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 上記原告ら訴訟代理人  弁護士  愛  須  勝  也

 本日陳述しました第4準備書面について、意見を申し述べます。

第1 原告淡路の胃切除後障害について
 平成27年10月29日に言い渡された東京地裁判決では、原告淡路と同じく、胃がん切除後の早期ダンピング症候群の原告について、要医療性を認めています。
 同判決は、昭和20年8月8日から同月9日まで、広島の爆心地付近まで、家族の捜索に連れて行かれた原告が、平成6年に胃がんのため胃の3分の2を切除し、その後、胃切除後の後遺症の早期ダンピング症候群で苦しんできたという、原告淡路さんと極めて類似する事案について、食事療法の他、消化酵素剤や整腸剤の処方を受けていたことを根拠に要医療性を肯定しました。
 判決は、同訴訟における聞間証人の、①1度に食事を取ると胃から小腸に急激に食物が移動し、多量の水分が出て下痢を起こすことから、回数を細かく分けて食べるようにというダンピング症候群の治療の基本である食事療法がされていたと判断することができること、②胃の運動を押さえたり、腹痛を抑えたり、消化を助けたりといった、苦痛を緩和するための胃腸薬が継続的に処方されているという証言を要医療性を肯定する理由としています。
 原告淡路の「早期・後期ダンピング症候群」及び「巨赤芽球性貧血」も上記判決に照らせば、当然に要医療性が認められるべきです。
この東京地裁判決の原告6人について国は不当にも控訴し、高齢化した原告らに、さらに訴訟を強要していますが、胃がん切除後障害の原告については、控訴を断念し、判決が確定しています。

第2 平成27年10月29日言い渡しの2つの判決
1 この東京地方裁判所判決と同じ平成27年10月29日、大阪高等裁判所第6民事部でも、対照的な結論の判決が言い渡されました。
 東京地裁判決が、原告17名について全員勝訴という判決であったのに対し、大阪高裁は、1審の大阪地裁が却下処分を取り消した判決を取り消し、原告の請求を棄却するという対照的なものでした。
 被爆状況や申請疾病等が異なる以上、判決で明暗が分かれるのは仕方がないともいえますが、大阪高裁判決は、松谷訴訟最高裁判決以降、積み重ねられてきた、被爆者救済のために事実上の立証責任を軽減する司法判断の到達点に水を差す異質な判決であったと言わざるを得ません。

2 松谷訴訟最高裁判決の「高度の蓋然性」
 松谷訴訟の第2審である福岡高裁は、放射線起因性について、「放射線起因性の証明の程度については、物理的、医学的観点から『高度の蓋然性』の程度にまで証明されなくても、被爆者の被爆時の状況、その後の病歴、現症状等を参酌し、被爆者の負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因することについての『相当程度の蓋然性』の証明があれば足りると解すべき」であると判断して、立証責任の軽減を認めました。
 ところが、最高裁は、「因果関係の立証の程度は、特別の定めがない限り、通常の民事訴訟における場合と異なるものではない。」とし、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とすると解すべき」であるとして、「高度の蓋然性」が必要である旨判決したのです。
 この「高度の蓋然性」が必要とする立場に立てば、原告の松谷英子さんの申請疾病の放射線起因性は否定される可能性がありました。
 松谷さんは、爆心地から約2.45キロメートル離れた長崎市稲佐町の自宅の縁側付近において、爆風により飛来した屋根瓦により左頭頂部を直撃され、左頭頂部頭蓋骨陥没骨折、一部欠損の重傷を負い、「右片麻痺(脳萎縮)」、「頭部外傷」と診断された被爆者でした。
 最高裁自身も、しきい値理論とDS86とを機械的に適用する限り、松谷さんの現症状は「放射線の影響によるものではないということになり、本件において放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難いところである」と認めているところです。

