本日(12月14日)午前10時30分より、大阪地方裁判所第2民事部(山田明裁判長)で、取消6次訴訟の第4回口頭弁論が開かれました。
原爆集会_convert_20111214143633


以下は、前田麻衣弁護士の意見陳述です。

意見陳述

2011年(平成23年)12月14日


大阪地方裁判所第2民事部 御中

原告ら訴訟代理人

弁護士 前  田  麻  衣


第1 はじめに
 本裁判は、66年前に広島と長崎に投下された原子爆弾により被曝し、被爆を原因として多くの病気に 苦しんでいる原告らが、被告である国に対して、原爆症認定申請却下取消処分及び国家賠償請求を求める裁判です。
 原爆は、家も人も焼き尽くし、広島で約14万人、長崎で約7万人の命を一瞬で奪いました。のみならず、原爆は、大量の放射線を放出し、生き残った人々にも生涯にわたる健康被害を与えました。

  被爆者の問題は、決して、過去の問題ではありません。被爆者の方々は、66年前に健康な身体を原爆によって奪われ、現在も病気の苦しみや不当な差別と闘いながら必死で生き続けているのです。
 裁判所におかれましては、原告の声に真摯に耳を傾けて、原告らが原爆の被害にどれほど苦しんでいるのか、ご理解いただきたいと思います。

第2 原告らの苦しみ
 (1)私が本裁判で担当している原告2名は、ともに、甲状腺機能低下症を申請疾病として、原爆症認定申請をしました。
 (2)1名(原告F氏)は、6歳のときに、長崎で爆心地から2.2kmの伯母宅で被爆し、翌日には爆心地から1.2キロメートルまで入市しました。そして、数日後から、吐き気や下痢、発熱などの急性症状に苦しみました。成人してからも、めまいや突然意識を失うなどの原因不明の病に悩まされ続け、申請疾病以外にも変形脊椎症や脳脊髄炎症などの病気にも苦しんできました。
この方は、現在、体調が優れず、毎回の出廷は困難ですが、先日、電話で打ち合わせをするなかで、現在の福島第一原発事故での国の「警戒区域」や「計画的避難区域」の設定、食品や水道水の出荷制限・摂取制限などに触れ、「自分たちは、何も知らずに爆心地を歩き回った。生きていくために焦げた野菜も食べたし、水も飲んだ。誰も危険だなんて教えてくれなかった。どうして、これだけ放射線による健康被害が明らかになっているのに、自分たちは放射線の被害を受けていると認めてもらえないのか。」と訴えておられました。
この訴えは、福島第一原発事故の発生後でさえ、「内部被曝の問題は、人体の健康影響を考慮するに当たって無視しうる。」との主張を維持し続けている被告の主張が、破綻していることを指摘するものです。
 (3)もう1名の方(原告K氏)は、13歳のときに、長崎で爆心地から3.7kmの自宅で被爆し、8月12日には、瓊(けい)浦中学校(爆心地から約700m)や鎮西学院(爆心地から約500m)まで接近するなど、10時間以上、死体やがれきが山積みとなり、塵や埃の立ち込める市内を歩き回りました。そして、直爆後及び入市後にひどい下痢に苦しみました。成人してからも、申請疾病以外にも原田氏病、狭心症、攣(れん)縮性狭心症に苦しんできました。
 (4)両名は、現在、ひどいむくみやのどが詰まるような息苦しさに苦しんでおり、薬が手放せない状況です。
 両名とも、原爆の放射線の影響により、健康を害されたことは明らかです。
 しかしながら、被告は、両名を申請後長期間待たせ続け、紙切れ1枚の却下通知で切り捨てたのです。

