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被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記 ⑪
2年ぶり厚生労働大臣との定期協議開催!
だが、8月2日大阪地裁判決を真正面から受け止めようとしない厚労相、
そして「在り方検討会」議論
2013年10月3日(木)
 
 
2009年の「8・6」合意第4項で確認された「(原爆症認定について)今後、訴訟の場で争う必要のないよう定期協議の場を通じて解決を図る」ことを目的に設置された定期協議が9月20日(金)、日本被団協、全国原告団、全国弁護団連絡会と厚生労働大臣との間で開催された。今回私も一員に加わらせていただき傍聴に参加した。定期協議設置が確認されて4年、実際の協議は2回しか行われておらず、やっと今回第3回目を迎える。その間、厚労相は5人も代わっている。
今年8月2日大阪地裁で8人の原告全員の勝訴判決が言い渡されたこと、国は控訴せず判決が確定したこと、8月、安倍首相が「認定制度のあり方検討会」の年内結論を指示したこと、また前2回と異なり政権交代後の新厚労相との協議であることなどから、何等かの前進方向、わずかでも踏み込んだ内容の確認ができるのではないかと期待を抱いた人達は少なくなかったのではないかと思う。

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会場の厚生労働省9階省議室は100人の傍聴席がぎっしりと埋め尽くされ、午後3時30分から1時間の予定で始められた。最初に田村憲久厚生労働大臣が、続いて日本被団協田中煕巳事務局長が挨拶。田中事務局長の挨拶では、田村厚労相の伯父にあたる田村元元衆議院議長は長崎の被爆者であったこと、田村大臣も被団協の現行法改正要求に賛同署名をされていることについて、紹介と謝意が述べられた。

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挨拶に続いて、広島の原告八木義彦さん、東京の原告立野季子さんが、被爆者及び原告を代表して、被爆体験の発言と認定行政改革の訴えを行った。
八木さんは11歳、国民学校5年生の時、爆心地から1.5kmの学校で被爆。一旦郊外に避難した後も2日後から爆心地へ入り再度被爆した。黒い雨にもうたれた。初期急性症状は半年余りも続いた。40年間高血圧症状に苦しみ続け、2010年(平成22年)急性心筋梗塞を発症。原因は被爆でしかあり得ず、原爆症認定申請をしたが却下された。
立野さんは13歳の時、長崎の爆心地から3.0kmの女学校で被爆。八木さん同様黒い雨にもうたれ、爆心地松山町を通っての入市被爆も体験した。2001年(平成13年)頃から異常な高血圧(200以上)に見舞われ、嘔吐、眩暈も繰り返し、さらに心筋梗塞を発症した。
二人とも認定申請疾患は心筋梗塞だ。そして判を押したように、1.5km以遠の直爆被爆、入市被爆であることから却下処分された。二人は田村厚生労働大臣に対して、8月2日の大阪地裁判決を真摯に受け止め、判決に基づいて認定行政を改めるよう求めた。そして、被爆者の高齢化は加速度的に進行しており、早期の改革、解決を訴えた。
今回の定期協議に臨むにあたって「原爆症認定に関する統一要求書」が作成され、あらかじめ提示されていた。その要旨(下記)が宮原哲朗全国弁護団連絡会事務局長より説明された。
(1) 現行審査方針の再々改訂要求
8月2日大阪地裁判決と国は控訴しなかった事実に基づいて、認定制度検討会の結論を待つことなく、厚生労働大臣判断で直ちに行えることとして以下の改訂をすること。
   現行認定審査方針の「積極認定疾病」の改訂
Ÿ   「放射線白内障」から「放射線」の文言を削除する。
Ÿ   心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変の各疾病に条件づけられている「放射線起因性が認められる」の文言を削除する。
   「積極的認定」範囲以外の申請に対する認定方針(総合認定)の改訂
Ÿ   審査の基準を明示する。
Ÿ   「この間の裁判所の判断を十分に尊重して認定する」の文言を加える。
Ÿ   「悪性腫瘍は、積極的認定の範囲に含まれない場合でも、放射線起因性を否定する特段の事由が認められない限り積極的に認定する」の文言を加える。
(2) 認定基準の改訂を行った上で、被爆者の早期認定の実施。特に訴訟継続中の原告・被爆者に対しては却下処分を取り消し、速やかに新たな認定を行うこと。
