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意見陳述書
2015年7月7日

大阪高等裁判所第6民事部合E係 御中
        上記被控訴人訴訟代理人   弁護士  愛  須  勝  也 

1 本年7月1日、厚生労働省は、被爆者健康管理手帳を持つ全国の被爆者が2014年度末の時点で18万3519人となり、平均年齢は2013年度末時点に比べ、0.69歳高い80.13歳だったことを明らかにしました。
 被爆者の平均年齢が80歳を上回ったのは、旧原爆医療法が施行されて原爆手帳の交付が始まった1957年度以降、初めてのことです。
 現在、戦後70年を経て、年間9000人以上の被爆者の方が亡くなっており、被爆者の高齢化が一層進んでいる状況があらためて確認されたといえます。
 本件訴訟の原告であった武田武俊さんも、その一人です。

2 ところで、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)などの被爆者団体は、医療特別手当の支給要件を定めている原爆症認定制度の抜本的見直しを求めていますが、厚生労働省は、「できる限り早く原爆症の認定をするなど、取り組みを進めていきたい」と言うのみで、現実には、本件訴訟を含め、全国で原爆症認定訴訟が係争中であり、全国5つの地方裁判所、2つの高等裁判所で約100人が原告となっています。原爆症認定集団訴訟の結果、3度にわたって認定制度が改定され、その結果、一定程度、認定される被爆者が増加したとはいえ、その数は9000人を切っており、手帳取得者の約4.7%に過ぎません。
 さらにいまだに被爆者であることを生涯隠すため、被爆者手帳を申請しない方々も多数存在し、また年月の経過により被爆者であることを証明できない方々も存在しています。
 本件原告であった武田さんも、父親からの厳命で被爆者であることを隠し、手帳の申請が遅れたため、元より少なかった被爆状況を証明してもらう証人が見つからず大変苦労されています。
 そして、裁判でも70年近い昔のことを思い出しつつ証言することになりました。そこに記憶の減退による混乱や思い込みがあるとしても当然のことです。原判決は、被爆者の置かれた状況を丁寧に考慮して、正しい事実認定を導き出しています。

3 ところで、原爆症認定訴訟においては、行政訴訟では異例なことですが、国は圧倒的に負け続け、2009年には、当時の麻生内閣が被団協との間で、今後裁判で争う必要のないように厚生労働大臣との定期協議をすることを定めた「8・6合意」を交すに至りました。
ところが、原爆症認定問題はそれでは終わりませんでした。
 それまで却下処分されずに放置されていた申請が次々と却下されました。
 また、「8・6合意」に基づく原爆症認定制度の在り方に関する検討会の報告書を受け、2013年12月16日には、現行の認定基準に再改定されましたが、厚生労働省は、この基準を死守すべく、この基準から1メートルでも、1時間でも外れる被爆者については、まさに機械的に切り捨てて訴訟を強い、この基準と抵触する判決に対しては、それまで「8・6合意」の精神に則って控訴をしなかった態度を翻し、控訴して結論を引き延ばしているのです。
 その結果、本件訴訟の原告である武田さんも、1審判決での勝訴にもかかわらず、認定を受けることなく控訴提起後に亡くなるに至っています。

4 集団訴訟の原告らは、原爆症認定集団訴訟において、高齢化し、証拠も散逸した下で被爆者救済をするためには、立証責任は国・厚生労働省に負わせるべきだと主張してきました。
 また、無謀な戦争を開始し、かつ、いつまでも戦争を続け、原爆投下まで降伏しなかった日本の政府の国家補償責任を追及してきました。
 集団訴訟において裁判所は、立証責任の転換こそ認めていませんが、被爆距離や入市時間にとらわれることなく、推定される被曝線量も一応の目安にしつつ、原爆放射線の人体影響の未解明性を根拠に、被爆実態を直視し、放射線起因性を判断してきています。
 原判決を含め、そこには共通の理解が示されており、その理解を前提に放射線起因性を判断しているのです。被曝線量の数値などは問題にされていません。原判決もその共通の理解に立ち、原告武田さんの放射線起因性を認めたのであり、極めて妥当な判断です。
 ところが、国は、これまで何度も否定されたDS86や02に基づく直爆線量を基準に武田さんの被曝線量を推定し、これを武田さんの病名に当てはめるという原因確率論と同じ判断の誤りを犯しています。残留放射線による内部被曝の可能性なども考慮するとしつつ、それは結局、限られた資料を基に被曝線量を推定するものでしかありません。
 準備書面でも述べたとおり、被爆の程度は、爆心地からの距離の影響は受けますが、距離と正比例する訳ではありません。原発事故でホットスポットの存在が明らかになったように、爆心地から同心円状に線量が減少するものではなく、距離と線量の間には一定の関係があるものの、爆心地から遠距離であっても、ホットスポット等の存在により、特定の場所だけの線量が高い場合もあり得ます。
 本件訴訟において必要なのは、国が主張するような被曝線量の数値ではなく、被爆状況、被爆後の行動、急性症状の有無・程度、被爆後の健康状態など総合して考慮すべきことです。
 また、控訴人は、DS02等及びこれを補正する生物学的推定法によって、被爆者個人の被曝線量が正確に、定量的に評価できることを前提としています。
 それを前提に、武田さんの浴びた放射線量は0.0026グレイを大幅に下回るというごく僅かなものであり、がんのリスクが認められる最低の線量である0.2グレイを満たさないから、武田さんの肝臓がんの発症が放射線によるリスクが現実化したものではないと主張しています。
 しかし、繰り返し述べてきたように、被爆者個人ごとの被曝線量を定量的に評価することはできないのであり、控訴人の主張は、最高裁をはじめ、これまでの原爆症認定訴訟において集積された判決において否定され、排斥され続けてきたものです。

5 最後に、最近、放射線影響研究所(放影研)の理事長が大久保利晃氏から丹羽 太貫氏に代わりましたが、前理事長の大久保氏は、「放射線の晩発障害で判ってい るのは、5%程度」と言って、すべてが解明されるのはすべての被爆者が死亡し た後になると新聞のインタビューで述べています。確かに、科学的知見は集積さ れていますが、まだまだ未解明な部分が残されているのです。
控訴人のように延々と科学論争を続けるのではなく、高齢化した被爆者の救済をうたう被爆者援護法の趣旨にそい、速やかな救済が図られるべきであって、原判決は極めて妥当な結論を示しています。
 控訴人の控訴は棄却されるべきであることを述べて、意見陳述を終えます。
以上



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2015.07.08 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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