被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記⑲
3月の第7民事部に続いて、5月9日大阪地裁第2民事部判決も全員勝訴!
この判決内容を国民多数の共通認識に!
2014年5月12日(月)
 
 
3月の大阪地裁第7民事部、熊本地裁、4月の岡山地裁に続いて、5月9日(金)ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟大阪地裁第2民事部(西田隆裕裁判長)の判決が言い渡された。原告二人はともに勝訴することができた。今回は2009年以来提訴されてきた原爆症認定義務付け訴訟の最後の原告二人への判決言い渡しだったが、元の原告梶川一雄さん(伊丹市)と榎本寛さん(神戸市)は二人ともに既にこの世になく、この日の判決を自ら聞くことはできなかった。お二人とも同じ年生まれで、認定申請も同じ2008年。しかし2年経っても処分通知はなくやむなく義務付け訴訟を提訴。既に87歳の時だった。その直後に却下処分され、裁判を取り消し訴訟に切り替えるという経過を辿り、今日まで6年もの歳月を費やした道のりだった。
さわやかな五月晴れの下、弁護団、支援の人々は10時40分に大阪地裁前に集合。メディアのカメラ砲列の前を行進して入廷し、1007号法廷を埋め尽くした。原告席には裁判を承継された梶川一雄さんの奥さんも着席された。梶川さんの奥さんは梶川さんの遺志を継いで原告本人尋問の証言台にも立ち、医師証人尋問の一部始終も傍聴席からしっかりと見守られてきた人だ。11時開廷、判決言い渡し。勝訴を確認して原告を担当してきた塩見卓也弁護士と坂本知可弁護士が直ちに裁判所正門前に駆けつけ、「全員勝訴」「厚労省!生きてる間に認定せんかい!!」の旗出しを掲げた。

旗出し_convert_20140509162657

正午から大阪弁護士会館1001会議室にて勝利報告集会が行われた。
まず愛須勝也弁護団事務局長からあらためて勝訴判決の結果と内容の説明が行われた。放射線起因性の総論はこれまで示されてきた司法判断の基本が変わらずに展開され、原告の主張が今回も支持された。国の被曝線量算定方法には限界があり、特に誘導放射線及び放射性降下物による放射線については、内部被曝の影響を考慮していない点を含め、地理的範囲及び線量評価両方において過小評価となっている疑いがある。・・・・・被爆者の被曝線量評価に当たっては、当該被爆者の被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後の症状等に照らし、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性を十分に検討する必要がある、と。これは昨年12月16日に再改定されたとする厚生労働省の新しい認定基準そのものが明確に否定され、批判されたことを意味する。

梶川さんは当時陸軍暁部隊にいて広島の爆心地から7.0kmの距離で被爆。当日宇品まで一度は入市したがその後部隊に帰り、8月9日までの期間部隊に搬送されてきた100人を超える被爆者の救護、看護に当たった。8月10日から12日までの3日間は市内中心部にまで立ち入り被爆者の救護、遺体の運搬などに携わった。この間の行動は終始マスクや手袋もつけず素手のままの状態で行なわれた。梶川さんは戦後著しく体調を悪化させ、数々の病気にも見舞われてきたが、心筋梗塞をもって原爆症認定申請をした。国の新しい認定基準では心筋梗塞の積極的認定基準は直爆2.0km以内、入市は翌日に限り1.0km以内という線引き設定だ。このため昨年12月16日以降の係争中被爆者の申請見直しにおいても「復活」認定されることなく切り捨てられていた。この新しい認定基準によって却下された処分が司法によって取り消され、あらためて認定せよと命じられたのだ。

判決はまた心筋梗塞と放射線被曝との関係についても、「心筋梗塞などの虚血性心疾患について、低線量被曝と関連性はない旨の被告の主張は、採用することができない」、「心筋梗塞と放射線被曝との間には低線量域も含めて関連性が認められる」、すなわち心筋梗塞に対する放射線量のしきい値は存在しないと、繰り返して断じられた。

