被爆二世の

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(22)

国側の姑息で徒な訴訟遅延方針は許されない!

憲法破壊を許さず、核廃絶に展望をつくり、認定制度抜本改革実現に向けた夏に!

2014年7月23日(水)

 平成25年度期末の被爆者関係データが発表された。全国の被爆者数(正確には被爆者健康手帳所持者数)は遂に20万人を下回り192,719人となった。この1年間だけで9,000人以上もの被爆者が亡くなっている。平均年齢は79.44歳となりいよいよ80歳に迫る。こうした報告を聞くたびに原爆症認定制度抜本改革の緊急性、必要性への思いをあらためて強くする。

しかし国は、ノーモア・ヒバクシャ訴訟においてすら訴訟進行を遅らせ、被爆者が生あるうちに認定されたいという思い、願いを無残にも踏みにじろうとしている。あまりにも非人間的な、被爆者の人権すら奪いかねない事態に、新たな怒りが沸き起こっている。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は11日前の第2民事部結審に続いて今月2回目となる裁判が7月22日(火)第7民事部(田中健治裁判長)で行われた。11:30開廷され、原告代理人の吉江仁子弁護士が意見陳述した。吉江弁護士はまず、対象となる4人の原告の内の一人U・Kさんの訴えを代理して陳述し、後半で被告国側の裁判に対する態度について意見表明した。

U・Kさん(神戸市在住、82歳の女性)は13歳の時、長崎市内の自宅、爆心地から3.8kmで、両親、姉、弟と共に被爆した。母親の胎内にはその後誕生する妹もいた。原爆投下から2日間は自宅前の防空壕で食いつなぎ、井戸水を飲んでしのいだが、その後家族全員で父親の実家(佐賀県)に避難することにし、一家みんなで寄り添うように長崎市内を南から北へ縦断、爆心地一帯も踏み越えるようにして歩き通した。

子どもの頃ごく普通の健康状態であったU・Kさんだが、被爆後は慢性的なだるさに悩まされるようになり、その後もしばしば疲労と微熱のため寝込むことが多くなった。昭和44年36歳の若さで乳がんを発症して左乳房を切除、平成12年両眼白内障手術、そして平成25年右乳房切除の事態に見舞われ、原爆症認定申請にも及んだ。

U・Kさん自身の発症、闘病もさることながら、U・Kさんの家族を次々に襲った魔の手には原爆の及ぼす残忍さというものを思わざるを得ない。父親は昭和23年に食道がんで48歳の若さで、母親は昭和60年肺がんで、姉も平成20年肺がんで、5歳年下の弟は昭和50年心臓疾患のため37歳の若さで、みんな人生を全うすることなく亡くなった。胎内被爆の妹のみ存命だが、彼女もまた乳がんに苦しんでいる。原爆によってU・Kさんの家族は一人またひとりと奪い取られ、愛おしく愛おしく育まれていたはずの家庭は破壊された。

U・Kさんの被爆距離、入市日、被爆状況、発症歴や申請疾病だけでも十分に認定されてしかるべきなのに、同じ状況下で被爆した家族にこれだけの仕打ちが与えられていて、どうして認定に至らないのか。U・Kさんの思いは疑問を超えて憤りに達している。U・Kさんの認定申請は80歳になってからだが、単に経済的給付を求めたわけではない。被爆から69年にわたり次々と発症し続けてきた健康障害は原爆のためであり、「終わることのない戦後」が今も続いていることを国に理解してもらうためである、と訴えられた。

陳述の後半は、被告国側の裁判に対する許すことのできない態度への批判に向けられた。国は平成26年6月3日付で求釈明申立書を提出してきた。吉江弁護士の意見陳述や、裁判終了後の報告集会での説明などによると、求釈明の内容は、「急性症状の意義」について問いただしたり、「各原告がどの程度(何グレイ程度)被ばくしているのか示せ」と求めたりしたもののようだ。原爆症認定訴訟は、原爆放射線の人体影響についての総論と、各原告の認定要件該当性の各論について争われてきたが、総論部分は既に40を超える判決で司法判断と判断基準は確立されており、今更争う余地はない。にも関わらず国は今回の求釈明申立書で決着済みの総論部分を敢えて蒸し返そうとしているのだ。国側の総論意見に新味ある主張や、新たに検討すべき事実、内容があるのなら別だが、そのようなものはなく、まったく不必要な求釈明で、それに対する回答がない限りは各論部分の主張立証には入れないかのような訴訟態度をとってきた。徒な訴訟遅延行為以外のなにものでもない。吉江弁護士は国の徒な訴訟遅延行為を退けて、速やかに個別原告毎の要件該当性の主張立証が尽くされていくよう強く求めた。