(3) 被爆者援護法(現行法)を改正し、認定制度を抜本的に改めること。
Ÿ   現行法の抜本的改正についての日本被団協からの提言を説明。
Ÿ   認定制度検討会の議論状況について危惧を抱かざるを得ない現状を指摘。
(4) 今後の定期協議の開催時期について
   原則として、概算要求前の毎年7月開催を要望。
   現在懸案中の認定制度抜本的改革のために、認定制度検討会からの最終報告が出された後、年度内に再度開催を要望。
   定期協議と定期協議の間に、担当副大臣あるいは担当政務官との協議の場を確保すること。
要求事項の説明に続いて、藤森俊希日本被団協事務局次長と藤原精吾近畿弁護団団長から補充発言が行われた。藤森事務局次長は、認定制度検討会の議論の実態、設置目的とはあまりにかけ離れた異質な議論状況を明らかにし、事態を正しく見極めるよう求めた。藤原弁護士は、1963年の東京地裁下田原爆裁判から今年8月2日の大阪地裁判決までの原子爆弾被災についての司法判断の歴史を述べ、その上で、日本が法治国家であることの原則をないがしろにされている実態、行政が司法判断に従わない事実を厳しく糾弾した。そして、大きな役割を持つ厚生労働大臣が大所高所に立って、認定のあり方について大きく舵とりすることへの期待を強調した。
二人の被爆者の訴え、統一要求事項の説明と補充発言を受けての、田村厚労相の回答はしかし、まったく期待を裏切るものだった。現行審査方針」の再々改訂要求、係争中の原告の取り扱い要求、法改正についての提言と要求、定期協議の開催についての要求、いずれの項目についてもすべて「認定制度検討会の結論を待った上で検討、対応したい」という、回答とも言えない先延ばし「回答」が語られるだけだった。在り方検討会の最終報告が出た後に再度定期協議をとの要求についても、まず事務方との協議を先にと、明言は避けられた。所管大臣としての見識、トップとしてのリーダーシップはどこにあるのかと、疑問に思わざるを得ないものだった。
大臣「回答」を受けて、安原幸彦全国弁護団連絡会副団長から意見が述べられた。まず、「新しい審査方針」における放射線起因性判断の積極的認定範囲は「格段に反対すべき事由がない限り」積極的に認定すると明示されているのであって、その上さらに非がん疾患に対して「放射線起因性が認められる」と頭言葉をつける必要はないはずだ。次に、大臣回答はすべて在り方検討会の結論を待ってとなっているが、検討会の主要な課題は制度改定であって認定基準を議論する場ではない。基準の問題は厚労省の判断でできることだ。そして、非がん疾患については余程の近距離被爆者でない限りすべて却下されており、被爆者はやむなく提訴してはじめて認定を得ているのが実態だ。被爆者はみんながみんな裁判に訴えることができるわけではない。その結果、提訴できる人は認定され、提訴できない人は泣き寝入りを強いられるという現実が生じている。「放射線起因性が認められる」という形容詞はそういう役割や差別を作りだしている。私達はこの文言を削って、裁判しなくても認定される行政を求めているのだ、と。

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田村厚労相の再度の回答もすべて「在り方検討会での議論待ち」に終始した。安原弁護士は、司法と行政の乖離をなくすというのなら、その最も近い道は「放射線起因性」の文言を削除することだとあらためて主張した。
最後に児玉三智子被団協事務局次長から意見が述べられた。被爆者の高齢化が進行し、毎年9,000人から亡くなっており、制度改正は待ったなしの状況だ。在り方検討会の結論を待つのではなく、決断するのは大臣だ。被爆の実相に沿った決断をして欲しい。
予定の1時間が経過して意見交換はあっさり打ち切られ、協議は終了することになった。山本英典全国原告団長による締めくくりのあいさつは批判の込められたものになった。大臣は何度も「在り方検討会の結論を待って」と繰り返されたが、それでは定期協議が意味をなさない。この場でこそ解決すべきことは議論し解決しなければならない。セレモニーにしては駄目だ。在り方検討会の議論の中にも積極的で前向きな意見も出されている。それを政治がくみあげ、定期協議の場でとりまとめていかなければならない。検討会任せをやめて、この場を大事にしていっていただきたい。
 
