被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(42)
4月11日福岡高裁勝訴判決に学び、近畿訴訟の巻き返しに向かおう!
大震災の被災下にある熊本弁護団、原告団、被爆者に支援を!

2016年4月25日(月)

 4月21日(木)、ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟控訴審Cグループの3回目となる口頭弁論が午前11時から大阪高裁第13民事部(石井寛明裁判長)で行われた。近畿訴訟の控訴審はAグループの武田武俊さん(故人)、Bグループの梶川一雄さん(故人)と不当な逆転敗訴判決が続いており、このCグループ(国の控訴3人、被爆者の控訴3人、合わせて6人の原告)は絶対に負けるわけにはいかない裁判となっている。しかし、202号大法廷は90席の傍聴席の半分を少し下回るほどの参加で、もっと頑張らなければ、と思いながら開廷を迎えることになった。
 今回は、愛須勝也弁護団事務局長による、4月11日の熊本訴訟福岡高裁判決についての意見陳述が行われた。
 福岡高裁は原告3人に対する国の控訴を棄却して原爆症と認める判決を下した。後の2人の原告側の控訴は棄却され、結論は一審と同じ判決となったが、しかしその内容は高く評価されなければならない。福岡高裁は、原爆症認定における放射線起因性の判断枠組みについて、「医学的・病理学的機序の直接証明を求めるのではなく、被爆者の被爆状況、被爆後の行動、病気の具体的症状やその推移、病歴、他原因の有無・程度などを総合的に考慮して判断しなければならない」とし、被曝線量の評価に当たっては、「国の主張するDS02等により算定される被曝線量は飽くまでも一応の目安とするにとどめるのが相当」、「被爆者の被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後に生じた症状等に照らし、外部被曝、内部被曝の可能性も含めて十分に検討する必要がある」と断じた。これは、原爆症認定集団訴訟以来多数の判決で繰り返し確認されてきた判断基準であって、福岡高裁はあらためてそのことを明確に示すものだった。そして原告らの被曝線量を具体的な数値で表すことはできないものの、国の主張する範囲を超えて健康に被害が生じる程度であったことは明らかだと判断された。
 福岡高裁で勝訴した3人の原告の申請疾患はガンや国の定める積極的認定疾病ではない。高血圧性脳出血後遺症や、慢性腎不全など国の基準から外れる非ガン疾患であった。被爆した爆心地からの距離なども国の基準内に収まるものではない。国は「積極的認定の対象とならない疾病の場合は、国際的なコンセンサスが得られ、多くの科学者が承認する科学的知見の得られている場合以外は放射線起因性を認めることはできない」と主張しているが、福岡高裁は科学の限界を踏まえて被爆の実態からこそ判断すべきだと断を下し、国の主張をはっきりと退けた。これは2013年12月16日に厚生労働省が一方的に定めた新しい審査方針を明確に否定するもので、実質的に国の認定制度の抜本的改定を求めた判決ということになる。
 国は近畿訴訟においてもまったく同じ主張を繰り返している。福岡高裁判決の内容と意義を近畿訴訟においても十分参考にするようにと訴えて、愛須弁護士の陳述は締められた。
 3回目となる今回の期日にどのようにのぞむか、いろいろと検討はされたようだが、結局この日の法廷は愛須弁護士による福岡高裁判決についての陳述とのみとなり、10分ほどで終了した。

