4月16日、認定促進訴訟(義務付け訴訟)における濱本弁護士の意見陳述です。

1.原告の判決に対する思い
 本来ならば,本日,本法廷で,裁判所から原告に対し,原告が平成20年7月9日に行った原爆症認定申請を,厚労大臣が1年6ヶ月もの間放置したことの違法性について判決が言い渡されるはずでした。
 私たち代理人は,本裁判所が厚労大臣の認定申請放置は違法であると断罪すると信じ,本日の判決が,原爆症認定行政促進へ向けて大きな一歩を踏み出すきっかけになるものと,大きな期待を寄せていました。
 原告も,厚労省の審査体制の不備や怠慢を裁判所が厳しく追究し,意味もなく待たされたこの1年半の無念を晴らしてくれるものと信じていました。
2.認定申請に対する思い
原告は,陸軍経理学校の試験を受けるために連れて行かれた広島で,爆心地から2.5キロメートルの距離で直爆を受けました。原告は,痛みに苦しむ大勢の負傷者を目の当たりにし,火傷に苦しむ人々の間をかき分けるようにして避難しました。この光景は,今でも目に焼き付いていて,忘れようとしても忘れることはできない,まさに地獄だったと語っています。
原告自身も,被爆直後から急性症状に苦しみ,その後も長く全身倦怠感や肝機能障害と闘いながら仕事を続けてきました。平成9年,原告は申請疾病である心筋梗塞を発症し,手術を受けました。原告は,その後何度も狭窄をおこし,入院・手術を繰り返してきました。現在も経過観察と投薬治療が欠かせない状況です。
しかし,原告は,ずっと後になるまで被爆者健康手帳の申請をしませんでした。それは,お子さんたちの結婚に支障が出てはいけないと,被爆した事実をずっと隠してきたためです。原爆症認定申請をすることもためらっていました。しかし,平成20年4月に新しい審査の基準が発表されたということもあって,同年7月,原告は,ようやく申請に踏み切りました。発病からは実に10年以上の月日が経過していました。
原告の認定申請には,被爆者として生きることを余儀なくされた原告のさまざまな思いが込められていたのです。
申請後,原告は,厚労省からの回答がいつ来るかと心待ちにしていました。しかし,半年以上経っても厚労省からは何の回答もありませんでした。原告は,自分はいつまでこのまま放っておかれるのかと憤りを感じ,家族の反対を押し切って,平成21年4月,本件訴訟を起こしました。被爆者健康手帳の取得さえ躊躇してきた原告にとって,提訴は非常に勇気のいる行為でした。
提訴後,他の原告ら3名は,間もなく全員認定されました。
一人取り残された原告の不安,それでも厚労省からの認定通知を待ち続ける日々の苦しさ,残された日々が確実に日一日と減っていく焦燥感。
原告は,さまざまな感情を乗り越えながらこの裁判を闘ってきたのです。
3.突然の却下通知と弁論再開
 そんな原告に,厚労省は,判決間近の本年4月3日になって,却下通知を送りつけてきました。認定申請から本裁判の弁論終結まで,ほとんど何の連絡もしてこなかったのに。
 原告はこの却下通知を受け取って,心底から落胆しました。そして,自分は積極認定の対象ではなかったのか,積極認定といいながら放射線起因性について,厚労省は何か別の基準をこっそり設けているのではないかと強い憤りを感じました。
 また,通り一遍の却下通知,文字どおり紙切れ一枚を送りつけてきた厚労省のやり方に,厚労省の役人は,被爆者の苦しみを全く考慮しようとしていないと非常に腹立たしい気持ちになりました。
それでも,原告は,裁判所が,このような厚労省の姑息なやり方を認めるわけはないと信じていました。
しかし,裁判所も,弁論の再開を決定してしまいました。
違法確認判決回避のための却下処分と弁論再開申立,裁判所の再開決定によって,原告が感じた絶望感が如何に大きなものであったかをご想像下さい。
落胆のあまり,これ以上裁判を続ける意味があるのかと漏らしたほどでした。
これまでの全国各地裁で出された判決で示された原爆症認定基準に照らせば,原告の申請疾病が放射線に起因していると判断されるのは当然と考えられます。にもかかわらず,原告がもう裁判を続けても意味がないと言うのは,被告に対する怒りと裁判所に対する絶望を表しています。
4.最後に
原告に対する却下処分は,これまでの訴訟で積み重ねられてきた判例の基準を全く無視したものであり,明らかに間違っています。また,弁論終結後に却下した厚労省のやり方は卑劣としかいいようがありません。
そして,裁判所の弁論再開決定は,原告にとっては,さらに追い打ちとなるものでした。
厚労省や被告はもちろんのこと,裁判所におかれても,今一度,被爆とは何かを考えてみられることを期待して止みません。
                               以 上  


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2010.04.16 Fri l ニュース(原爆症裁判) l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

No title
今後、訴訟で争う必要のないように、昨年8月6日の確認書が締結されたのに、これでは、大量の却下処分の取消訴訟が起きてしまいますよね。
最近の民主党は、普天間基地でのホワイトビーチ沖埋立て案に見られるように、「迷走」ではなくて、「逆走」ぶりが目立ちますね。
これじゃあ、自民党の方がよほどましということになりかねませんね。
2010.04.16 Fri l こりゃま. URL l 編集

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