尾藤幹事長、渾身の意見陳述

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昨日の最終弁論における尾藤廣喜幹事長の渾身の意見陳述です。
迫力満点です。

意見陳述書

2011年(平成23年)12月14日

大阪地方裁判所第2民事部 御中

                                   原告ら訴訟代理人
                                     弁護士  尾  藤  廣  喜

1 福島第一原発事故の示すもの
 (1) 2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災による福島第一原発事故は、改めて放射線被害の広汎性、深刻性、半永久的な継続性を明らかにしました。
被告国は、本件裁判において、放射性降下物の被害、残留放射線による被害、内部被曝による被害をいずれも過小評価し、「原告らは殆ど被曝していない」などという全く事実を歪曲した許せない主張を繰り返してきました。そして、被曝線量について、実態を無視し、同心円状に広がるなどという机上の空論を繰り返し主張してきました。
 つまり、既にこれまでの原爆症認定集団訴訟の判決において、その主張自体が破綻し、司法の場においては否定され決着済みの主張を相変わらず繰り返してきたのです。
 (2) しかし、今回の福島第一原発事故によって、被告のこれらの主張が、全くの誤りであったことが明らかになっています。 即ち、放射性降下物の被害や残留放射線による被害の深刻性、内部被曝による被害の危険性、現実の放射線の広がり、特に、ホットスポットの存在、20kmの警戒区域の外側で、放射性物質の累積量の高い地域について、計画的避難区域に指定し、同心円状の線引きを見直すなど、本件における被告の主張の破綻と崩壊を事実に基づき示しているのです。
 被告は、「原告らは殆ど被曝していない」などという主張を、直ちに撤回すべきです。

2 そして、被告は、裁判でのこのような集団訴訟の各判決を無視した、まさに「居直り」という外ない主張をなす一方で、現在、厚生労働大臣は、「新しい審査の方針」が策定された当時の認定制度の運用からもさらに後退し、 しかも、原爆症認定集団訴訟で重ねられたの判決の到達点から大きく後退した認定制度の運用を行い、最近では、認定申請の殆どが却下されるという状況を招いています。本件訴訟は、被告がこのような違法な認定制度の運用を行っているところから、このような違法な処分の取消しを求め、あわせて、被爆者の援護に関する法律(以下「法」といいます。)が本来予定している認定制度の運用のあり方を明らかにし、原爆症認定集団訴訟の到達点に基づく、認定制度の根本的な改革を求めているものです。
 そこで、まず、被告が採用した「新しい審査の方針」が何故採用されたのか、また、その意義について、今一度考えてみたいと思います。

3 新しい審査の方針は何故採用されたのか
(1) 相次ぐ厚生労働省の敗訴判決の持つ意味
 原爆症の認定について、従来、厚生労働大臣(旧厚生大臣)は、被爆の実態を無視して、DS86としきい値理論を機械的に適用してきました。そして、このような原爆症認定行政の誤りを指摘した2000年(平成12年)7月18日の長崎原爆松谷訴訟最高裁判決及び同年11月7日の京都原爆小西訴訟大阪高裁判決によって、厚生労働大臣は、原爆被害を過小評価する認定制度の運用を被爆実態に合わせて根本的に転換することを求められたのです。
 にもかかわらず、厚生労働大臣は、その後、かえって原爆症の認定基準を厳しくする「原因確率」論に立った制度運用を行ったのです。
 そして、その結果、被爆者の方々は、被爆の実態に基づく認定基準への根本的転換を求めるために2003年(平成15年)4月17日の札幌、名古屋、長崎の各地裁、同年5月17日の大阪各地裁にそれぞれ訴訟を提起し、「原爆症認定集団訴訟」が開始されたのです(その後、17地裁に拡大)。
 一方、「原爆症認定集団訴訟」に先立ち争われていた東京原爆東訴訟で、被告(国・厚生労働大臣)は、肝機能障害の放射線起因性自体を争っていましたが、2004年(平成16年)3月31日の東京地裁判決、さらに2005年(平成17年)3月29日の東京高裁判決で、肝機能障害の放射線起因性自体が明白に認められるに至ったのです (控訴審で確定)。
 また、「原爆症認定集団訴訟」は、 2006年(平成18年)5月12日の大阪地方裁判所における原告9人全員の勝訴判決をはじめとして、同年8月4日の広島地裁判決、2007年(平成19年)1月31日の名古屋地裁判決、同年3月20日の仙台地裁判決、同年22日の東京地裁判決、同年7月30日の熊本地裁判決と相次いで被告が敗訴し、厚生労働大臣が採ってきた「原因確率」論としきい値に基づく原爆症認定基準の根本的誤りが明確となり、これらの司法の判断に基づいて、認定基準を根本的に見直すことが必至の状況となりました。
 しかも、これらの判決によって、被告がその放射線起因性を否定してきた肝機能障害、心筋梗塞、白内障、甲状腺機能低下症についても、被告(厚生労働大臣) の認定却下処分が取り消されるという判決が積み重ねられることとなったのです。
 (2) 安倍総理大臣(当時)の「原爆症認定基準の見直し」指示
このような相次ぐ被告の敗訴判決を受けて、2007年(平成19年)8月6日、安倍総理大臣(当時)は、広島において、被爆者との話合いの結果、やっと「原爆症認定基準の見直し」を厚生労働大臣に指示するに至ったのです。
 ここで求められた「原爆症認定基準の見直し」の内容とは、どのようなものであったでしょうか。
 当然のことながら、それまでの判決の到達点を踏まえたもの、即ち、がん、白血病のみならず、厚生労働大臣がその放射線起因性を否定してきたにもかかわらず認定却下処分が取り消された肝機能障害、心筋梗塞、白内障、甲状腺機能低下症についても、広く認定の対象とするものでなければならなかったことは当然のところでありました。
 そして、その結果、採用されたのが、「新しい審査の方針」だったのです。

