが多かった。原爆症認定集団訴訟は初期放射線決定論から脱却して被ばくの実相を切り拓いてきた。ノ―モア・ヒバクシャ訴訟は「他原因」自体も放射線の影響によるものだと新たな知見を示し、被爆の実相をさらに明らかにしてきている。人間に及ぼす放射線の影響、その真実を解明していく営みの中に私たち自身も参加してきたことを教えられたように思う。原爆個別訴訟以来被爆者の闘いは、法を土台にした闘いであり、同時にその法を克服の対象にした闘いでもあったという説明には、なるほどと深く同感するところがあった。講演の最後に述べられた “原爆症裁判は国民の財産である”という訴えはあらためて強く受け止めたいと思った。
 ノ―モア・ヒバクシャ訴訟に際して私たちは、広島・長崎の被爆者だけでなく福島原発事故被災者救済のことも絶えず念頭に置き、ノ―モア訴訟の結果が原発事故被災者救済にも深く関係していくのだと自覚しながら裁判を闘っている。その原点は被爆者と同様、原発事故被災者の身に起こる健康問題、今と将来の健康被害の実相だ。そういうことからも、現地福島の医療現場の第一線で活躍されている斎藤先生から、フクシマの現状についても是非お話を聞かせていただきたかった。

支援集会Kシュガー_convert_20160621132402


“つどい”はその後ケイ・シュガーさんの歌とトークを楽しみ、原告のみなさんに激励の花束が贈られ、続いて愛須勝也弁護団事務局長から「弁護団からの報告」が行われた。2013年末の「新しい審査の方針」策定以後、国は猛烈な巻き返しをはかってきており、その影響は残念ながら武田武俊さんや梶川一雄さんの控訴審逆転敗訴判決にも及んだ。しかし一方で、昨年10月29日の東京地裁第一次判決では17人の原告全員が勝利判決を勝ち取っている。また今年4月11日の熊本訴訟福岡高裁勝訴判決は、集団訴訟以降の判決水準をあらためて確認する重要な内容をもつ判決だった。
今近畿訴訟の原告は、最高裁2人、大阪高裁6人、大阪地裁の第2民事部と第7民事部合わせて13人、合計21人となる。この間の流れを食い止め、最高裁の2人も含めて近畿訴訟の全員勝利、全面勝訴をめざしていかなければならない。弁護団もあらためて体制を整え、民医連医師団との全面的な協力関係を再構築してのぞんでいる。裁判官が被爆の実相を見ずして安易な判決を下すことなどないよう、法廷でのあり方ももう一度様々に工夫していきたい。今が踏ん張りどき。法廷の内外でこれまで以上のとりくみを、一層の活動強化を、と訴えられた。

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最後に西晃弁護士から4つの行動提起が行われ、参加者全員で確認。文字通りの全面勝利を誓いあった。
① 毎回の裁判傍聴支援と10月27日の判決に向けた署名等の活動の強化
② 上告した2人の原告勝利のために最高裁への要請行動の強化
③ 全国の運動と連帯して認定制度の抜本的改革を求める
④ 核兵器廃絶と脱原発社会実現に向けて2016年夏のとりくみを積極的に。

 翌週の6月15日(水)午前11時から、ノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟地裁第2民事部(西田隆裕裁判長)の口頭弁論が1007号法廷で行なわれた。この日は第2民事部の6人の原告の内の一人Y・Mさんについて、国の主張に対する反論の準備書面を説明する形での意見陳述が担当の崔信義弁護士によって行われた。Y・Mさんは7歳の時長崎の爆心地から4.0㌔で被爆。その後2度も爆心地を通過して入市による被爆もしている。申請疾患は食道がんだが、ご本人は既に他界されており、奥さんの承継によって裁判は闘われている。
 Y・Mさんに対して国は入市被爆の事実を否定し、さらには他原因を持ち出して放射線起因性をも否定している。国による入市の事実否定の理由は被爆者手帳申請書にそのことが記載されていないからという、もはや難癖としか思えないようなものだ。4㌔での直爆の事実だけで申請事由が足りれば入市のことまで書く必要のなかったことは明らかではないか、と崔弁護士は説明される。Y・Mさんの放射線起因性否定の理由は飲酒と喫煙の相乗効果論を根拠にした他原因論だ。しかしY・Mさんは食道がん手術の20年も前から禁煙を徹底していてその記録もはっきりと残されている。崔弁護士は飲酒と喫煙によるリスク増加論と禁煙によるリスク減少論の二つの角度からの論文を示して、Y・Mさんの食道がんと飲酒・喫煙との間に関連性のないことを証明していった。さらにLSS第14報に示された新しい知見に基づいて、7歳という若年時の被爆、爆心地への長時間入市という事情によってもY・Mさんの食道がんと被爆との間に強い関連性のあることを説明されていった。
閉廷後の報告集会には第2民事部の二人の原告も参加されて行なわれた。崔弁護士から今日の意見陳述の内容についてあらためて説明された後、愛須弁護団事務局長から現在の弁護団のとりくみ状況が報告された。国は近畿、東京、名古屋、広島の各地それぞれについて、個別の疾病ごとの意見書を出してきており、我々の側もそれに対応するために疾病ごとの反論意見書作成を進めている。悪性腫瘍、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、白内障、心筋梗塞、という具合に。そのための医師団・弁護団合同の集中した対策会議も精力的に重ねられていることが紹介された。
報告集会は最後に尾藤廣喜弁護団幹事長の次のような挨拶で閉じられた。国は一人ひとりの原告の症状や被爆の状況について詳しく立ち入り、言わばケチをつけるようなやり方で原告の訴えに対応しようとしている。そのことによって裁判を引き延ばし、負ければ控訴し、最終的に負けとなればその人だけを認める。遠からず被爆者のなくなるのを待つ姿勢だ。原告一人ひとりへの個別のやり方には個別の対応もしなければならないが、本来はそうした個別の立証を求めること自体間違っている。本質的にはそういう状況を変えていかなければならない。相当程度の被爆があって、病気との一般的な因果関係が明らかになれば、明確な他原因がない限り原爆症と認める。このことを裁判所も理解するようにしていかなければならない。また政治的な決着も含めて運動を強めていかなければならない。被爆者の救済について政府の決断を迫っていくことになる。ノーモア・ヒバクシャ訴訟は被爆者救済政策のあり方を問うていく裁判だ。法廷も裁判の回数も多くなってきて大変だが、今こそ力を尽くして頑張っていこう。
尚、地裁第2民事部の次回期日は9月16日(金)午前11時からと決められた。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2016年7月21日(木) 11:00 地裁 第7民事部 806号 弁論(原告5人)
2016年7月22日(金) 14:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年9月16日(金) 11:00 地裁 第2民事部 1007号 弁論(原告6人)
2016年10月20日(木) 11:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年10月27日(木) 13:10 地裁 第7民事部 806号 判決(原告2人)
2016年 6月29日(水) 15:00 東京地裁第2次訴訟 判決(原告6人)
2016年 9月14日(水) 名古屋地裁 判決(原告4人)

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2016.06.21 Tue l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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