もう一人原告榎本寛さんの申請疾患は腎臓がんと右腎臓がん摘出手術に伴う慢性腎不全だった。腎臓がんは13年前に摘出手術が行われており要医療性の点から却下処分取り消しには至らなかったが、腎臓がんの放射線起因性は疑う余地がなく、その摘出手術の結果「高度の腎機能低下」になったのだから慢性腎不全も放射線に起因すると認められなければならないとされた。国は慢性腎不全は手術の影響によるものではないとか、要医療性はないとか主張していたが、ことごとく退けられた。
判決後の記者会見を終えて報告集会に合流された梶川さんの奥さんに勝利を祝す花束が贈られた。梶川さんは、「主人が生きていたらどんなに喜んだろうか、これから帰って仏壇に報告します。」と挨拶された。加えて、「国のやることは遅い、みんな国の犠牲になってきたのに。時々国会議事堂にまで行って一言言いたい時がある」と率直な心情を述べられた。これだけの壮絶な被爆体験をし、これだけの闘病人生を余儀なくされてきて、それでも原爆とは関係ないと却下で終わらせてはならない、という梶川一雄さんの強い意志が奥さんを動かし、裁判承継を支え、励ましながら今日の日を迎えた。夫婦一緒に判決を聞くことができなかった悔しさは計り知れないが、心の中では最後まで夫婦一体で裁判を戦い抜くことができた、それが実感ではないかと思う。

二人の原告の担当弁護士からも一言づつ今日の判決の感想が披露された。榎本さんの担当弁護士である坂本弁護士からは「勝訴判決を勝ち取ることができて正直ほっとした」との偽らざる心境が吐露された。榎本さんの医師証人尋問は昨年の9月4日だったが、主治医ではない医師(穐久英明医師)に代わって証言をお願いしたこと、原告本人が既に亡くなられていること、診療記録が十分には残されていなかったことの3つの難しさを抱えての証言だったことを思い出す。弁護団のご苦労も大変なものだったと思う。そして今日あらためて穐久先生のご努力への感謝の言葉も述べられた。

坂本さん_convert_20140509162626  
 
 梶川さんを担当した塩見弁護士は、特に放射線起因性を認める根拠として救護被爆の影響がとても丁寧にしっかりと評価された判決であったと強調された。国の新しい認定基準では救護被爆のことなどはまったく基準範疇に入らないものであり、そういう点でも国の審査の実態と司法判断との際立った違いが明らかになっている。

塩見さん_convert_20140509162719

記者会見で発表された原告団・弁護団・支援ネット3者連名の声明について藤原精吾弁護団長から説明が行われた。今日の判決は3月の大阪、熊本、4月の岡山に続いて国の違法な認定行政を確認し33回目となる断罪であること、梶川さんについては救護や遺体運搬などの活動による外部及び内部被曝を認めた点に大きな意義があること、申請から6年間も経過し原告は判決を待たずに亡くなってしまった事態について厚労相の責任は極めて重いこと、そして今こそ被爆者の苦しみに終止符を打たなければならいとの訴えを要旨とする声明だった。そして厚生労働省に3つのことを求めた。①控訴することなく直ちに判決に従え、②判決に基づいて過去の却下処分をすべて見直せ、③被爆者援護法と認定の在り方を抜本的に改め被爆者の命ある間に問題解決をはかれ。判決後の声明で過去の却下処分をすべて見直せと求めたのはおそらく初めてではないかと思う。藤原団長は2007年明らかとなった「消えた年金問題」の事例なども引きながら要求の正当性、重要性を説明された。

藤原先生_convert_20140509162459

報告集会では尾藤廣喜弁護団幹事長によるお祝いの尺八演奏も披露された。みなさんの奮闘を癒し、会場いっぱいに明るさと温かさを醸し出す音色だった。何時にはない演出に参加者から盛んな拍手が贈られた。