田村厚生労働大臣が回答を先送りし、「議論の結果待ち」とする認定制度の在り方検討会はその後どのように議論が進められたか。第23回原爆症認定制度の在り方に関する検討会は、厚労相との定期協議の翌週、9月26日(木)開催された。厚労省ホームページにアップされた当日配布資料、支援ネットメーリングリストに投稿された発言メモ等から当日の状況を伺った。
8月の安倍首相の厚生労働大臣への指示に従って、最終報告は年内取りまとめを目標に作業を進めることが宣せられ、この日の議論は始められた。そのために『検討会におけるこれまでの議論の整理』が資料として準備され、これをもとに取りまとめを進めることも最初に示された。これが最終報告案のベースにされようとするもののようだ。
『検討会におけるこれまでの議論の整理』は、「(最終報告の基本的な)方向性について」、「放射線起因性」、「要医療性」、「手当区分の設定、基準などについて」、「司法判断と行政認定の乖離の解消について」、「国民の理解など」を小見出しに、項目を分けて、それぞれに議論されてきた概要、主要な意見というものを列記するスタイルで作成されている。被団協委員(坪井直代表委員と田中熙巳事務局長)による現制度の廃止、抜本的改革案提言に至る主張も一方の意見として記述はされているが、多くは、現制度を肯定、維持し、若干の手直しの範囲にとどめる、厚生労働省の意向に沿った意見で占められている。
検討会のそもそもの設置目的は司法判断と行政との間の乖離解消であったはずだが、被団協委員からの粘り強い主張にも関わらず、集団訴訟で積み上げられてきた判決、その後の司法判断、直近の大阪地裁判決、いずれもが真正面から取り上げられることはなく、司法判断の内容、根拠についてそれを深める議論はほとんどなされないままとなり、結局『議論の整理』でもまともな記述はなされないことになっている。それどころか、「裁判例を整理しても、もともと個々の判断であるため一般的、普遍的な部分は出てこないのではないか」とか、「個々の司法の判断にばらつきがあり、行政の判断とは次元が違う。司法の判断をそのまま行政認定に取り入れられない部分もあるので、乖離は完全には解消しない。」などといった意見が主な議論の一つとして臆面もなく羅列されている有り様だ。検討会委員には弁護士や大学院法学研究科教授も名を連ねているが、より専門的に法に携わる人達は、検討会のこの議論の事態-行政が司法判断に従わない、ないがしろにしている事態-に疑問を呈することはないのだろうか。
司法判断と行政との乖離を生む中心にあるのは放射線起因の「科学的知見」なるものについての態度だ。厚生労働省の意向に沿った意見は、「科学的知見」の枠から一歩も出ることはせず、結局はそのことを大前提にしてすべての論が展開されている。『議論の整理』では、「既に科学的には放射線の影響が不明確な範囲まで積極的認定範囲を広げており、この範囲を更に拡大することは難しい」、「残留放射線については、長崎のデータ、DS02などを見ても、初期放射線に比べて相当少なく、健康に影響を与えるような量が確認されたことはないというのが科学的知見である。」、「裁判所は一人ひとりの線量をあまり考慮せず、症状を見て判断している。一方、行政は一人ひとりの線量を考えて判断している。放射線起因性を判断する一番骨格のところは、放射線の被爆線量であり、これをなんとか把握しようというのが出発点だ。」等々の意見が依然として主な議論として記述されている。
“内部被曝”はその言葉すら一言も登場しない。
司法判断は、ほぼ全判決が共通して、線量評価体系(DS02)等による線量算定方法には一定の限界があるとし、内部被曝の影響をまったく考慮していない問題も含めてあくまで一応の目安にとどめるのが相当、としているのだ。そして、被曝線量を評価するには、被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後発症症状等に照らし、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性について検討する必要がある、と断じているのだ。“内部被曝”の概念、その重大な危険性は、原爆症認定訴訟における数々の証言の場で、放射線防護学の研究者、医師の証言によって明らかにされてきている。「科学的知見」なるものは、その非科学性ゆえに退けられてきたのだ。
そのことを一切考慮に入れない人達には、その瞬間から、被爆者が長い年月に渡って被ってきた本当の苦しみを理解することが出来ない状態になっている。「科学的知見」だけにこだわり、内部被曝などには一切触れない『議論の整理』では、とうてい被爆者の期待にも願いにも応えることはできず、本質的な解決は何も果たすことはできないのではないか。