4 「新しい審査の方針」の内容と問題点
 (1)「新しい審査の方針」の内容
 ところが、2008年(平成20年)4月から採られた「新しい審査の方針」の内容は、このような司法の到達点からは、全く乖離したものでありました。即ち、「新しい審査の方針」は、
 1 積極的に認定する範囲
  ①被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者
  ②原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内に入市した者
  ③原爆投下により約100時間経過後から、原爆投下より約2週間以内の期間   に、爆心地から約2k m以内の拠点に1週間程度以上滞在した者
 2 放射線起因性が推認される以下の疾病については、積極的に認定する
  ①悪性新生物 (固形がんなど)
  ②白血病
  ③副甲状腺機能亢進症
  ④放射線白内障 (加齢性白内障を除く)
  ⑤放射線起因性が認められる心筋梗塞
 3 この1、2に該当しなぃものについては、総合して認定を行う
としています。
 (2)「新しい審査の方針」の問題点
 この「新しい審査の方針」については、以上述べましたように、①白内障と心筋梗塞については、積極認定の対象疾病にはあげられながらも、たとえ、1の「積極的に認定する範囲」に該当する者についても、そのまま認定するのではなく、その外に、さらに「放射線起因性」が必要であるという、二重要件あるいは循環論法を用いて、あえて認定要件を意図的に「原爆症認定集団訴訟」判決の到達点よりも厳しくしていること。②積極認定の対象疾病名を、「原爆症認定集団訴訟」判決の認定疾病名より格段に狭くし、肝機能障害、甲状腺機能低下症についは、積極認定の対象としなかったこと。③積極認定の対象とならない者についての総合認定の内容が不明確であり、「原爆症認定集団訴訟」の判決内容と大きく乖離する危険性があることなど大きな問題点を含むものでした。
 このため、認定基準としては全く不完全なもので、原爆被害の実態と大きくかけ離れたものであり、当初から破綻が予想された内容のものであったことは、「新しい認定基準」の制定当初から、私たちが、この法廷で申し上げたところであります。

5 その後の「原爆症認定集団訴訟」の判決内容
 この「新しい審査の方針」に基づいて、厚生労働大臣は、まずは、訴訟継続中の原告について認定の見直しを行い、その結果、一部の原告については認定がなされました。しかし、もともと「新しい審査の方針」自体に大きな問題点があるところから、その後続いた「原爆症認定集団訴訟」の判決では、当然のことながら厚生労働大臣が認定を却下したままとなっている原告についても、処分の取り消しが続くことになりました。
 それが、2008年(平成20年)5月28日の仙台高裁判決、同年5月30日の大阪高裁判決、同年6月23日の長崎地裁判決、同年7月18日の大阪地裁(第2次)判決、同年9月22日の札幌地裁判決、同年10 月14日の千葉地裁判決、2009年(平成21年)1月23日の鹿児島地裁決、同年3月12日の千葉訴訟・東京高裁判決、同年3月18日の広島地裁(第2次)判決、同年3月27日の高知地裁判決、同年5月15日の大阪高裁(第2次)判決、同年5月28日の東京訴訟・東京高裁判決でありました。
 被告がその正当性を主張してきた「新しい審査の基準」によって認定されなかった被爆者について、認定却下処分の取り消しが相次いだのです。
 このように、「新しい審査の基準」は、当初からその根本的改革がせまられていたのです。

