原爆症認定訴訟:控訴審 裁判官交代を 証人申請不採用で原告側が申し立て /岡山(毎日)

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◆裁判官の交代(忌避)を申し立て
 1月26日、広島高裁岡山支部で開かれた原爆症認定・岡山訴訟(川中事件)において、原告弁護団は、証人申請を認めなかった裁判官(裁判長片野悟好,裁判官檜皮高弘,裁判官濱谷由紀)の交代を求める「忌避」を申し立てました。

◆原爆症認定岡山訴訟とは

 原告の川中優子さん(67)は、0歳のときに爆心地から4キロの広島市仁保町本浦で被爆して子宮体がんに罹患し、認定申請したところ却下されたため処分の取り消しを求めて集団訴訟に加わりました。
 1審の岡山地裁(近下秀明裁判長、篠原礼裁判官、植月良典裁判官)は10年6月、内部被ばくの影響を認めず、請求を棄却しました。

◆第1回証人申請~内部被爆の立証 

 私たちは、控訴審において、水や食べ物を通した内部被ばくを立証するために、昨年6月の第2回口頭弁論において沢田昭二名古屋大学名誉教授と郷地秀夫医師を証人申請しましたが、裁判所は、第3回口頭弁論(9月13日)において、国ですら採用には強く反対しなかったにもかかわらず、「今まで提出された証拠で十分であり、直接聞くまでのことはない」と申請を却下しました。

◆第2回申請

 そこで、今回、再び、沢田先生と矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授を証人申請しました。弁護団は、「福島第1原発事故以降、内部被ばくについて新たな知見が明らかになってきているし、地裁判決時とは状況が異なっているので、証人を取り調べるのは控訴審の職責だ」と主張して、採用を強く迫りました。
 これに対して、片野裁判長は、「(内容が専門的で)聞いても分からない」(山陽新聞)と言って申請を却下したのです(はあ~っ?!「聞いても理解できるのかという問題がある」と言ったという説もあるのですが-調書未確認-どっちでも同じでしょ)。
「聞いて分からんのだったら、読んでもわからんやろ。それなら自らの能力不足を自白したのも同じだから回避したらどうや」って、つっこみを入れたくなるところですが、これでは到底、公平な裁判は期待できないために、弁護団は即時に忌避を申し立てたものです。

◆特異な岡山地裁判決

 そもそも、集団訴訟では、全国17地裁において訴訟が係属しましたが、06年5月12日の大阪地裁での9名全員勝訴判決を皮切りに、11年12月21日の大阪地裁判決をもって区切りがつきました。原告となった被爆者306名中、実に91パーセント、279名が、判決ないし新基準により却下処分を取り消され、原爆症認定を受けました。
 これまで全国の地裁、高裁で30の判決が言い渡されたのですが、その中で岡山地裁判決は、極めて特異な地位を占めます。
 地裁判決は、川中さんの被曝線量を、国の言うまま、ホントそのまんま、DS86による直爆放射線量を基本とし、残留放射線被曝と内部被曝を軽視していること、申請疾病と放射線被曝との相当因果関係を厚労省の「新しい審査の方針」に基づいて判断しています。判決は、裁判所の理由部分がたった7ページ
具体的検討部分は、なんと4ページ。あとは、「原告の主張」「被告の主張」と別紙を付けているだけ)という、鼻をかんで捨ててやりたいような判決でした。

