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郷地医師、認定申請原爆症の放射線起因性を終日かけて全面展開
京都でも全国でも「被爆2世・3世の会」結成すすむ


郷地医師

(平信行さんによる裁判傍聴記です)
 10月24日、大阪地裁202号法廷・第2民事部で、2009年12月提訴の原告グループ9人の内7人に関わる医師証人尋問が行われた。証人は東神戸診療所所長・郷地秀夫医師。この日は午前10時30分の開廷から午後5時過ぎの閉廷まで長時間、郷地先生一人が原告代理人、被告代理人双方からの質問に応え陳述する法廷であった。
 2003年から2011年まで原爆症認定集団訴訟のほぼすべての裁判において共通して決せられてきた司法判断は、「(それまで厚生労働省の採用してきた)算定被曝線量は、あくまで一応の目安にとどめるべきであり」「当該被爆者の被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後に生じた症状等を総合的に判断して、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要がある」というものであった。集団訴訟以後(ノーモア・ヒバクシャ訴訟の)最初の裁判となった2012年3月9日大阪地裁判決も同様の判断で2人の原告に対する却下処分は取り消され、勝訴となった。ここまで明瞭に司法判断が下され、積み上げられてきたにも関わらず依然として厚生労働省の認定行政はあらためられない。やむなく全国で多くの被爆者が提訴に立ち上がり、法廷での闘いが続けられている。今回の郷地医師の証人尋問は、原爆放射線と疾患の関係について専門的立場から原告の主張の正しさを解き明かそうとするものである。郷地医師はこれまでに2,000人を超える被爆者の診察経験があり、そうした実績にも裏付けされた証言である。

