被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記⑰
被爆の真実究明を阻んだ68年前の政策と同じ姿勢の厚生労働省は許さない!
郷地医師が証人尋問で厳しく糾弾!
2014年3月17日(月)
 
 
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は2月26日(水)以降毎週、第2民事部と第7民事部の審理が交互に行なわれており、3週目となる3月14日(金)は第2民事部の医師証人尋問が1007号法廷で行われた。第6次、7次、9次、11次の原告7人のグループの内後半3人についての医師証人尋問で、郷地秀夫医師(東神戸診療所所長)が証言台に立たれた。郷地先生は昨年5月16日の第7民事部での証言以来の法廷だ。
午後1時30分開廷。裁判長から「座って証言してもよい」と勧められたが、郷地先生は「座ると気合が入らない」と応えてほぼ最後まで2時間30分を立ちづめで証言された。自らへの気合だったのだろうが、その気合は傍聴席にまで届けられたような気がした。
今回証言の対象となる3人の原告は、申請疾患が甲状腺機能低下症のF・Nさん(74歳、女性、神戸市中央区在住)と川上博夫さん(80歳、兵庫県加東市在住)、そして火傷瘢痕(ケロイド)を認定申請している塚本郁男さん(82歳、姫路市在住)だ。
主尋問は前田麻衣弁護士による甲状腺機能低下症と放射線起因性の総論について、及びF・Nさんの疾患についての質問から始められた。甲状腺機能低下症については前回2月26日の法廷で河本一成医師(あさくら診療所所長)によって詳しく証言されたばかりだ。加えて今回は、喫煙が甲状腺機能低下症の危険因子であるとする被告国側の主張とその根拠としている論文に対して、いかに科学性が欠除し信ぴょう性の無いものであるかを手厳しい批判で証明された。反対に2014年、つい最近明らかにされたばかりと言うデンマークの論文が紹介され、喫煙危険因子説とはまったく反対の結論が最新の知見であると説明された。
次いで川上博夫さんについての証言は森川順弁護士の尋問によって行なわれた。驚くべきことだが被告国側は、F・Nさんに対しても川上さんに対しても「低線量被曝であり、低線量被曝と甲状腺機能低下症との間の関連性はない」と主張しているらしい。お二人の被爆状況は昨年10月23日の本人尋問で詳しく述べられている。F・Nさんは直爆2.2kmで翌日には爆心地から1.2kmまで入市している。川上さんも3日目に爆心地から500mまでの入市だ。低線量被曝などとんでもない。相当量の放射線を全身に浴びたと判断するのが今や一般的な常識と言っても過言ではないはずだ。さらに、あれだけ判決が繰り返されているにも関わらず依然として「低線量被曝と甲状腺機能低下症との間の関連性はない」と主張していることには驚きを超えるものがある。
主尋問の後半は大槻倫子弁護士の質問で塚本郁男さんのケロイドについての証言が行なわれた。ケロイドの原爆症認定について裁判で争われた例は少ない。原爆症認定集団訴訟の資料を少し見た限りでは4件だけ(近畿1、広島3)で、それも他の疾患と合わせての申請ばかりだった。私も近畿訴訟を傍聴するようになって初めて出会う例だ。そうした事情もあって、郷地先生も大槻弁護士と弁護団も昨年末頃からからしっかりと時間をかけて証言準備をされてきたとのことだ。閉廷後の報告集会では、この日の日付の変わる頃までかかって尋問最終稿の用意がされたと紹介された。
塚本さんは爆心地から1.7kmで被爆し、左半身の頭部から足先まで大火傷を負い、まともな治療も受けられないまま故郷に搬送され、年明けの昭和21年春になってもまだ火傷部分の化膿が続くほど治癒には長い時間を要した。こうした状況をどう見るかと問われ郷地先生は、放射線の影響を説明すると同時に、「よく助かったものだ」と述懐するように評価を述べられた。塚本さんの本人尋問も昨年10月23日だったが、その時に語られた治癒に向けての日々は“苦闘”というような凄まじいものであったことを思い起こす。郷地先生の思いに深く同感した瞬間だった。
被告国側は、塚本さんはケロイドではなく肥厚性瘢痕ではないかとか、火傷瘢痕の治癒過程に放射線被曝が影響する科学的知見はない等々と主張しているようだ。郷地先生は、被爆当時の被爆者治療と救済の現場にあって、困難な中にも懸命になって奮闘した研究者・医師たちの研究論文・文献等にも基づきながら、肥厚性瘢痕などではなく特異な状態を持つ明確なケロイドであること、放射線の影響によって症状は拡大し治癒遅延する実態を詳細に証明されていった。塚本さんは当時広島商業中学の学生だったが、東京大学研究班が昭和21年にその広島商業中学の学生109人を対象に調査をし、90%の学生にケロイドを認めている報告も証言の中に含まれていた。
郷地先生が証言の中でも特別力を込めて語られたのは、被告国側が塚本さんの治癒遅延の原因は当時の衛生状態に起因すると主張していることに対しての反論だった。衛生状態起因論を持ち出しあえて放射線の影響を否定しようとしたのは誰だったのか。原爆の非人間性が露わになることを恐れたアメリカの研究者たちと占領軍に連なる研究者たちだったのではないか。日本の医師による被爆者の研究は禁止され、脅迫され、圧力をかけられ、長く閉ざされたのが歴史の真実ではないか。米軍占領やABCCの影響で研究に制約がある中で、実際に被爆者を診た医師達が被爆者の火傷の多くがケロイドとなり、その放射線との影響を指摘していることこそが重要なのだ。被爆者のケロイドが衛生状態に起因するなどという主張は、被爆者と被爆者と真摯に向き合ってきた研究者に対する冒涜にほかならないと訴えられた。今日の被爆者の苦しみの根源となった68年前の被爆の実相を覆い隠す占領政策を、今日厚生労働省が同じ主張で繰り返すことなど断じて許すことはできない。
証言は午後4時過ぎに終了した。これで第2民事部の第6次から11次までの原告7人のグループは今回で医師証人尋問もすべて終了。7月11日(金)に結審、最終弁論を迎えることになる。

