本日、第7民事部に係属している取消5次+8次訴訟の口頭弁論期日が行われました。
下記は、先日、国の控訴断念により確定した3月9日判決に関する弁護団の意見陳述です。
東京でも、本日、19名の追加提訴。

1 はじめに 
 今般提出した甲A80号証及び81号証に関して意見を申し述べます。
 去る3月9日、大阪地方裁判所第2民事部(山田明裁判長)は、原告Mさん、中村さんの2名につき、原爆症認定申請却下処分を取り消し、原告Mさんについては認定の義務づけも含む勝訴判決を言い渡しました。

2 原告らの被爆状況・申請疾病
 原告らの申請疾病は、いずれも「新しい審査の方針」において積極認定の対象疾病とされている心筋梗塞であり、かつ、それぞれ積極認定の範囲とされる「被爆地点が爆心地より約3.5キロメートル以内である者」、「原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内に入市した者」でした。具体的に言えば、原告Mさんは、広島の爆心地から約2.5km、原告中村さんは、判決での認定によれば、広島に原爆が投下された日の翌日8月7日の入市でした。
 しかし国が、心筋梗塞につきごく限られた近距離被曝者を除き、すべて申請を却下するという運用を行ってきた結果、原告らの認定申請も却下されてしまいました。
 現実の認定行政では、直爆でも爆心地から1.5kmを超えれば却下、入市被爆者の申請は一切認めないという「消極認定」そのものになっています。このため、2008年4月から2011年3月までの間に心筋梗塞で認定を受けたのは全国でわずか122人、却下は971人にのぼっています。
 今回の判決は、心筋梗塞を積極認定の対象にしながら「放射線起因性が認められる」という不当な条件をつけ、ごく限られた近距離被爆者しか認定しない行政がなお誤っていることを断罪したものといえます。

3 心筋梗塞の放射線起因性
 判決は、放影研等の研究に基づく各種知見を総合すれば、心筋梗塞と放射線被爆との間には有意な関連を認めることができるとした上で、そこに一定のしきい値は存在しないと考えるのが合理的であると判示しました。その上で、爆心地から2.5kmで被曝した原告Mさんについては健康に影響を及ぼす程度の放射線被曝を受けていること、原爆投下翌日に入市した原告中村さんについても初期放射線には被曝していないものの、内部被爆の可能性があること、両名とも、放射線被曝との関連性が疑われる疾患に次々かかっていること、若年時に被曝していること、新審査の方針の積極認定の対象であること等を総合的に考慮して、心筋梗塞の放射線起因性を認めました。
 その前提として、「審査の方針(当時)により算定される被曝線量は、あくまでも一応の目安とするにとどめるのが相当」であり、「当該被爆者の被爆状況、被爆後の行動、活動内容、被爆後に生じた症状等に鑑み、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要があるというべきである」としています。
 これは、これまでの集団訴訟判決の到達点ともいえる判決であり、かつ、国が自ら策定した「新しい審査の方針」に従えば当然の結論であり、控訴する余地はもはやないというべきものでした。

4 他原因論への批判
 また、原告らは、いずれも喫煙歴のある被爆者でした。
 判決は、喫煙と心筋梗塞の関係について、原告らの「喫煙習慣が、急性心筋梗塞の発症に寄与した可能性は高いと言わざるを得ない」とした上で、喫煙により心疾患の放射線リスクの評価にほとんど影響しなかったことを報告する文献の存在を指摘して、「喫煙習慣があることから直ちに動脈硬化やこれを原因とする心筋梗塞と放射線被曝との間の関連性が直ちに否定される訳ではない」とし、原告中村さんについていえば、狭心症を発症してから喫煙本数を減らし、後に禁煙したこと、禁煙1年後からは心筋梗塞の発生率は低下し、禁煙後2年以降で非喫煙者と変わらなくなるという指摘もあることを考慮すると、「喫煙習慣の危険因子を過大視することは相当でないというべきである」としました。
 そして、「原告の喫煙習慣等の危険因子が急性心筋梗塞の発症に影響していることは否定できないとしても、それをもって、原爆放射線の影響まで否定されるものではなく、むしろ、原告の原爆放射線被曝と喫煙習慣等の危険因子とが相まって、急性心筋梗塞の発症に寄与したものと考えるのが自然かつ合理的である」と明確に判示しているのです。