濱本弁護士

 原告代理人による主尋問は代表して濱本由弁護士による総論的質問から開始された。
濱本弁護士の質問に郷地医師が回答、説明する形で、放射線の持つ特質から放射線が人体に影響を与えるメカニズムについてまで、その基本的理解を一つひとつ確認するように尋問は進められていった。
 被爆形態は外部被曝と内部被曝の二通りあること、初期放射線は主に外部被曝、残留放射線は外部被曝と内部被曝の両方が問題になること、内部被曝は体内に取り込まれた放射性物質が臓器内で局所的に放射線を出し続けて被曝する形態であること、内部被曝で問題となるα線、β線は飛距離が短く、それだけ人体に与えるダメージが非常に深刻で危険なものであること等が説明された。α線、β線を体内に取り込む経路については、放射化した塵や埃を口から吸い込む、放射化した食料や水を摂取する、傷口から放射性物質が体内に侵入するなど様々な経路のあることが紹介された。その結果、内部被曝の程度は爆心地からの距離だけでは到底判断することはできず、原爆投下後の気象状況、本人の移動状況、行動経路、行動内容が非常に重要となることが明らかにされていく。
 爆心地からの距離だけでは被曝線量を判断できないという実例を、証拠論文として提出された鎌田七男先生の「フォールアウトによると思われる3重癌と3つの放射線関連疾患を持つ1症例」という論文で紹介された。広島爆心地から4.1キロの比較的遠距離で、しかし放射性降下物の多かった地域で被爆し、3つの癌と放射性起因性の認められる多数の疾病を発症した被爆者がいる。この被爆者の染色体を調べた結果被曝線量が300ミリシーベルトにものぼることを科学的に示した論文だ。
 さらに原爆放射線の被曝が高濃度の放射性粒子によるものであることを実証した、これも証拠論文として提出された七條和子論文「長崎原爆被爆者の米国返還資料を用いた残留放射能の検出法」が紹介された。被爆死した方の臓器からブルトニウム粒子が発見され、何万個も吸い込んでいることが推計された論文だ。人体に与える影響が非常に大きく深刻なものであることを証明している。
 原告のみなさんがどのような経緯で放射線被曝をしている可能性が高いかについて、一番高濃度に被曝したと考えられるのは入市の際の内部被曝だと考えられることが明快に示された。爆心地近くの移動によって大量に吸い込んだ塵や埃、黒い雨、作業や被爆者救護活動による放射性物質の取り込み、水や食糧の摂取、傷口からの侵入等々だ。
 国は福島の原発事故においては内部被曝を心配している。放射線汚染地域を同心円上に指定しているわけではなく、ホットスポットの存在も認め、食品の放射線汚染規制基準を設定していることからも明らかだ。そうであるのに原爆被爆者に対しては残留放射線の影響、内部被曝をまったく考慮しない。国の矛盾した姿勢も厳しく指摘された。
 残留放射線、内部被曝の重大性、危険性の解説に続いて、被告国側が原告の申請疾患を他の要因だと主張する主要な争点に応える形で、疾患起因性について、発症のメカニズムについての陳述が、概要以下の通りに進められていった。
 心筋梗塞・狭心症等の心血管疾患は冠動脈の動脈硬化によって引き起こされるが、動脈硬化は有害物質によってもたらされる血管壁への炎症によって発症する。放射線も炎症をおこすので、放射線によって動脈硬化が生じる。心血管疾患が被爆者に多いのも事実だ。放影研の疫学調査でも報告されている。
放射線が炎症によって動脈硬化を起こすのに対して、喫煙はもともと細くなっている血管を詰まらせる原因を与えるもので、虚血性疾患にとっては間接的な要因だ。したがって禁煙すれば心疾患のリスクは改善する。データによると禁煙2年間で非喫煙者と同じ水準までリスク低下すると報告されている。被爆者の人は禁煙しても非被爆者と同じように心疾患の発症リスクが下がらない。これは被爆者の虚血性心疾患が放射線を主な原因としていることを示している。
 国は高脂血症、高血圧も心疾患のリスク因子だと主張している。しかし、被爆者に心血管疾患の多いことを調べたところ、放射線は多面的に心血管疾患に悪い影響を与える因子を生じさせていることが判明している。高脂血症、高血圧自体が放射線の影響によるものであり、放射線起因とは別に、高脂血症、高血圧が独立して疾患要因となっているわけではない。
 郷地証人の陳述は、放射線や内部被曝について、人体への影響のメカニズムについて教室で授業を受けているような感覚だ。残念ながら手元に教科書もなく、黒板やホワイトポートを使った「講義」でもないため、「教師」の話についていくのが大変ではあったが、私達自身の認識を深めていく上でも貴重な機会ではなかったか。「講義」は、原告・被告双方の代理人席にも、傍聴席にも、そして裁判官席にも十分に行き届いたのではないかと思う。
総論的な証言の後、各原告毎に、原爆症認定申請疾患が原爆放射線に起因していると認められる根拠についての証言が進められていった。休憩を挟んで、尋問は原告毎の6人の担当弁護士が随時交代してすすめられた。
 7人の原告の被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後に生じた症状等は訴状でも示されており、また原告本人尋問の場でも詳しく述べられてきた。相当量の残留放射線、内部被曝を浴びていることは誰が見ても明らかだ。被爆時の年齢が一番幼かった人で5歳、最高でも19歳だから、放射線の影響度合いが極めて大きかったことも明らかだ。認定申請書に急性症状の記入がないこと、本人も記憶がないことを国側からの反論で指摘された原告が一人あったが、「異常な状況を経験する中で自己防衛反応によって記憶が消失することはあり得ること」とする医師らしい解説が加えられた。その方が本当に自然だと思う。
 原告のみなさんには家族を放射線の影響と思われる疾病で次々と亡くされている方が少なくない。家族の悲惨な戦後の歴史に思いを深くするとともに、本人の申請疾患が放射線の影響であることを確信する根拠にもなっている。
 国側は多くの原告に対して、申請疾患を他因子によるものと反論している。喫煙習慣歴、高血圧、高脂血症症状、貧血症等が主だった主張である。これに対して、限られた時間の中でも一人ひとりの国側「反論」に対して、丁寧な「反論」の誤りが指摘されていった。すべては総論的陳述で述べられた基本的知見に基づくものである。
国から高齢、喫煙、飲酒歴が起因だと主張された原告もあるが、本人は4つもの病気を認定申請しており、さらに癌も治療中だ。何等かの要因がないとこれだけの病気にはならないとし、放射線の起因以外考えられないことが証言された。
 原告代理人の総論的尋問と各原告の各論証言が終わった後、被告指定代理人による反対尋問に移った。しかし、被告代理人による尋問は、傍聴席にいる我々からしても首をかしげたくなるような質問が相次ぎ、また理解しにくい尋問態度もあった。
 例えば、「相当量の被曝とはどの程度のものか?」と質問される。具体的な数量数値を示せとでもいっているのだろうか?「それは障害を起こすほどの量であり、該当被爆者の被爆状況、急性症状から判断すればよい」と郷地医師は回答した。これ以上明快な回答はない。また、「自然放射線と原爆放射線とは見分けられるのか?」と質問される。仮に見分けられたとしてそのことに何の意味があるのだろうか?自然な状態ではあり得ない異常な放射線量の発生が確認されればそこから問題対応していけばよいことではないのか?次いで「急性症状の脱毛と加齢による脱毛との違いは何か?」との質問。何を明らかにしたいのか理解できない。さらに「証人(郷地医師)の語る原告の被爆状況は原告から聞き取ったものなのか?」と質問される。原告の被爆状況は訴状と原告本人尋問によってすでに確かめられていることではないのか?極めつけは原告I・Hさんの疾患起因について「喫煙、高脂血症ともにリスクはない、だから放射線が起因だとどうして言えるのか?」との質問。この質問に至っては空いた口が塞がらない。今日一日尋問で何を聞いていたのか?傍聴席からの失笑も漏れた。
 被告代理人の総論についての反対尋問の途中では、証言台周辺にてダラダラと細かい質疑応答のやりととりが長時間続く場面も発生した。傍聴席からは何がやりとりされているのかまったく分からない。裁判長からたまらず「書面で提出されている質問は別途に回答を求めればいいのではないか」と、裁判進行上の注意とも受け取られる一幕も生じた。
 2011年3月11日以降私達は、日本の国民全体が放射線障害について内部被曝について関心を深く強くしてきた。きちんと学習する機会も多くあれば、日常的なニュース、会話等から自然と身についてきた知識、意識も相当ある。原発事故以前と以後とでは国民的レベルで知識、意識は明らかに異なり、その水準は向上した。それと比較しても厚生労働省の政策を体現しているはずの被告代理人の質問内容は、日本国民との間でギャップを大きくしているのではないかと、そんなことを感じてしまう尋問だった。
 裁判終了後の報告集会で藤原精吾弁護団長がコメントされた「国側代理人も我々の税金で賄われているのだ」という指摘は痛烈だ。そして国側のあの姿勢は直接ノーモア・ヒバクシャ訴訟に関わるだけでなく、福島の被災者の人々にもこれから大きく覆いかぶさっていくのではないかと思うと、危機感すら覚える。
 最後に右陪席裁判官から動脈硬化と放射線との関係について、貧血や白血病に対する通常の医療的措置のあり方について、今日の尋問内容を再確認するように質問がなされ、午後5時を回って裁判は終了した。
証人の郷地先生は終日一人で、ほとんど立ったままの状態で陳述を貫かれた。