第3 2011年11月18日の定期協議について
 1 次に、11月18日、小宮山洋子厚生労働大臣と日本被団協、原爆症認定集団訴訟全国原告団、同全国弁護団との間で開催された定期協議について述べます。
この協議は、2009年8月6日に、日本被団協と内閣総理大臣麻生太郎氏との間で締結された「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」第4項に基づき、「今後、訴訟の場で争う必要のないよう」にするために設けられた厚生労働大臣と被団協・原告団・弁護団(以下、3団体をまとめて「統一交渉団」といいます。)との定期協議です。今回の第2回定期協議は、2010年1月14日の第1回以来、1年10か月ぶりに開催されました。
2 統一交渉団の分析
統一交渉団は、認定基準の早期の再々改定に向けて、統一意見書を作成し、定期協議に臨みました。
また、統一交渉団は、2010年4月から2011年3月までの原爆症認定に関する分布状況についてデータを分析し、厚生労働省の処分の傾向を明らかにしました。その概要は以下のとおりです。
 (1)悪性腫瘍について
 まず、悪性腫瘍(白血病を含む)については、直爆3.5kmを超え、また入市日が4日を超えると、認定の割合が極端に落ちています。悪性腫瘍の場合ですら、直爆3.5kmを超える、あるいは入市日4日を超える申請者の場合には、機械的に却下していると考えられます。厚生労働省が認定している距離は、多くの被爆者が死亡している高線量被曝地域です。
 (2)白内障について
 白内障は、入市被爆者の放射線起因性を一切認めず、1.4kmを超える近距離被爆者がすべて却下されています。奇跡的に生き残った被爆者しか認定されていないというのが現状です。
 (3)心筋梗塞について
 心筋梗塞は、入市被爆者の放射線起因性を一切認めず、1.5kmを超える近距離被爆者はすべて却下されているのが現状です。
 (4)甲状腺機能低下症について
 甲状腺機能低下症は、入市被爆者の放射線起因性を一切認めず、2.0kmを超える近距離被爆者はすべて却下されているのが現状です。
 (5)悪性腫瘍、白血病以外の疾病について
 悪性腫瘍、白血病以外の疾病の認定率は、甲状腺機能低下症が17%、心筋梗塞が6%、慢性肝炎・肝硬変が4%、白内障に至っては2%という極めて低い比率でしか認められていません。
 (6)脳梗塞・狭心症など判決において起因性が認められた疾病について
 脳梗塞、狭心症など、集団訴訟において裁判所が放射線起因性を認めた疾病についても認定された例は皆無です。
 3 新しい審査の方針について
(1)原爆症認定に関する基準は、集団訴訟で勝訴判決が連続する中、2007年8月5日、広島において、当時の安部総理大臣が認定基準の見直しを指示したことにより、翌2008年3月17日に大幅に改められました。
 その基準は、①爆心地から3.5km以内の被爆者、②100時間以内に爆心から2km以内に入市した被爆者、③100時間経過後から、約2週間以内の期間内に爆心地から約2km以内の地点に1週間程度以上滞在した被爆者からの積極認定対象疾病の申請疾病については、格段に反対する理由のない限り積極的に認定すると定められています。
 また、積極認定の範囲を超えた場合であっても、被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を総合的に判断するとされています。
 (2)しかし、上記のとおり、実際には、入市は全部却下、3.5km以遠は認めないという機械的適用がなされているのが実態です。
 統一交渉団は、厚労大臣に対して、このような審査の実態に照らし、「隠された審査の内部基準があるのではないか」、「総合判断は実質上行わないという方針を持っているのではないか」と厳しく迫りました。
これに対し、厚生労働省の健康局長は、「新しい審査の方針は、広く救おうということで、放射能レベルについて放影研や日米の合同委員会の基準からするとかなり緩くしている。
心筋梗塞であれば、高脂血症であるとか、高血圧であるとか、いろんな要素があるわけで、今の被爆者援護法が、放射線起因性の判断と要医療性の判断を要件としているから、そういったところで総合的に判断しているわけで、機械的に却下している訳ではない。
白内障だと、放射能レベルはかなり医学的には低い数値、原因確率に比べてかなり低い。ただ、白内障であれば70歳台であれば90%、80歳台であれば100%が加齢性の白内障である。したがって、そういうところを総合的に判断している。がん以外では髄膜種で良性の場合でも認めている場合もある。」などと回答しました。
しかしながら、被爆時0歳であった被爆者でも、現在、66歳であり、ほとんどの被爆者は70歳を超えています。厚生労働省の基準によれば、年齢だけで判断しても、白内障は認定されないという結果になることは目に見えています。
また、心筋梗塞においても、被爆者は皆、高齢ゆえに年齢で制約を受け、喫煙歴があればそれだけで認定されにくくなります。加齢に伴い、高脂血症、高血圧も生じやすくなってしまいます。
これでは、これらの疾病を積極認定対象疾病とした意味がありません。
それにもかかわらず、厚生労働大臣は、被爆者が新しい審査の方針に期待を寄せたのは承知しているが、「司法の判断を一般化することはできない」と歯切れの悪い答弁に終始し、定期協議後の記者会見においても、厚生労働大臣は、「これまで厚生労働省として取り組んできた方針がありますので、その中でどのように整合的に、もうかなり年配の方が増えておいでですし、これから先対象が広がる話ではありませんので、可能な範囲で認定が出来るようにしていければいいなと思っています。」と回答しています。
 しかし、「これまで厚生労働省として取り組んできた方針」は、数々の集団訴訟の判決の中で誤りであることが明らかにされています。そのような方針との整合性を図る必要は一切ないことを厚生労働省は認識すべきです。

第4 おわりに
 1 11月18日の定期協議での厚生労働省の回答からも明らかなとおり、原爆症認定の実態は、集団訴訟の到達点、司法判断の到達点にもかかわらず、新たにこの基準すら無視し、大量の申請却下を生み出し、「8・6合意」の趣旨に逆行して、再び裁判で解決をせざるを得ないような状況に至っています。
 このような状況下で、新規の提訴は、大阪地方裁判所だけでなく、広島、長崎、熊本、名古屋と広がり、全国に広がろうとしています。
 2 現状の原爆症認定行政が、集団訴訟と認定基準見直しの流れに逆行するものであることは、小宮山厚生労働大臣も認識していると思います。定期協議において小宮山厚労大臣は、「皆さんがイライラしていることは重々承知しています。」と言わざるを得ませんでした。
 被告は、これまでの司法判断を無視し続け、形式的かつ不合理な基準によって認定申請を却下し続ける姿勢を即刻改めるべきです。
 裁判所におかれましては、原爆症認定をめぐる本件各訴訟が、これまでの集団訴訟で築いた到達点を崩す結果になるのかを厳しく問われているということを十分理解していただいて、審理していただきたいと思います。
以上

スポンサーサイト
2011.12.14 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://fujiwaradannchou.blog50.fc2.com/tb.php/240-45545c86
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)