第1次近畿原爆症認定訴訟で思ったこと
 弁護団の若手が原爆症裁判についての思いを書いているので、私も書きます。
 この裁判は、原爆症の申請をした被爆者に対して、厚生労働大臣(以前は厚生大臣)が申請を却下したため、原爆症と認めるように求める裁判です。全国の地裁で提訴されています。近畿では2003年に始まりましたが、裁判を行っている間でも厚生労働大臣は申請却下をしてきましたので、追加提訴がなされ、何人かを裁判所がまとめて1次、2次、3次と訴訟が続くことになりました。
 近畿の一次訴訟は、全国のトップを切って結審し、判決も集団訴訟としては一番最初でしたが、その一次訴訟の結審(2005年12月14日)について、少し書きます。
 この事件のような社会的注目を浴びる訴訟の結審では、十分な時間をとって、これまでの主張のまとめと、原告らによる最後の訴えをすることがあります。一次訴訟の結審でも当然これを行いました。結審当時、原告8名は全員ご存命でしたが、入院されている方等裁判所に行けない原告は何人かおられました。裁判所に出席できた原告の方数人が、裁判所に対する最後の訴えをなさったのですが、皆さん「体調が優れず、欠席した人の分も」と、力のこもった陳述をなさっていました。
とても感動的な内容でした。たまたま広島・長崎に居ただけの、何ら罪もない人達が、原爆によって、家族を失い、家を失い、友だちを失い、そして自分自身の健康を失いました。原告達は被爆後、さまざまな病気に悩まされ、他の被爆者が亡くなると次は自分の番ではないかと恐れて暮らす生活を余儀なくされ、また被爆者に対する偏見・差別的待遇にも耐えて60余年を生きてこらました。本当はあまり人に話したくない内容だったが、原爆症だと認めない厚生労働省の対応に怒り、黙っていられないとの思いで陳述したとおっしゃっていた原告もおられました。
 陳述の最後には皆さん、「裁判所におかれては、適正なご判断をお願いします」「私たちを原爆症と認めてください」「厚生労働省の誤りを判決で正してください」とおっしゃって、3名の裁判官に頭を下げておられました。原告の皆さんは70歳台から80歳代の方々です。裁判官の年齢は正確にはわかりませんが、20歳台から40歳台ではないでしょうか。原告らにとっては自分の子どもや孫のような年齢でしょう。
 私は2005年当時、弁護士になって既に10年以上(アラテン?)を過ぎており、結審で原告が裁判官に対して頭を下げる光景は何度も見てきて、そのこと自体については特に違和感はなかったのです。ところが、その後この法廷を傍聴しておられた歌手の横井久美子さんのHPを見て、とても考えさせられられました。

以下 横井久美子さんのブログ(http://www.asahi-net.or.jp/~FG4K-YKI/)内、Kumiko Report2005年12月15日より一部引用
私は、傍聴しながら泣いていた。「ヒバクシャ」「ヒロシマ」「ナガサキ」は、世界語になっている。「ヒロシマ」「ナガサキ」には、原爆の残酷さを知るために、毎年、世界中の人が訪れる。しかし、2005年12月14日、今、この時、大阪の街の真ん中で、呻くような叫びを上げて、裁判長に頭を下げている「ヒバクシャ」がいる。この現実を、世界中の、日本中の何人の人が知っているのか。
 何の罪もない、何も責任のない原告達。彼らに対する援護は法によって定められており、国は法に基づいて被爆者に対する援護を行う義務があります。原爆症になれば、原爆症として認められる権利が原告らにはあるはずです。そうであるのになぜ罪なき人々が、裁判所まで出てきて、言いたくない辛い昔の話をして、子どもか孫かと見えるような裁判官に対して、頭を垂れなければならないのでしょうか。
 裁判は勝たねばなりません。勝つためには裁判官に原告の状況を理解して貰わなければなりません。裁判官にどうかよい判決をと、頭を下げることもありうることです。私は法廷での陳述で頭を下げるのがおかしいと言いたいのではありません。
 ご老人たちがそのようなことをしなければならない状態に追いやられているのを目の当たりにして、横井久美子さんは「傍聴しながら泣いていた」のでしょう。原告らが頭を垂れている姿を見ながら、私は横井さんと同じような思いで、厚労省に対する怒りを再認識していただろうかと、ふと考え込んでしまったのでした。
 弁護士として事件を冷静に見る目と熱い思いの両方を持ちたいと思いますね。
    とよしま
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2009.04.06 Mon l 徒然なる思い l コメント (0) トラックバック (0) l top

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