報告集会

 弁護士会館に移動し報告集会開催となった。予定時間を過ぎての開催となったため今回は短時間の集会だ。
主尋問総論質問を担当した濱本弁護士からまず感想が述べられた。郷地医師の陳述は、放射線について多くの人達が学ぶことができ、授業にも似た尋問になったのではないか、今回は司法修習生も多数傍聴していて大変勉強になったのではないかなどの感想だった。
 次いで終日証言台に立たれた郷地医師から感想が述べられた。国側の不勉強は相変わらずで、被告側に協力する研究者がいないのではないか。国民のレベルが上がっている中でそこに対応できない状態になっている。いずれにしても裁判は粘り強く頑張っていくしかない。今が一番重要な時だ、と強調された。
司会の西晃弁護士から、今回の尋問のために実は膨大な時間もかけて郷地医師とは準備してきたことが明らかにされた。こうした素晴らしい先生が味方にあって訴訟も前に向いて進められていることが紹介され、あらためて参加者全員で郷地先生に感謝と慰労の拍手を送った。
 最後に、藤原弁護団長のまとめの挨拶が行われた。国連では核兵器の非合法化を求める34カ国の共同声明が発表された。しかしこともあろうに世界で唯一の被爆国日本の政府はこの声明に不参加の態度をとった。世界の非難を浴びている。このような状況を変えていくためにもノーモア・ヒバクシャ訴訟を勝利していく意味は大きい、と結ばれた。

