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意見陳述要旨
2016年1月20日
大阪高等裁判所第13民事部E2係 御中
                   控訴人兼被控訴人(一審原告)代理人
                        弁護士   濱  本    由

1.先般、一審被告である国から、国際被爆医療協会名誉会長である長瀧氏をはじめとする4名の医師、科学者らが作成した「甲状腺機能低下症に関する意見書」(乙A621号証;以下「本件意見書」という。)が提出されました。長瀧氏らは、甲状腺機能低下症の放射線起因性を認め、甲状腺機能低下症を申請疾病とする一審原告らの請求を認容した本件の第一審判決が、長瀧論文を初めとする自分たちの論文を用いて「甲状腺機能低下症及び慢性甲状腺炎と放射線との関連性については、低線量域も含めて一般的に肯定することができる」と判断したことは、「およそ理解しがたい」ことであると異議を述べています。

2.長瀧氏は、1994年、世界で初めて甲状腺機能低下症と放射線被曝の間に有意な線量反応関係が見られることを明らかにした、いわゆる長瀧論文を発表しました。長瀧氏はこの論文中「本研究によって原爆被爆者において自己免疫性甲状腺機能低下症の有病率が増加していることが初めて示された。」、原爆の放射線によって「自己免疫性の甲状腺疾患の増加が認められたのは今回が初めてで」あるなどと自身の研究の意義を繰り返し強調しています。また、長瀧論文の研究業績は現在もなお世界的に高く評価されています。それを、なぜ今頃になって、自分の研究は発症率ではなく有病率の調査なので交絡因子やバイアスが介在している可能性があるとか、線量反応関係を示すグラフの形状が一般的な形状と異なっていることから放射線以外の要因によって引き起こされた可能性があるなど、自らの研究成果を不当におとしめるような意見書を発表する必要があるのでしょうか。
 なお、今回一審被告の主張に反論するにあたり、一審原告は、東神戸診療所の郷地秀夫医師の作成した意見書(甲A289号証)を提出しています。郷地医師は、この意見書において長瀧論文を精緻に分析し、なぜ長瀧論文において放射線被曝と甲状腺機能低下症との間に有意な線量反応関係を見いだすことができたのかを丁寧に解き明かし、長瀧論文の卓越した功績を再評価しています。また、本件意見書の共同執筆者である伊藤氏および今泉氏の論文中のデータによっても、長瀧論文と同様に、放射線被曝と甲状腺機能低下症との関連性を肯定することができることを明らかにし、本件意見書には一遍の合理性もないと明確に結論づけています。
 学術研究は、科学的事実を分析・総合して真理を探求し、人類の幸福を増進するためになされるべきものです。いかなる政治的・政策的思惑からも中立的でなければなりません。長瀧氏ら名だたる科学者が、論文発表から20年以上も経った今、国側の証拠として、自らの研究業績を不当におとしめるような内容の意見書を作成したことに、一審原告らは大きな違和感を抱かずにいられません。

3.一審被告国は、本件意見書に基づいて、甲状腺機能低下症と放射線被曝との間に一般的な関連性を見いだすことはできず、甲状腺機能低下症は放射線被曝に非特異的な、誰でも発症しうる疾病であると主張しています。しかし、前述の長瀧論文以外にも、放射線被曝と甲状腺機能低下症との関連性を認める報告や研究は多数発表されています。そして、これらの知見をふまえて、これまで数々の地裁、高裁判決において、自己免疫性であるか否かにかかわらず甲状腺機能低下症の放射線起因性を認める判決が出されてきました。さらに、厚生労働省自身も2009年6月、甲状腺機能低下症を原爆症認定の積極認定の対象に加えているのです。被告の主張は、これまで積み重ねられてきた数々の知見・各地の判決、そして何より厚労省の審査基準とも矛盾するものであることは明らかです。
 さらに、一審被告国は、今なお、一審原告らの被曝線量をDS02に推計したとしてもいずれも「ごく低線量」であり、一審原告らの甲状腺機能低下症に放射線起因性はないと主張しています。しかし、DS02の線量評価が適切ではないこと、とりわけ放射性降下物による内部被曝の影響が全く反映されておらず不当であることは、これまで全国各地の原爆症裁判の判決において繰り返し指摘されてきたとおりです。一審被告の司法を無視する態度は甚だしく、このような一審被告の姿勢は判決によって厳しく断罪されるべきです。

