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被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(43)
「線量評価」と他原因論に固執する国の主張を徹底批判して弁論終結!
地裁第7民事部の二人の原告の判決が10月27日と決まる!
2016年5月11日(水)


 ノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟の地裁第7民事部(山田明裁判長)は7人の被爆者が原告だが、その内の2人が5月10日(火)結審を迎えた。一人は内田和子さん(83歳、神戸市在住)。13歳の時長崎で被爆、申請疾患は乳がんだ。もう一人はE・Kさん(83歳、男性、奈良県大和高田市)で、同じく13歳の時長崎で被爆し、陳旧性心筋梗塞と腹部大動脈瘤の認定を求めている。提訴以来既に内田さんは2年半を超え、E・Kさんは3年近くになる。解決を急ぐため審理の進んだ二人は分離して結審、判決されるという異例の措置となっている。二人の結審は元々は3ヶ月前の2月9日に予定されていたものだった。本当なら今頃は判決が近づいていたかもしれない。2月9日の期日直前になって国が突然要医療性を否定する準備書面を出してきて、拙速な判断を避けるために、やむなく今日まで結審が遅れることになった。

 この日は弁護団を代表して3人の弁護士が最終意見陳述を行ない弁論を締め括った。最初に中森俊久弁護士が総論となる意見陳述を行なった。国は依然として「被爆者の放射線起因性の判断には的確な線量評価が不可欠である」とか、「他原因が存在する可能性が否定できない時は放射線起因性を認めることはできない」と、旧態依然たる主張を繰り返している。これに対し中森弁護士は、長崎松谷訴訟の最高裁判決を引用して国の主張を厳しく批判した。「国の主張するDS86としきい値論を機械的に適用する限り、入市被爆者や遠距離被爆者などに生じた急性症状を説明することはできない」、「例えば、発生するはずのない地域で発生した脱毛を放射線以外の原因と断ずるには、ちゅうちょを覚える」等々だ。国の主張は最高裁判決が明確に排斥した当時の厚生省の上告意見となんら変わらない、すでに破綻済みの主張だ。起因性についての判断の基本はそれ以降、原爆症認定集団訴訟とノ―モア・ヒバクシャ訴訟に引き継がれ、被爆者の被爆の状況、急性症状、被爆後の行動と生活状況、発症に至る経緯などを総合的に把握、考慮して判断されなければならないとする、司法判断の基本が積み重ねられ確立されてきたのだと強調された。
 国は主張の中で、昨年10月29日に下された東京地裁の17人全員の勝訴判決を「極めて特異な判断基準を使用した裁判例」となどと攻撃し、大阪高裁で続いた二つの敗訴判決を殊更に強調して取り上げているようだ。一方で今年4月11日の熊本訴訟福岡高裁での3人の原告勝訴判決には一言も触れていない。こうした国の偏狭な姿勢についても中森弁護士は厳しく批判した。自ら描く「推定被ばく線量」だけに固執する国は、入市被爆者や遠距離被爆者の身に実際に生じた深刻で多大な被害にどう向き合うのか。被爆者の被害の実態にこそ目を向け、そこに立脚点をおいて、被爆者援護法の趣旨に沿った適正な判断が行われなければならないはずだ。そうした判決となることを願う、とする陳述だった。

中森_convert_20160510202029

 次に原告内田和子さんを担当してきた吉江仁子弁護士が陳述に立った。内田さんの場合、入市日が原爆投下の2日後頃であったのか、国が主張する被爆者健康手帳に記載されている8月14日であったのかが唯一最大の争点になっており、吉江弁護士はその点に絞って意見陳述を行なった。そもそも手帳記載の日付が入市日を特定する決め手にはならないことは、手帳交付申請時に記載された日付が必ずしも正確でないことを幾多の実例が示し明らかにしてきている。内田さんの場合も手帳申請は被爆後36年もの年月を経てからのことであり、そこに過誤が生じたとしても何の不思議もない。そんなことよりも当事者の語る生々しい被爆の実相から真実に迫っていくことの方がはるかに重要だ。吉江弁護士は内田さんの手帳交付申請書に記載されている具体的な被爆体験の記述と、法廷で供述された内容がしっかりと合致していることを示しながら、あらためて内田さんの見たこと、聞いたこと、体験したことの詳細を述べていった。内田さんの証言は本当に迫真に富むもので、そのことが真実性を雄弁に語っている。
 吉江弁護士の陳述を聞きながら、昨年10月24日の本人尋問の日のことを思い出していた。国側代理人による反対尋問は常軌を逸した、まるで刑事事件の被告人尋問と勘違いしているのではないかと思われるような異常さ、執拗さだった。国はなんとしても入市日を8月14日にしてしまいたい。そうすれば積極的認定範囲の条件を外れることになる。そうした意図が見え見えの尋問だった。内田さんは唇をかみしめながらも酷い尋問に耐え、最後まで頑張り通した。今日はその内田さんも、反対尋問をした国の代理人も法廷にはいない。あの日を思い出しながら、あの恨みを判決で晴らしたいものだと密かに思ってしまった。