『議論の整理』は項目の最後で「国民の理解」をしきりと強調している。「財政負担をお願いする国民の理解を得るために、認定要件を強める」とか、「国民的視点から見た公平性、国家的見地から見た責任のために要件を整理する」等の意見が主な議論として挙げられている。しかし、これらの項目、意見も厚生労働省の意向に沿ったためにする議論としか思えない。
 8月2日の大阪地裁判決、その後の安倍首相の控訴断念表明を受けて、メディアは一斉に「今度こそ認定制度の抜本的改革を急げ」と主張を掲げた。多くが、放射線の人体への影響はまだ未解明な部分が多いのだという、科学への謙虚な態度を支持し、そのことを前提に被爆者救済、速やかな認定制度の改革を求めた。「判決は、現行基準の被ばく線量の算定方法では、被爆の影響などが過小評価される疑いが強く、一応の目安にとどめるのが相当と指摘した。そのうえで、被爆状況や症状などに照らし、さまざまな形態での被爆の可能性がないかを十分に検討すべきだと述べた。・・・・・認定制度は、国の責任で被爆者を救済するためにある。線引きによる切り捨てと言う批判が絶えない基準そのものを見直すべきではないか。科学的知見に不確実な部分があることを踏まえ、司法判断との隔たりを解消する制度が望まれる。そのためには政治決断が必要だ。」(2013年8月11日毎日新聞) 「行政としても『疑わしきは救済』という司法判断の姿勢を取り入れるべきだろう。・・・・・被爆者の声によく耳を傾け、早急に新基準の見直しを実行に移してもらいたい。」(2013年8月11日西日本新聞) 「放射線の影響はまだ十分に解明されていない。それだけに、個々の症状は、実態に即してできるだけ柔軟に捉える必要がある。厚生労働省の有識者検討会もさらなる基準の見直しを進めている。」(2013年8月10神戸新聞)
 「国民の理解」と言うならこれらメディアで主張されている論評にすでに国民の理解は存在しており、明らかにらなっているのではないか。「在り方検討会」の議論は、国民の理解との間の乖離をも解消しなければならないことになっているのではないか。厚生労働省の意向に沿った意見しか述べることのできない検討会委員の見識と、国民理解との間の乖離をこそ埋めなければならないのだ。
 長時間に及ぶこの日の検討会の議論も、多くは『議論の整理』に追随、多少の追加訂正に止まるものに終始したような感じだ。田中被団協事務局長から提示された資料「大阪地方裁判所の判決と安倍内閣総理大臣の発言について」と、それに基づく意見に対しても、そのことにまともに応えようとした議論は検討会メモを見る限り存在しない。それどころか、積極的認定の範囲に関わる項目では、「非がん疾患については、3.5kmとかいう判断ではないと明記すればよい。現在においても積極的認定において差を設けている。明記しないから、基準と違う、なんて話が出てくる。」などと、現行の「新しい審査の方針」から更に後退を促すかのような、被爆者の要求に真っ向から挑戦するような意見も平然と語られている。
神野直彦座長から「次回検討会では最終報告書に向けた骨子を作成したい」と述べられて、この日の検討会は終了している。一部メディアはこの日の検討会の様子と結果から「意見の隔たりは大きく、両者が合意する形でまとめるのは難しい情勢となった」とか、「両論併記の形での最終報告になるのではないか」等と報じた。田中被団協事務局長の「これまでの議論の繰り返しで、このままでは制度の見直しにはつながらない。今後の議論に全力を尽くしたい」とのコメントも伝えられている。厚生労働大臣に投げ返されてくる“検討結果”はどのようなものになってくるのか予断を許さない。
 その後、次回(第24回)検討会の日程が10月15日(火)と案内されてきた。ここに来て慌ただしい検討会開催の様相だ。
 この秋から冬にかけて審理の集中するノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の勝利に向けてのとりくみを一層強化していくことと合わせて、認定制度改革の必要性をより広範な世論に訴えていくこと、政党や国会議員等政治の場面での働きかけもさらに強めていくことが求められている。

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2013.10.22 Tue l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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