原爆症認定集団訴訟からノーモア・ヒバクシャ訴訟へと、10年以上も続く裁判の中で、判決の日を迎えることなく無念の内に亡くなっていく被爆者は後を絶たない。第7民事部の田中裁判長が今年3月20日に勝訴判決を下した武田武俊さんも、国の非人道的な控訴で判決確定を手にすることなく帰らぬ人となられた。いつまでこのような原爆症に苦しむ人々をさらに苦しめ続けるのか。被爆者一人ひとりの思いに応えた訴訟指揮をとられるよう裁判所に訴えて吉江弁護士の陳述は結ばれた。

吉江弁護士の意見陳述の後、法廷は国の訴訟態度に対して原告側代理人が厳しく批判し問い詰める場面となった。国側代理人は総論部分の求釈明に対する原告側の回答を求め、それがない限り個別原告毎の主張立証はしないとの態度だ。原告側代理人は明らかな訴訟進行遅延行為である国側の態度をあらためて批判し、求釈明に対して回答することの必要性も意思もないことを明らかにした。

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裁判官は珍しく途中休憩を入れて合議の時間をとり、あらためて取り扱いの提案を行った。総論の取り扱いと各論の取り扱いを平行して行なうこととし、原告側は国側の反論がなくても個別原告の主張立証をしていってはどうか。そのような取り扱いを双方検討して欲しい、という一方的な断定は避けたとりあえずは穏便な提案であった。原告側は、「国は個別原告についての反論主張をしないのならしないと明言すべきだ」、「国が主張しないのなら今後資料提供など一切の協力はできない」等の意見を突き付けて、次回に向けて各論主張の準備に入っていくとした。

いつもはどんなに激しい論争であっても弁論や証言自体は粛々と進められるのだが、今回は原告側代理人席から弁護士が次々に起立して、語気鋭く、被告側代理人を批判し、追求していく法廷場面となった。国側のあまりにも理不尽な主張と、原告・被爆者や裁判所に対しての不遜極まりない態度を看過することはできなかったためだ。

次回日程を9月30日(火)10:30からと定めて、当初の予定よりかなり時間オーバーしてこの日の裁判は終了した。

いつものように大阪弁護士会館に会場を移して報告集会となったが、法廷でのやりとりが傍聴者にはもう一つ分りにくいこともあったため、あらためてその説明、解説が行われ、理解を深めることに集会の中心は置かれた。愛須勝也弁護団事務局長は、国は総論部分から、一から訴訟をやり直す方針をとろうとしていること、明らかな裁判引き延ばし策であること、近畿だけでなく全国で同様の展開がされようとしていること等を丁寧に説明された。藤原精吾弁護団長は、個人ごとの被ばく線量を示せなどというのは、本音は個人線量の明示なしで判決を下している裁判所への批判であり、脅しでもあるのだと解説された。

尾藤幹事長_convert_20140723111112

最後に尾藤廣喜弁護団幹事長から次のようなまとめが行われ報告集会を終了した。明らかな国の方針転換だ。理由は二つで、一つはこれからの福島対策、もう一つは社会保障費削減対策。大きくは財務省方針が背景にある。国側の訴訟対応は自らがこれまで行なってきたことともまったく矛盾する。個別原告に対する国の主張がないのなら原告側主導で主張立証の準備を始めるが、これは前代未聞の事態だ。国側の態度は法廷だけでなく、国会でも、政党に対しても、世論に対しても徹底して明らかにし批判していかなければならない。社会保障との関係でも、平和を守っていくためにも、原爆症認定訴訟はますます重要な意味を持ってきている。一日も早い問題解決のため、この夏さらに頑張っていこう。

 梅雨が明け、一年で一番暑い時が来た。間もなく被爆者も私たちも、日本国民・住民全員が永遠の平和を祈念する8月6日、8月9日を迎える。憲法破壊・戦争する国づくりを許さず、核兵器禁止条約交渉開始に確実な一歩を踏み出せるよう、大きな運動を作り出す夏を迎える。そのためにも原爆症認定制度の抜本的改革に向けた運動を更に力強く進めていきたい。

 報告集会後の打ち合わせ会議において、裁判所に対して控訴棄却を求める署名『国の非人道的な控訴は直ちに棄却し、原爆症と認めてください』を、当面の重点運動課題とし、9月16日(火)を期限に思いきって集めて積み上げていくことをあらためて確認しあった。一段と力を込めてとりくんでいこう。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程

9月26日(金)

1100

第2民事部

1007号

弁論

9月30日(火)

1030

第7民事部

806号

弁論

10月10日(金)

1500

大阪高裁

別館82号

武田さん控訴審

2015年

1月30日(金)

 

1100

 

第2民事部

 

1007号

 

Aグループ判決言い渡し

 


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2014.07.24 Thu l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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