昨日の大阪地裁第7民事部の口頭弁論期日における諸富健弁護士の意見陳述の内容です。

諸富さん_convert_20160510202114

意見陳述書
2016年5月10日

大阪地方裁判所第7民事部合議4係 御中
            原告ら訴訟代理人  弁護士  諸  富    健

第1 はじめに
  Eさんの申請疾病は原爆症と認定されるべきであることについて、第14準備書面に敷衍して意見を申し述べますが、それに先立ち一言述べます。
  そもそも本件は、2月9日の期日で結審するはずでした。にもかかわらず、今日こうして期日が開かれています。なぜこんな事態になっているのか。その原因は国の不誠実な訴訟態度にあります。国は前回期日に第16準備書面を提出しましたが、これが原告の元に届いたのは前回期日の4日前でした。この書面には、Eさんの申請疾病である腹部大動脈瘤の要医療性について具体的な主張が展開されています。しかし、国はEさんの要医療性について、答弁書で「不知ないし争う」と述べてから約2年5か月もの間、一切触れることはありませんでした。この間、国はEさんに関する書面だけでも4つ提出しています。Eさんの要医療性について主張する機会は十分すぎるくらいあったのです。にもかかわらず、結審予定の期日において、全く新たな主張を展開してこの審理を終わらせようとしました。こんな不意打ちが許されていいのでしょうか。前回期日において、私が時機に後れた主張であるとして却下を求めたところ、国は尋問前には準備をする時間が無かったなどと見苦しい弁明をしました。重い病気を抱えながら裁判を闘っている高齢のEさんが、どんな思いで公正な判決が下されることを待ちわびているか、国は想像することもできないのでしょうか。余りに不誠実な国の訴訟態度に強く抗議します。

第2 原告Eの申請疾病は原爆症と認定されるべきである
1、Eさんは、1932年7月29日に長崎市で生まれました。そして、13歳のとき、自宅近くの広場にいるときに被爆しました。Eさんは、被爆した時の様子について、次のように法廷で述べました。「突然B29の爆音がしたかと思うと、目の前にフラッシュをたかれたように物すごい光が来ました。目前が真白くなりました。そして、爆風が押し寄せて来まして、私の父が私の体の上に重なってくれました。」「それから起き上がったんですが、ものすごく体が熱くて、『熱い、熱い』と叫んでいました。」「周りは砂塵が吹き上がって、長崎市内も全然見えない状態でした。」。
  70年以上経っても脳裏に焼き付いて離れないすさまじい光景、Eさんが体験された恐怖は想像を絶するものがあります。
  自宅は中に入ることも大変なほどめちゃくちゃに荒らされ、当日の夜は自宅近くの墓場に避難したそうです。火災の灰がバラバラ落ちてきて、Eさんは睡眠をとることも難しい状況でした。

2、翌日以降、原爆で焼けたジャガイモやサツマイモ、そして自宅近くの水を飲食して過ごしていたEさんは、12日の午後、友人二人とともに爆心地へと向かいました。爆心地がどういうふうになっているか、また親戚がどうなっているかを見にいくためでした。Eさんは、その経路についてもはっきりと記憶していて、この法廷でも地図で示したとおりです。被爆者健康手帳の申請書類とも整合しており、Eさんが爆心地付近まで入市したことは間違いありません。さすがに国も、この点については否定できずに認めているところです。

3、Eさんは、こうした被爆状況において、多量の放射線被曝を受けました。そのため、被爆直後から様々な健康障害に苦しむことになりました。嘔吐やからだのだるさといった急性症状に襲われましたし、仕事をするようになってからも疲れやすい体質は変わりませんでした。そして、申請疾病である陳旧性心筋梗塞や腹部大動脈瘤をはじめ、白内障や角膜ヘルペス、無症候性脳梗塞など様々な疾病を患っています。Eさんは、1945年8月9日を境に、健康な身体を失い、70年以上にもわたって重く苦しい疾病とともに人生を過ごしてこられました。これほど多くの病気に苦しんできた被爆者が、自分の病気は原爆のせいであると考えることは極めて当然のことではないでしょうか。

4、ところが、国は、無慈悲にもEさんの原爆症認定申請を却下しました。そして、本訴訟においても、国は徹底抗戦の構えを示しています。主な理由は、Eさんの被曝線量が低いこと、申請疾病について他の危険因子を有していることです。
  しかし、国が依拠するDS86やDS02には限界があり、被爆者の被曝線量を推定することなど不可能であることは、40回以上にも及ぶ同種訴訟において決着済みの議論です。Eさんの受けた外部被曝、内部被曝に鑑みれば、国の主張が成り立たないことは明白です。
  また、他の危険因子が有していることも放射線起因性を否定することにはなりません。昨年出された東京地裁判決では、若年被爆者におけるほど放射線の影響は大きいものと推認することができるとし、さらに交絡因子について心筋梗塞においてはそもそもその影響が極めて小さいことが認められるとしました。極めて正しい判断です。国は、他の危険因子として年齢まで持ち出しています。こんなことまで放射線起因性を否定する理由として挙げられれば、平均年齢80歳を超える被爆者たちは、今後一切原爆症と認定されないことになってしまいます。このような主張をすること自体恥ずべきことだし、長年身体的にも精神的にも苦しんできた被爆者に対して余りに酷い仕打ちだと言わざるを得ません。

5、Eさんは83歳となりました。国はいつまでEさんを苦しめば気が済むのでしょうか。連綿と続く原告勝訴の同種訴訟の論理に従えば、Eさんの申請疾病が原爆症だと認定されないはずがありません。裁判所におかれては、一刻も早くEさんの苦しみを解放する公正な判決を下していただくようお願いする次第です。
以 上
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2016.05.11 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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