5 福島第一原発事故にも言及
 さらに、本件判決では、放射性降下物は必ずしも一様に存在していたわけではなく、降下形態やその後の集積により局地的に強い放射線を出す場合があり得ることに関して、「今日の福島第一原子力発電所の事故においても、いわゆるホットスポットの存在が広く報道されている」と指摘していることからしても、福島第一原発事故によって明らかになった事実がこの判決を導く上で少なからず影響していると思われます。
 国の主張は、集団訴訟の到達点からも、福島第一原発の事故からも、すでに破綻していることは明らかです。

6 8・6合意に示された早期被爆者の救済の理念
 2009年8月6日、国と日本被団協との間で調印された「原爆症集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」においては、「一審判決を尊重し、一審で勝訴した原告については控訴せず当該判決を確定させる。」こととされ、国はこの確認書に基づき、従前の集団訴訟についてはすべて控訴せず一審判決を確定させてきました。今回の原告らは確認書の対象外ですが、確認書締結に際して、内閣官房長官は、「19度にわたって、国の原爆症認定行政について厳しい司法判断が示されたことについて、国としてこれを厳粛に受け止め、この間、裁判が長期化し、被爆者の高齢化、病気の深刻化などによる被爆者の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみや、集団訴訟に込められた原告の皆さんの心情に思いを致し、これを陳謝します。」と謝罪の言葉を述べていました。
 原告Mさん、中村さんともに、すでに80歳を超えています。
原告のMさんは、被爆の事実を隠し続けてきましたが、自らが苦しんできた疾病が原爆によるものと確信し、勇気をふりしぼって訴訟を闘ってきました。当初提起した認定義務付け訴訟につき2010年4月には判決が言い渡される予定でしたが、その直前の3月末に厚労省が却下処分を行った結果、弁論が再開され今回の判決言い渡しまでさらに2年もの年月を要しました。
原告中村さんは、却下処分後、訴訟となり解決が長引く間に脳梗塞を発症し、重い後遺障害を残しました。勝訴判決を受け、言語障害が残る中で言葉をふりしぼり、「本当に長かったです。60何年を経てようやく終戦がきました。」と涙ながらに述べました。
原告らは、国が今回の判決に控訴することなく、判決を確定させることを強く求めました。

7 控訴断念による確定
 その結果、国は、3月23日の控訴期限内に控訴を提起せず、上記判決は、いずれも確定し、原告らの原爆症認定申請が認められる結果となりました。
 厚生労働省は、今回の控訴断念について正式なコメントを発表していませんが、先日、参議院予算委員会において、小宮山厚生労働大臣は、本判決について、「国の主張が認められず、大変厳しい判決だった」、「現在、判決の内容を詳細に検討して、関係省庁と詰めの調整をしているところ。控訴期限が3月23日なので最終的な結論を出していきたい」と答弁しています。
 本件判決も、8・6合意の延長線上にあることは明らかであり、当然控訴が断念されるべきですが、厚労大臣の答弁からすれば、国は、判決内容を詳細に検討して、その内容を受け入れたということに他なりません。
 したがって、国は、本件判決に限らず、現在の認定行政の運用の仕方、認定基準の見直しを、直ちに行うです。
 原告Mさん、中村さんはいずれも、「本当に裁判を続けて良かった。長かった けど,良い結果になって本当にありがとうございました。」と喜びの言葉を弁護団 に伝えています。
 本件事件の原告らも、長らく、認定されることを待ち望んでおりますので、以上の趣旨に沿って、本件訴訟を進行して頂きたく、意見を申し上げます。
以上


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2012.03.27 Tue l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (1) l top

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2012.05.02 Wed l まとめwoネタ速neo