原爆症認定訴訟を学ぶ上で重要なのが、「原爆症とは何か」です。
しかし、このもっとも基礎的な問題がなかなか難しいのです。

まず、取っ掛かりとなるのは原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)の第10条です。

厚生労働大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。

これだけでは何のこっちゃ分かりませんよね…。
ただ、まず分かっていただきたいことは、原爆症の認定を受けるためには申請時に、「現に医療を要する状態にある」ことが必要なんです。つまり、原爆症認定訴訟の原告の方々は現在様々な病気等と闘っていらっしゃる方、またはそのような闘いの末亡くなってしまわれた方々の遺族なのです。

そして、ゆっくり条文を読んでいくと、原爆症とは「原子爆弾の傷害作用に起因する負傷又は疾病で、何かしら放射能の影響によるもの」であるということは分かります。

…これって、実はすごくおかしな事なんです。
原爆の傷害作用には放射能の他に、台風を遙かに超える爆風や1600度を超える(爆心地では4000度)熱線があると言われています。
この条文の「ただし、」以下によると爆風に吹き飛ばされて怪我をしたり、熱線に焼かれてひどい火傷を負った人については、その怪我や火傷が放射能の影響で治るのが遅くなっていると認められない限り、原爆症と認められないということになるのです。原爆による爆風や熱線で傷を負ったのに原爆症ではない…。ほら、原爆症って何なのかやっぱりよく分からなくなってきましたよね。

そう、みなさんもお気づきの通り、この被爆者援護法も実は大変問題のある法律なのです。ただ、法律の改正には非常に多くの時間と手続を要します。
また、この問題のある法律の下でさえ原爆症と認められるべき方々についても、なかなか認めようとしないのが現在の厚労省なのです。
原爆症認定問題の真の解決とは何か、考えることが必要なときになっているのかもしれません。

分かりにくい文章ですみません。
もし、この記事を読まれて質問などがある方がいらっしゃったら、どんどんコメントして下さい。質問がなくても、「次回の初心者講座はこれをやってくれ!」とかの意見など、よかったらコメントして下さいね。

いまにしゆうすけ
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2009.04.08 Wed l 初心者のための原爆症訴訟講座 l コメント (3) トラックバック (0) l top

コメント

質問
>そして、ゆっくり条文を読んでいくと、
>原爆症とは「原子爆弾の傷害作用に起因する負傷又は疾病で、
>何かしら放射能の影響によるもの」であるということは分かります。

いまにしさんは、放射線の影響にこだわらず、
原爆の影響を受けた人には全員に手当をすべきだという意見
を持ってらっしゃるのでしょうか。
ご教示くださいませ。

ただ、放射線の影響という要件がはずれてしまうと、
普通の空襲の被害者も同等の手当をすべきということですか。
戦後しばらくたってから生まれた自分とすれば、
戦争のを初め、戦い、敗れた世代への補償を、
団塊の世代は無視したくせに、今の勤労世代に負わすということなのでしょうか。

ただでさえ、社会保障政策では、
今の老人の世代がもっとも恵まれているのに、
(払った額よりもらう額が大きい)
さらに、若い人からお金を搾り取って配分する必要があるのでしょうか。

そもそも、
日本人の平均余命を超えている方に、
放射線の影響ってあるのですか?
高齢になれば、がんになるのは当たり前な気がします。
日本人の半分ががんで死ぬ時代ですからね。
2009.04.16 Thu l 通りすがり. URL l 編集
コメントありがとうございます。
まず、お断りさせていただきたいのですが、今から書くことは全て私一個人としての意見であって、近畿弁護団の意見ではありません。このような問題に正解というのはないと思いますので、自分の意見が正しい、誤っているではなくいろいろな意見を交換させていただければという思いで書かせていただきます。

私が、原爆症認定で放射能の要件を外したほうがいいと考えたのは、
被爆時の爆風で飛び散ったガラス片が全身に突き刺さり、それが毎年どこかで化膿して痛み出す被爆者が原爆症と認定されない、という話を聞いたことがきっかけです。
一応原爆による影響という意味で空爆等との区別は出来ると思うのですが、じゃあ実際に何が違うのかと言われるとわかりませんし、認定制度である以上どこかでの線引きは必要でしょうから、放射能という要件もある程度やむを得ないのかなとは思います。ただ、放射能という要件があることをみなさんに知っていただき、いいか悪いかはともかく考えていただきたかったということです。

現代の勤労世代の負担や社会保障政策との話については、原爆症認定による医療特別手当が国の予算から支出される以上、通りすがりさんのおっしゃる通りのことになってしまうのかもしれません。ただ私としては、世代ごとではなく、本来みんなで負担すべきものを負担する、ということなんじゃないかなと思います。甘ちゃんな考えかもしれませんが。

最後のご質問及びご意見についてですが、原爆の後障害については、未だほとんど解明できておらず、被爆者に対する放射線の影響が最も出るのは2020年になるという話が、以前紹介させていただいた本に書いてありました。
確かに、今日ご高齢の方ががんで亡くなられることが多いのはその通りです。また、放射能もご高齢で弱った細胞を攻撃するのでしょうから、厳密に原爆の放射能の影響によるがんかどうかという事を区別するのは不可能に近いことでしょう。ただ、原爆による放射能により発がん率が上がるというのも確かなことです。ならば、明らかに原爆と関係ない場合以外は原爆症と認定すべき…ってこれも甘ちゃんですかね。

不明瞭なところや失礼に当たるところがあればごめんなさい。
私もまだまだ不勉強な身です。みなさんと一緒にいろいろ考えて行けたらなと思います。
2009.04.16 Thu l いまにし. URL l 編集
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2010.10.15 Fri l . l 編集

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