 被爆者の被爆体験と実相を未来に向けて継承していくことの必要性と、それを担う人々の誕生を待つ切迫した状況は、全国でも、地域でも共通の課題となっている。今年2012年度は特にそのための意識も高まり、具体的なとりくみが開始されてきた。
 10月3日東京御茶ノ水において日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)二世委員会主催による初めての全国被爆二世交流会が開催された。28人の二世・三世が参加し、実績のある組織からの活動内容、これから組織を予定している地域の計画がそれぞれ報告された。全国的なとりくみはとにかく初めてということもあってメディアも注目し、当日の様子はNHKニュースや各紙で報道もされた。
 日本被団協を中心にした全国の共同した活動はこれからとりくみが強められていくことになる。その最初の具体的行動として、日本被団協の国政要求事項に初めて「被爆二世のがん検診実施」が加えられることになり、早速10月5日の厚生労働省要請行動から要求は提示されていった。
 京都では10月20日(土)、京都「被爆2世・3世の会」が誕生した。7月から準備は始められ、当日までに37人の2世・3世が入会して「会」はスタートした。「結成の集い」では京都原水爆被災者懇談会世話人代表の永原誠先生はじめ、ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟弁護団の久米弘子弁護士、被爆2世でもある井上哲士参議院議員などから挨拶が寄せられた。プロカメラマン吉田敬三氏による記念講演「被爆2世として堂々と生きる姿を」と題した記念講演も行われ、2世・3世活動の出発点を確認することになった。
 「2世・3世の会」誕生は、何より被爆者のみなさんから大きな喜びをもって迎えられたことがとても印象的だ。同時に、1世とも言うべき被爆者と2世・3世との間には意外と小さくない距離の存在していることも明らかになっている。だからこそ、あえて「2世・3世の会」のような組織が求められてきた事情もそこにはあった。
 この「距離」を縮めていくことから実は「2世・3世の会」の活動は始まる。被爆者は自らの体験と実相をしっかりと子や孫へ(その世代に)語っていかなければならない。2世・3世は祖父母や親から(その世代から)しっかりと聞き出し、受け止めていかなければならない。それは核兵器のもたらす被爆の実相を最もリアルに真実の姿で理解し、核兵器のない世界をめざしていくための根底を形成していくためである。
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟も、被爆者の生活と健康を守ることとあわせて、国に原爆放射線起因性とその責任を認めさせ、核兵器廃絶・世界平和の道への歩みを踏み出させるためのものであり、同じ根底に立つ。原爆症認定集団訴訟、ノーモア・ヒバクシャ訴訟は、原告本人陳述、医師陳述、判決等々裁判の全体が原爆被爆の実相と真実を最もよく学ぶことのできる場でもある。
「2世・3世の会」の活動開始によってノーモア・ヒバクシャ訴訟を支える輪が一層広がるようにしていきたい。そして訴訟支援のとりくみ強化が「2世・3世の会」の活動を励まし、「会」の輪も広がるようにしていきたい。

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
  月 日 曜        時 間   法廷・会場
 11月 7日(水) 13:30~17:00 大阪地裁202号 第2民事部  医師尋問
 12月 6日(木) 13:30~17:00 大阪地裁806号 第7民事部 原告本人2人
 1月 17日(木) 13:30~17:00 大阪地裁806号 第7民事部  原告本人2人
 2月 8日(金) 13:30~17:00 大阪地裁202号 第2民事部  終結弁論
 3月 7日(木) 11:00~00:00 大阪地裁806号 第7民事部  
 5月18日(木)     11:00~00:00 大阪地裁806号 第7民事部  

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2012.11.06 Tue l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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