◆集団訴訟における裁判所の態度

 これに対して、他の29の裁判所はどのように判断したかといえば、
①DS86による放射線量は、とりわけ爆心地から1.5キロ以遠では誤差が認められる、
②残留放射線による被曝、放射性物質を体内に取り込んだことによる内部被曝の影響を考慮し、被曝線量については、直爆線量だけではなく、総合的に判断する必要があること、
③疫学データはその結果が出るまでに相当の年月を要するので、疫学的エヴィデンスがでないからといって、直ちにその放射線起因性を否定するべきではない、としたのです。
 現行の「新しい審査の方針」採用後の08年4月以降言い渡された13の判決では、新基準によっても認定されなかった被爆者について却下処分を、なお誤っているとして、取消判決を言い渡しています。
 中でも昨年12月21日の大阪地裁判決では、「被爆者の被曝線量を評価するにあたっては、・・・様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要があるというべきである。」と結論づけています。
 これらの裁判所は、いずれも、松谷訴訟最高裁判決でも確認された因果関係の立証について「高度の蓋然性」説に立ちつつ、極めて詳細かつ丁寧な事実認定をして、実質的には、挙証責任を転換した結論になっています。川中さんは、0歳のときに被爆し、教師をして爆心地付近に救援活動に行ったお父さん、看護師の経験があり、被爆者の救護所となった仁保国民学校での救援活動にあたったお母さんは、すでに亡くなって、当時の被爆状況を証言する証人がおらず、仁保地区がどれだけ放射線の影響を受けたか、放射性降下物が降り注いだ可能性がないのか、乳幼児のときに受けた内部被爆は人体影響はどの程度の影響を及ぼすのか、裁判官自身が丁寧に聞いていく必要があります。集団訴訟の29の判決を担当した裁判官は何れもそのようにして判断を下したのです。

◆ほんとに酷い岡山地裁判決

 これらに対して、岡山地裁判決は、「新しい審査の方針」を金科玉条の如く扱い、その要件に当てはまらないことを主たる理由として放射線起因性を否定しました。まったく酷い、「お前は何をしていたんだ」、「司法修習生でも書けるぞ(御免な、修習生諸君)」、というような、判決でした。その意味で、岡山地裁判決は他の29の判決の水準に達していないばかりではなく、「新しい審査の方針」を裁判所の判断基準としたこと自体に問題があり、その結果大きな事実誤認を犯しているのです。

◆控訴審裁判所の職責

 このような判決の判断の当否を審査する控訴審では、地裁判決が依拠した「新しい審査の方針」自体の当否、川中さんが受けた放射線量は如何なるものと推定すべきか、疫学データが十分でないとしても本件疾病の放射線起因性は否定されるべきか、近時、放影研によっても黒い雨の降雨地域が見直されたことにより、川中さんが居住した仁保地区にも降雨があったことが明らかになったことなどの重要な事実と論点について、地裁とは違う新たな証拠により経験則と事実を見直す必要があったのです。
 そもそも、国も、証言時間の短縮は求めたものの,証人の採用自体には強く反対しない旨述べていました。また、国は、控訴審で提出した沢田先生の意見書に対する反論書の作成のために、何と6ヶ月もの時間をくれと言ったのです(国が「6ヶ月くれ」と言ったとき、「は~?なんじゃそれ」と自分の耳を疑いましたが。)。国ですらそれくらいの検討を要すると言っているものを、裁判所が証人尋問の必要がないというのは、もはや「調べたくない」(ひょとしたら、理系が大嫌いで拒否したのかも)ということ以外、理由が思い当たらないものです。
 その意味で、自らの能力不足を自認し、原審で取り調べた証拠以外は取り調べの必要を認めない、という高裁裁判官は忌避に値するというべきなのです。

◆取り消しを免れない手抜き判決

 原告の川中さんは、集団訴訟の原告ですから、「8・6合意」によって、敗訴しても勝訴原告に準じた一時金を受けることもできました。しかし、被爆後、ずっと体が弱く、若い頃から様々な病気にかかって辛い思いをしてきた、その原因が原爆放射線による被害であることを認めてほしいという想いから、あえて基金による救済を拒否して、全国で唯1人、控訴審で争っている原告です。
 近畿弁護団は、たった7ページのゴミのような判決で自分の人生を否定された川中さんの無念を晴らしたい、こんな判決を確定させる訳にはいかないと、岡山弁護団に合流して、裁判をたたかっています。

◆内部被爆の危険性を明らかに

 福島第一原発事故によって、被告の内部被爆は人体に影響はないと言い切ってきた被告の主張が、全くの誤りであったことが明らかになっています。放射性降下物の被害や残留放射線による被害の深刻性、内部被曝による被害の危険性、現実の放射線の広がり、特に、ホットスポットの存在、20kmの警戒区域の外側で、放射性物質の累積量の高い地域について、計画的避難区域に指定し、同心円状の線引きを見直すなど、本件における被告の主張の破綻と崩壊を事実に基づき示しているのです。
 弁護団では、忌避の結果にかかわらず、引き続いて、裁判所に被爆の実相に向き合うように訴えていきたいと思います。以上




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2012.01.28 Sat l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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