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午後4時40分から会場を大阪弁護士会館に移していつものように報告集会が行われた。証言台に立たれた郷地先生、報告集会は欠席となった前田・森川弁護士に代わって濱本由弁護士、大槻弁護士、原告の川上さんからそれぞれ今日の感想とお礼のあいさつ、これからの決意が述べられ、参加者から感謝とねぎらいの拍手が送られた。
報告集会では藤原精吾弁護団長より今日の裁判の特別支援参加者だと紹介された方があった。27年間原子力発電所で働いて来られ、2年前に心臓の悪性腫瘍を発症して労災認定申請をし、今年1月認定を勝ち取ることができた人だ。原発現場での労災認定は極めてハードルが高く、容易に認定されることなどないのが実情のようだ。ノーモア・ヒバクシャ訴訟の闘いの経験と蓄積によってそこを打開することができたとの紹介だった。主任弁護士として弁護団の濱本弁護士が担当、ノーモア・ヒバクシャ訴訟で証言されている西淀病院副院長の(あき)(ひさ)英明医師が意見書を作成されたとのこと。広島・長崎の被爆者も同じ核エネルギー被災者である原発被災者、原発労働者と共にこれまで以上に力を合わせて運動を進めていく必要があり、原発労働者の実態の生き証人として今日は参加してもらったとの紹介だった。
本人からも挨拶が行われた。福島第一原発で今現在働いている人にも相当量の放射線を浴びている人は少なくない。後々必ず障害が現れることになるだろう。私の経験がその救いになればと思っている。これからもよろしく、と語られた。
その後更に関連して、3月15日(土)開催されるシンポジゥム「原発事故による避難者のための健康・医療対策」と題した企画も案内された。近畿弁護士会連合会の主催で、郷地医師が基調講演、弁護団幹事長の尾藤廣喜弁護士もパネリストを務められる。福島第一原発事故によってもたらされた深刻な放射能汚染問題の対策に向けて原爆症認定訴訟を含む過去の公害・薬害対策の運動から学んでいこうという催しだ。
私の属する京都「被爆2世・3世の会」でも先月19日、福島から京都へ自主避難されている方を招いて、その実情とこれからの課題・展望について詳しくお聞きする機会をもった。放射能汚染を過小評価する動向、それに振り回される人々、家族のきずな、経済的な問題等々様々な困難が交錯する中で、子どもたちの健康と未来をこそ中心において避難を決断し、厳しい生活に挑んでいる人達の思い、決然とした姿には私たちの側が学ばされることがとても多かった。被爆者、被爆2世・3世が今こそ福島の人達とも連帯して放射能被災の救済と克服、根本的解決に向けてとりくんでいかなければならない時だと思いを深くした。大飯原発差止訴訟にも、避難者の人達が国と東電を相手に闘う原発賠償訴訟にも積極的に参加していきたいと思う。
今日の裁判傍聴には郷地先生が所長を務められる東神戸診療所から7人もの職員の方が参加されており、こちらも紹介された。郷地先生の被爆者のみなさんにかけられる思いがとても勉強になったとの感想だった。
報告集会は、3月20日に迫った第7民事部判決言い渡し日のとりくみについて再確認、全国原告団副団長の和田文雄さんの挨拶があり、最後を尾藤弁護士の締めで終了した。
今週はいよいよ判決言い渡しだ。
 
 
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
3月20日(木)
13:10
第7民事部
806
第5・8・10次
判決
509日(金)
11:00
第2民事部
1007
第3次・4次
判決
5月29日(木)
11:30
第7民事部
806
 
弁論
7月11日(金)
13:30
第2民事部
1007
第6・7・9・11次
結審
 

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2014.03.19 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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