西さん_convert_20160427191805

 裁判後の報告集会でも、愛須弁護士からもう一度福岡高裁判決の意義について解説が加えられた。そして、今日の法廷で福岡高裁判決を陳述することになった理由についても説明がなされた。福岡高裁判決は集団訴訟以来積み重ねられてきた到達点を一歩も引かない、それを明確に再確認した素晴らしい判決だった。さらに、福岡高裁で残念ながら敗訴になった2人の原告も、申請疾患は糖尿病とか右脛腓骨骨髄炎などであって、積極的認定疾病などではもちろんない。私たちも近畿訴訟の中であまり聞いたことのない例だ。近畿も含めて他地域の弁護団ならおそらく二の足を踏んでいたであろうこうした疾患であっても、熊本弁護団は、苦しみ続けてきた被爆者の後遺症の実態と、原爆が原因としか考えられない被爆者の思いを真正面から受け止め、そのことこそを最大の基本にして被爆者と一緒に切り開いていこうととりくんできた。熊本弁護団のこの意気込みの素晴らしさが紹介され、強調された。そして控訴審で2連敗して意気消沈している私たち近畿を勇気づける福岡高裁判決でもあったと。
 その熊本弁護団は今、大震災によって大変困難な状況に置かれている。おそらく多くの被爆者、原告のみなさんも同様の事態の下にあるのではないか。そのような状態にある熊本弁護団への激励と感謝の意味も込めて、今日の意見陳述となった。
 愛須弁護士からはさらに、近畿で続いた控訴審2連敗の事態、国の巻き返しの実態を全国弁護団も深刻に受け止めていて、あらためて民医連医師団にも本腰を入れた全面協力を要請し、今度は我々の側から本格的な巻き返しをはかっていく姿勢と計画が説明された。弁護団、医師団合同の検討会議が開催され、医師団としての意見書が作成されていく。さらに場合によっては医師団の中から医師証人の立証も準備していく予定で、そのことは今日の法廷でも裁判所に対して示された。
 控訴審2連敗の事態には近畿弁護団の慢心のようなもの、構えの問題があったかもしれない。そのことを率直に省みながら我々も巻き直していきたい。もう一度押し返していくために、気持ちをあらためて支援のみなさんと一緒にとりくんでいきたい、と最後に呼びかけがなされた。

愛須_convert_20160427191914

 報告集会では藤原精吾弁護団長から、ドイツから来ている司法修習生の方の紹介もあった。「普天間は今どうなっていますか?」と質問されるなど、日本の政治状況にも強い関心と見識を持たれている人のようだった。

ドイツの修習生_convert_20160427191832

 報告集会の参加者からは、間近に迫ってきたチェルノブイリ原発事故30周年(4月26日)のことも念頭に置きながら、チェルノブイリの子どもたちも、広島・長崎の被爆者も永く健康被害に苦しんできた、福島でも同じことが続く、そして熊本大地震の例は川内原発、伊方原発にも同じ事態を生じさせる可能性がある、今被爆者の私たちが頑張っている意味、大切さがそこにあることをしっかりと訴えていこう、と発言がなされた。
 今後のスケジュール等について、武田武俊さんの最高裁上告はすでに受理されており、続く梶川一雄さんについても5月末までに上告理由書が提出される予定であること、控訴審Cグループの次回日程は7月22日(金)、さらに次々回日程まで決まって10月20日(木)11時からとなったこと、6月11日(土)には「ノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟全面勝利をめざすつどい」を開催することなどが報告され、確認された。「勝利をめざすつどい」は多くの参加者で必ず成功させ、近畿訴訟の巻き返しをはかっていく契機にしていきたい。
 報告集会は最後に藤原団長のまとめのあいさつで締めくくられた。福岡高裁判決には本当に大きな励ましをもらった。あらためて私たちのとりくみを強めていきたい。ドイツのシンポジゥムでは原発も核兵器も同じ、そのことを世界中の認識にしていく必要性を確認しあった。私たちの被爆者の運動はその一つだ。この運動、闘いをさらに広げていこう、と。尚、藤原団長の詳しいドイツ報告は6月11日の「つどい」で行われる予定。
 大阪高裁での裁判、大阪弁護士会館での報告集会ではあったが、今回はあたかも熊本や福岡にいるかのような一日だった。意見陳述でも、報告集会でも徹底して福岡高裁判決の素晴らしさ、熊本弁護団の意気高さが語られ、多くのことを学ぶことになった。熊本弁護団のこと、福岡高裁判決のことを、本当に私たちの中に採り入れ、あらためて巻き返すノ―モア・ヒバクシャ近畿訴訟にしていきたい。
 この稿を書き終えようとしているタイミングで、福岡高裁判決について国が上告を断念したニュースが飛び込んできた。現行認定行政の誤りを認めた判決の確定だ。原告団、弁護団は連名で、「国は福岡高裁判決の趣旨にしたがいノ―モア・ヒバクシャ訴訟の全面的解決を図れ、日本被団協提言の制度改正で被爆者を裁判の負担から開放せよ、原爆症認定問題の最終的な解決を図れ」と声明が出された。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2016年5月10日(火) 11:00 地裁第7民事部 806号 2人結審予定
弁論(原告5人)
2016年6月11日(土) 14:00 近畿訴訟全面勝利をめざすつどい 大阪グリーン会館
2016年6月15日(水) 11:00 地裁第2民事部 1007号 弁論(原告6人)
2016年7月22日(金) 14:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)
2016年10月20日(木) 11:00 高裁C 第13民事部 202号 弁論(原告6人)

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2016.04.27 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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