尾藤憲山_convert_20140509162411
3月20日第7民事部判決では4人の原告全員が勝訴となったが、こともあろうに厚生労働省はその内の一人武田武俊さんについて不当にも控訴した。武田さんは83歳という高齢で認定までに6年近い歳月を費やした。勝訴判決後の記者会見で述べられた言葉が忘れられない。「私は初めて法廷に立ち、意見陳述した時の言葉を思い出します。『どうぞ私の頭が正常であり、皆様方に感謝の言葉を申し上げることができる内に解決して下さい』と言ったことを」。この言葉を思い起こすと国の控訴がいかに非人道的な暴挙であるか、怒りが収まらない。
今回報告集会ではこの武田さんについての控訴に対して、裁判所が直ちに「控訴棄却」をするよう求める署名運動のとりくみが提起された。正確には要請事項として「裁判所におかれましては、第一回口頭弁論でただちに『控訴棄却』の公正な判断をお願いします。」と表現され、一人一筆の署名用紙だ。運動をできるだけ早く盛り上げ、一日も早い勝訴判決確定を勝ち取っていきたい。
6月7日(土)、大阪社会福祉指導センターで予定される「ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・全面勝利をめざす学習・交流集会」の企画が紹介され、多数の参加がよびかけられるなどして、この日の報告集会を散会した。
午前中の判決であったため判決は夕刊各紙で一斉に報じられた。各紙とも12月16日以降またしても国の却下処分が否定され、実質的に新しい基準が誤りであると判断され続けていることに記事の中心は置かれていた。メディアも指摘する現在の認定行政の問題について、厚生労働省はこれからどのように対応するのか。今回の判決の結審は12月11日で、日程上は新しい認定基準が了承される直前であった。それをもって厚生労働大臣が「判決は審査方針見直し以前のもの、新基準自体が否定されたわけではない」などというトンチンカンな見解を述べるのはもはや止めるべきだ。
各紙とも新基準制定によっても多くの被爆者は救済されない現実を報道し、それが司法判断によって翻されている問題を指摘してきた。加えてさらに思うのは、メディアには判決の内容により深く切り込み、より本質的な追求を行なう態度も求められるのではないかということだ。判決は国の外部被曝放射線量の算定方法にも疑問を呈し、評価が過少であると指摘している。今や重要な要件であるはずの内部被曝についてはまったく考慮していないことを厳しく批判している。心筋梗塞などの疾患と低線量被曝との関係、しきい値の存在は認められないとする知見も繰り返し明らかにされてきた。そのことこそが判決の大前提になっている。放射線の人体への影響を考慮するこれらの根本的な問題と判決の事実をより詳細に、より深く報道し、国民共通の認識形成に寄与していく必要があるのではないか。それはメディアへの期待であるとともに、私たち自身の決意でもなければならない。
広島・長崎の原子爆弾の影響と被爆者援護行政の在り方に止まる問題ではない。もっと幅広く、直面する福島第一原発事故被災者のことも含めて、あらゆる放射線被害に共通する問題として、その解決に貢献していくこととして捉えていく必要がある。愛須弁護士からはこうした観点から原発問題にとりくむ国会議員団との意思疎通がはかられている実態も報告された。
この日は金曜日。京都では毎週開催の続いている関西電力京都支店前反原発スタンディングアピールの日だ。夕闇の中で繰り返される反原発コールの合間、マイクを拝借して原爆症認定裁判全員勝訴を報告し、引き続くノーモア・ヒバクシャ訴訟勝利と脱原発、福島被災者支援のための共同行動を訴えた。
 
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
5月29日(木)
11:30
第7民事部
806
 
弁論
6月07日(土)
13:30
大阪社会福祉指導センター
 
全面勝利めざす学習・交流集会
 
7月11日(金)
13:30
第2民事部
1007
第6・7・9・11次
結審

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2014.05.13 Tue l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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