4.甲状腺という臓器の特殊性から、甲状腺に対する内部被曝の影響はとりわけ深刻です。細胞の新陳代謝を促し、身体の成長を促進する甲状腺ホルモンの生成にはヨウ素が必要不可欠で、生体内にあってはヨウ素のほとんどが甲状腺に蓄積されます。しかし、人体は天然ヨウ素と放射性ヨウ素を識別する仕組みを持っていないことから、放射性降下物に含まれる放射性ヨウ素を体内に取り込んだ場合も、そのほとんどが甲状腺に集中して蓄積されることとなります。つまり、放射性ヨウ素を体内に取り込んだ場合、甲状腺のみが他の臓器にくらべて際だって高濃度の放射線被曝をすることになるのです。しかも、I-132のように半減期が2.3時間と短い放射性ヨウ素は、体内に取り込まれてちょうど甲状腺濾胞細胞付近に存在するころにβ線とγ線を放出して他の放射性物質に変化することから、甲状腺は近距離から集中的に高濃度の内部被曝をすることになります。そのうえ、その半減期は非常に短いので、検査時には放射性ヨウ素は検出されず、甲状腺内部被曝の実態はほとんど明らかにならないのです。

5.原爆投下によって広島でも長崎でも、多量の放射性ヨウ素が大気中に放出されました。そして、これらの放射性ヨウ素は黒い雨などとともに地上に降下し、呼吸や飲食によって人間の体内に取り込まれ、甲状腺に集中的に蓄積されていきました。このようにして起こった甲状腺内部被曝の被曝線量は、原爆投下後の被爆者の行動経路、気象状況、放射性物質の降下状況、汚染された食物の摂取量等によって様々で、とても推計することはできません。しかし、確実にいえるのは、放射性ヨウ素による甲状腺内部被曝の被曝線量は、DS02による線量評価、すなわち原爆投下時に爆心地からどれだけ離れていたかという被爆距離によっては、決して推し測ることができないのです。内部被曝線量とりわけ甲状腺の被曝線量を推計することはほとんど不可能であるうえ、放射線被曝が人体に及ぼす影響もまだ未解明な部分が多く残っています。
 被告は、一審原告らについて、「その被曝線量は0.00652グレイを大幅に下回る程度」であり、「ごく低線量」と評価できる等と主張していますが、このような決めつけが何の根拠もないことは明らかです。一審被告は、机上の空論を振りかざすことをやめ、被爆者に現に生じている事実に対してもっと謙虚であるべきです。

6.チェルノブイリ原発事故では、原発から100キロメートル離れた地域でも甲状腺癌の増加が報告されており、甲状腺癌の多発は放射性ヨウ素の降下物を摂取した内部被曝に起因するといわれています。また、福島第一原発事故後の調査では、福島の子供たちに多数の甲状腺癌が発見され、その子供たちの甲状腺自己抗体の陽性率が高いことが報告されています。
 郷地医師は、その意見書において「あくまで、被爆者に現に起こっていることから、その因果関係を導き出す被爆者の立場に立った研究姿勢がほしいものである。そうでなければ、放射線の人体に対する真実も見えてこず、被爆者のみならず、福島の被災者や多くの人工放射線被爆者の救済につながらない。」と述べています。被爆者に生じた病変を正しく認定し被爆者に対する正当な補償を行うため、そして、このように後を絶たない放射線被爆者に対する正当な補償を行うためにも、裁判所には、一審原告ら被爆者に現に生じた事実と真摯に向き合い、正しい判断を下されることを希望します。

濱本さん_convert_20160120173648                
以 上

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2016.01.20 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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