6 「新しい審査の基準」の手直し
 その結果、厚生労働大臣は、2009年(平成21年)6月22日に至って、やむなく「新しい審査の方針」を一部手直しました。
 しかしながら、その内容は、これらの「原爆症認定集団訴訟」判決の到達点を反映したものではなく、①慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能低下症を積極認定の対象疾病として加える、②しかし、その際、「放射線起因性が認められる」という要件を別に加えるというもので、かねてから問題とされていた「白内障、心筋梗塞」について「放射線起因性が認められる」との二重要件あるいは循環論法を用いた認定要件の厳格化という手法を、せっかく積極認定の対象として認められた慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能低下症についても残すものでありました。即ち、判決の到達点を踏まえたものではなく、ましてや、被爆の実態を踏まえたものでもなく、単なる 「手直し」にすぎず、根本的問題は、そのままとなったのです。

7 その後も続く、被告敗訴判決 
 このように、2009年(平成21年)6月22日の「新しい審査の方針」の一部手直しによっても、厚生労働大臣が採っている認定基準の根本的問題点が解消されていない以上、「原爆症認定集団訴訟」における被告敗訴の流れが変わることはあり得ませんでした。
 その後も、2009年(平成21年)8月3日の熊本地裁(第2次)判決、同年11月30日の熊本訴訟・福岡高裁判決、同日の横浜地裁判決、2010年(平成22年)3月11日の名古屋高裁判決、同年3月29日の高松地裁判決、同年3月30日の東京地裁(第2次)判決、同年5月25日の千葉地裁(第2次判決)、同年7月20日の長崎地裁(第2次)判決、同年12月22日の札幌地裁判決(第2次)と、「新しい審査の方針」によっても認定されなかった被爆者の認定申請却下処分の取り消しが相次いで認められてきたのです。
 つまり、「新しい審査の方針」自体と司法判断の間には、大きな乖離があったのです。

8 いわゆる「8・6確認」と原爆症認定の現状
 もともと、2009年(平成21年)8月6日の「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」(8・6確認)が締結されて後は、この「新しい審査の方針」については、根本的再々改定と、これに基づく司法と行政の乖離の解消こそが被告に求められたのです。ところが、実態は、まさにその反対の惨憺たる状況となっています。
 即ち、3・5km、入市100時間を超える悪性腫瘍は、たとえそれがわずかであってもほとんど却下されています。
 また、白内障は、入市被爆者の放射線起因性を一切認めず、1.4kmを超える近距離被爆者がすべて却下されています。奇跡的に生き残った被爆者しか認定されていないというのが現状です。
 さらに、本件で問題となっております心筋梗塞について見れば、入市被爆者については放射線起因性を一切認めず、1.5kmを超える近距離被爆者はすべて却下されているのが現状です。
 また、甲状腺機能低下症については、入市被爆者の放射線起因性を一切認めず、2.0kmを超える近距離被爆者はすべて却下されているのが現状です。
 そして、肝機能障害については、入市被爆者の放射線起因性を一切認めず、1.3kmを超える近距離被爆者がすべて却下されているのが現状です。
 また、悪性腫瘍、白血病以外の疾病の認定率は、甲状腺機能低下症が1.7%、心筋梗塞が6%、慢性肝炎・肝硬変が4%、白内障に至っては2%という極めて低い比率でしか認められていません。

9 2011年(平成23年)11月18日、厚生労働大臣協議の内容
 そして、「8・6確認」のあと、このように、一方的に「切り捨て」を行ってきた厚生労働省に対して、2010年(平成22年)1月14日以来、1年10ケ月ぶりに2011年(平成23年)11月18日に持たれた厚生労働大臣協議の内容は、実に惨憺たるものでした。
 日本被団協を中心に構成された統一交渉団は、厚生労働大臣に対して、先に述べたような審査の実態に照らし、「隠された審査の内部基準があるのではないか」、 「総合判断は実質上行わないという方針を持っているのではないか」と厳しく追りましたが、厚生労働大臣は、被爆者が新しい審査の方針に期待を寄せたのは承知しているが、「司法の判断を一般化することはできない」などという答弁を行っております。
 つまり、厚生労働大臣は、司法の判断を実質的に無視して、認定制度を運用しているものです。

10 司法の役割とは何か
 以上のとおり、現在の原爆症認定の実態は、集団訴訟の到達点、司法判断の到達点をも無視し、また、自ら作った「新しい審査の方針」すらにも反し、公然と大量の被爆者切り捨て政策をごり押ししているものです。
 こうした行政の姿勢を根本的に変えるためには、司法が毅然とした態度で、被爆の実態を踏まえた、また、「原爆症認定集団訴訟」の到達点に基づく判断をなし、違法な却下処分を取り消すことこそが、今改めて求められているのです。
 そして、違法であるとして再三再四その判断が取り消されたにもかかわらず、さらに「8・6確認」で認定制度の根本的転換を約束したにもかかわらずこれを無視し、未だに大量の被爆者切り捨て政策をごり押している行政の根本的転換を図るためには、裁判所が、厚生労働大臣の違法な判断についてはっきりと損害賠償を認め、 このような故意による司法の無視の状態の根絶を目指すことこそが必要であることを、改めて申し上げて、私の意見陳述とします。

                                   以上





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