吉江さん_convert_20160510202153

 意見陳述の最後はE・Kさんの担当である諸富健弁護士が行った。諸富弁護士は最初に、結審が今日の日まで遅れてしまったことの原因が国の不誠実な訴訟態度にあることを指摘し、厳しく批判することから陳述を始めた。提訴以来今日まで国はE・Kさんの要医療性について一切主張することはなかった。それにも関わらず結審期日直前になって不意打ち的に要医療性についての主張を持ち出し、反論の余地のないまま審理を終わらせようとした。重い病気を抱えながら裁判を闘っている高齢のE・Kさんがどれほど公正な判決を待ちわびていることか、国は想像することもできないのか、と強い思いの籠った抗議だった。
 その上で諸富弁護士は、E・Kさんの被爆状況、被爆直後からの様々な健康障害、戦後の闘病生活をもう一度丁寧に述べていった。国は相も変わらず被曝線量がどれほどのものかと持ち出し、申請疾病の他の危険因子の主張を繰り返しているが、すでに決着済みの議論だ。本人尋問、医師証人尋問の際国は喫煙歴、高血圧、血糖値のことに固執していたが、証人の穐久医師の的確な回答の前に大した追及もできないまま尋問は終わったことを思い出す。国は危険因子の一つに年齢のことまで持ち出しているようだ。年齢まで危険因子にされてしまうと平均年齢80歳を超える被爆者は今後一切原爆症認定はされないことになってしまう。とんでもない恥ずべき主張だ。最後に一刻も早くE・Kさんの苦しみが解放される公正な判決が下されるよう求めて陳述は終えられた。

諸富さん_convert_20160510202114

 この後、山田裁判長が弁論の終結を宣言し、判決は10月27日(木)午後1時10分から言い渡すとして、この日の法廷は閉じられた。

裁判報告集会_convert_20160510202211

 法廷での陳述に時間を要したこともあって、終了後の報告集会は短時間での開催となった。今日意見陳述を担当した3人の弁護士からそれぞれに陳述内容のポイントが簡潔に説明された。続いて今日傍聴参加された第7民事部の他のグループの二人の原告が紹介された。一人はノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟のすべての裁判に傍聴参加し続けているT・Iさん(京都府城陽市)。もう一人は昨年8月の提訴で今回初めて参加されたS・Sさん(神戸市)だ。

苑田さん_convert_20160510202419

その後6月11日(土)に予定されている「全面勝利をめざすつどい」のことをもう一度確認して、最後はいつものように藤原精吾弁護団長の閉会挨拶で報告集会を終了した。挨拶の中で5月4日(木)に全国の弁護団・医師団の合同会議が催されたことなども紹介された。
 第7民事部の次回期日は7月21日(木)と決まった。翌日が控訴審Cグループの弁論期日であり2日連続の裁判となる。立て続く裁判日程だが、一つひとつの裁判に全力をあげてとりくみ、勝利をめざしていきたい。
 結審の前日の5月9日(月)、アメリカのビキニ環礁水爆実験で被災したマグロ漁船の元船員と遺族45人が国の責任を問うて国家賠償請求訴訟を高知地裁に提訴した。元漁船員たちも紛れもなく放射線被ばくの被災者、被害者であり、核兵器による犠牲者だ。若くして多くの漁船員が命を奪われ、今日まで生き延びることのできた数少ない人たちも重い病気に苦しんできた。ビキニ水爆実験の行なわれた1954年(昭和29年)1年だけでも延べ1000隻近いマグロ漁船の被災が記録されていたことが分り、推計によると被害者は万にのぼる。しかし、日米両政府はこれらの資料を隠匿し、被災者の救済も一切放置してきた。棄民政策以外のなにものでもない。
 同時に進められている被災者救済の船員保険労災認定申請と、今回の国家賠償請求訴訟を皮切りに、被災者救済への道が切り開かれていくことを願ってやまない。そのために私たちも連帯したとりくみをすすめていきたい。ビキニ水爆実験の被害は第五福竜丸だけだとされてきた歴史は塗り変えられなければならない。教科書は書き変えられなければならない。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2016年6月11日(土) 14:00 近畿訴訟全面勝利をめざすつどい 大阪グリーン会館
2016年6月15日(水) 11:00 地裁第2民事部 1007号 弁論(原告6人)
2016年7月21日(木) 11:00 地裁第7民事部 806号 弁論(原告5人)
2016年7月22日(金) 14:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年10月20日(木) 11:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年10月27日(木) 13:10 地裁第7民事部 806号 判決言い渡し(2人)

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2016.05.11 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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