 しかしながら、最高裁の結論は、放射線起因性を認めました。
 最高裁は、DS86も未解明な部分を含む推定値であり、現在も見直しが続けられていること、DS86としきい値理論とを機械的に適用することによっては入市被爆者や遠距離被爆者に生じた脱毛等の急性症状の事実を十分に説明することができないこと等を理由に、松谷さんの脳損傷は、「直接的には原子爆弾の爆風によって飛来したかわらの打撃により生じたものではあるが、原子爆弾の放射線を相当程度浴びたために重篤化し、又は右放射線により治ゆ能力が低下したため重篤化した結果、現に医療を要する状態にある、すなわち放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって、それが経験則上許されないものとまで断ずることはできない。」として、事実上の立証趣旨の軽減を図り、被爆者救済の結論を導いているのです。
 そして、放射線起因性を肯定した原審の認定判断は、是認し得ないものではないから、訴訟上の立証の程度に関する法令違反は、「判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。」として、却下処分の取り消しを認めた原審の結論を維持したのです。
 つまり、最高裁判所は、放射線起因性の判断について、通常の民事訴訟における因果関係の判断と同じく「高度の蓋然性」が必要としつつ、実質的に立証責任を軽減したのです。
 そこに、私は、困難な事案に直面した最高裁としての悩みと被爆者救済の固い決意を感じます。
 そして、以降、原爆症認定をめぐる訴訟において、圧倒的多数の裁判所は、この最高裁の基準を維持しつつ、事実上の立証責任を軽減して、被爆者救済を図ってきたのです。

3 集団訴訟における放射線起因性
 松谷訴訟最高裁判決により、全国の被爆者は、それまで極めて硬直的な被爆者行政が是正されるのではないかと期待を抱きました。
 ところが、国、厚生労働省は、最高裁で勝利した松谷さんすら救済されない「原因確率論」に基づく基準を策定したため、個別の救済では被爆者救済は実現しないとして、基準の見直しと認定行政の抜本的改定を求めて、全国の被爆者が、集団認定申請、集団訴訟を提起したのが原爆症認定集団訴訟でした。
 全国17地裁、原告306名の集団訴訟のトップを切って下された平成18年5月12日の大阪地裁判決は、原告9人全員勝訴、同じ年の8月4日に下された 広島地裁判決は原告41名全員訴訟という結論でした。
 何れの訴訟の原告も、純粋に高度の蓋然性だけでは放射線起因性を認めることが困難な原告、例えば大阪地裁では、貧血や椎骨脳底動脈循環不全などの循環器 疾患などの、必ずしも医学的知見が確立していない疾患についても放射線起因性を認めています。
 これらの判決が、最高裁と同じ考え方に基づいて判断を下していることは明らかです。

4 ノーモア・ヒバクシャ訴訟判決における放射線起因性
 原爆症認定集団訴訟は、平成21年8月6日の「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」(いわゆる「8・6合意」)の締結により終結し、国は1審判決を尊重し、原告被告双方が、控訴審に継続していた訴訟を取り下げ、合意時に判決が下されていない訴訟については、判決に対して控訴をせず確定させることで早期救済を図るという合意がなされました。
そして、それ以降、「訴訟の場で争う必要のないよう」厚生労働大臣と被団協・原告団・弁護団との定期協議の場を通じて解決を図ることが約束されたのです。
 ところが、厚生労働省は、この約束を反故にし、「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」の報告書を受けて、現行の「新しい審査の基準」(平成25年12月16日最終改正)を強行して線引きをし、不服のある被爆者はその後も訴訟を強いられることになったのです。
そのため、原告らは、全国7地裁、100人以上にのぼり、ノーモア・ヒバクシャ訴訟として、第2の集団訴訟として継続しているのです。
集団訴訟後も、大阪地裁、熊本地裁、岡山地裁、広島地裁で判決が続き、何れも原告勝訴の判決が続き、現行審査の基準が不十分なものであることが繰り返し明らかにされてきました。

5 裁判所に求めるもの
 平成6年に、それまでの原爆医療法と原爆特措訟を統合して制定された被爆者援護法は、その前文で次のように謳っています。

 「昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず、たとい一命をとりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し、不安の中での生活をもたらした。
 このような原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し、医療の給付、医療特別手当等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また、我らは、再びこのような惨禍が繰り返されることがないようにとの固い決意の下、世界唯一の原子爆弾の被爆国として、核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきた。
 ここに、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する。」


 被爆者援護法が制定されて21年、被爆者の高齢化はさらに進行し、年齢は80歳を超え、法廷にすら立てない原告も増えています。記憶も減退し、混乱し、証拠は散逸し、立証上も大きな制約が拡大しています。認定書を交付されることなく亡くなる被爆者も多くなっています。
 裁判所におかれては、今一度、この被爆者援護法の趣旨に立ち返り、松谷訴訟最高裁判決以降築かれた司法判断の到達点を踏み外すこと無く、唯一の被爆国の裁判所として被爆者救済の結論を導かれることを切望して意見陳述を終えます。
以上


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2015.12.12 Sat l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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