岩波新書に池内了著、「疑似科学入門」(2008年4月22日 第1刷発行)と言う本があります。
 この本は、一般に「ニセ科学」「エセ科学」「トンデモ科学」「超常科学」と呼ばれているものを一括して「疑似科学」と名付け、
  第1種疑似科学
    科学的根拠のない言説によって人に暗示を与えるもの(占い、超能力等)
  第2種疑似科学
    科学を援用・乱用・誤用・悪用したもので科学的装いをしながらその実体のないもの
    (永久機関・マイナスイオン等)
  第3種疑似科学
    「複雑系」であるがゆえに科学的に証明しづらい問題について、
    真の原因の所在を曖昧にする言説
の3つに分類して論じているものです。

 とりわけ第3種疑似科学について興味深い内容が書かれています。
 著者は、「現代科学には、有効性を発揮している得意分野ばかりではなく、明確な判断を直ちには下せない不得意な分野がある。」と言い、系が単純なため理想状態を扱える場合は系を構成する各要素に分解してそれを理想状態で徹底的に調べ上げれば(要素還元主義)、全体が把握できるケースがある。これは科学が得意とする分野であるとし、
 これに対して、気象や気候変動、環境問題や生態系など、系を構成する要素が数多くあり、それぞれの要素が複雑に絡み合っていて解きほぐすことができなかったり、集団として新しい運動が発生したりするため、各要素を理想状態として単独で取り出すことが不可能な場合は要素還元主義が適用できず全体を総合的に見る観点が必要で、これらを「複雑系」の科学と呼ぶと書いています。
そして、

 かつて、フロンがオゾン層を破壊するとしてモントリオール議定書が結ばれようとしたとき、日本政府は「科学的な証明がされていない」という理由で直ちに批准する措置をとらなかった。また、BSEがイギリスだけでなくヨーロッパに広がりつつあったとき、ヨーロッパ連合から調査書が送られてきたのだが、やはり日本政府は「科学的な根拠に欠ける」として調査に協力しなかった。結果に対して明白に原因を指し示す要素還元主義の科学に固執して、「複雑系」に関わって少しでも曖昧な部分があれば「科学的根拠なし」として切り捨ててきたのである。原因と結果が一対一対応をしていない限り科学的とは認めない態度、これは科学の範囲を狭く閉じこめた疑似科学的発想といえるであろう。

 また、水俣病訴訟では最高裁判決で、原爆訴訟ではいくつもの一審判決で、これまでの患者認定基準を改訂すべきことが勧告されたにもかかわらず、環境省や厚生労働省は頑なに従来の基準を改めようとしていない。これまでの基準は、それなりの根拠を持って策定されたのは事実だろう。しかし、限界があることは明白である。水俣病にしろ、原爆疾患にしろ、まだ全容が知られていない病気だから、わかっていないことが多くある。集団でこれほどの被害を受けたことがないからだ。その点を認識して、病態変化や新たな病状の発現を常に監視し、新しく得られた知見を付け加えて基準を改訂しなければならない。人間の肉体は「複雑系」だから、病気によってどのような推移を辿るかが単純に決めつけられないのである。個人差も大きい。しかし、役人は古い基準を確固としたものとして遵守し、新しい基準の要請には「科学的に証明されていない」として改めようとしないのだ。これも人間が複雑系であることを理解せず、疑似科学に固執していると言うべきだろう。

  諫早湾の埋め立てで海水が濁り、多くの海苔や貝の養殖業者が廃業に追い込まれている。潮受け防波堤を建設してから数年も経っての被害だから、直接それが原因であると証明できない。「複雑系」では多数の要素が間に介在するから、時間の遅れを伴って現象が現れることがたびたびである。そのため原因と結果が時間的にも空間的にも離れており、堤防の締め切りが「原因であろう」としか言えないのだ。埋め立てを行った農林水産省は「原因ではない」と主張して堤防を開けようとしない。生態系は典型的な複雑系だから、結果から原因を「科学的に証明しづらい」のである。農水省はそれを利用しているのだ。

   政府や役人が使っている手口の例を挙げた。いずれも現代科学が不得手な複雑系に絡む問題であり、それを曲解・誤用・悪用して「科学的根拠なし」という結論を導き出す点が共通している。第3種疑似科学の典型であろう。

(上記引用文中、アンダーラインは私が引きました)
 厚生労働省が「科学的」と主張している内容が、実は全く科学の名に値しないものであること、そして科学を装うこのような手口は国の常套手段であることを鋭く指摘していると思い、ご紹介した次第です。

追記: N森さんへ。
     4日、高槻で行われた憲法ミュージカルを見に行きました(劇場で会ったね)。
     今回のミュージカルはとてもわかりやすくて、内容もよかったです。
     歌や演技にとても迫力がありました。
     演技者の訴えが舞台の上からビンビンと伝わってきました。
     後2回公演(八尾と河内長野)がありますね。
     がんばってくださいね。  
                                          BY とんよん
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2009.07.05 Sun l 徒然なる思い l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

No title
とんよんさん、ありがとうございます!

明日は八尾で朝からまた色々始まります。
なので八尾で泊まっています。

高槻1165名の集客ができました。
僕の兄家族も総動員です。

一人でも多くの方々と感動を共有できて何よりです。
本日はご来場j、ありがとうございました!!!
2009.07.05 Sun l N森. URL l 編集
No title
>厚生労働省が「科学的」と主張している内容が、
>実は全く科学の名に値しないものであること
ということは、分科会の委員は
(広島や長崎の原爆病院の内科・外科部長、医師会長、広島や長崎大学の教授などの医学者)
いったい何者なのでしょうか。
国から金を貰って懐柔されていると言うことでしょうか。

てっきり原爆病院というのは、
被爆者医療や研究の先頭をいっていたり、
広島や長崎大学はまさにその研究をしていると思ったのですが。

原爆病院なんて役に立たないのですね。
ただ、被爆者を苦しめているだけで。

被爆者の方が病気になれば、
被爆の影響が否定できない以上、原爆症と認定すべきです。
被爆者全員を認定すべきなのです。

同様に、原子力発電所から半径数キロ~数十キロの住民が
がんになっても同様だと思います。

あと、最近は電磁波の被害も言われていますので、
少しでも電磁波を当たる環境にある人が病気になったら、
国の責任で保証をすべきです。
これは第二の原爆症かもしれません。
2009.07.05 Sun l たるぼきん. URL l 編集
No title
医療分科会のメンバーのみんなが悪いわけではないでしょう。
原子力発電や電磁波の問題は公平な観点からきっちり調べてみるべきかもしれませんね。
2009.07.06 Mon l あらま. URL l 編集
No title
なるほど。
公平な観点というのは集団訴訟を起こして、
司法に判断して貰うと言うことでしょうか。

どうせ、科学者に任せていても、原爆病院、長崎や広島大学の教授のように、
御用学者が被害を小さく見せるだけでしょうから。

>「複雑系」であるがゆえに科学的に証明しづらい問題について、
>真の原因の所在を曖昧にする言説
である以上、疑わしきはすべて認定の精神が必要だと思います。

被爆者の方が病気になれば、
被爆の影響が否定できない以上、原爆症と認定すべきで、
被爆者全員を認定すべきだし、
内部被爆の実態が科学的に完全に解明されていない以上、
原子力発電所周辺の住民には保証すべきです。
というより、廃止すべきです。
電磁波に関しても同じです。たしか物理で習いましたが、
電磁波も放射線も本質的には同じもののはずです。

エコと人権の時代なのですから、
原子力発電所や電磁波をだすものとは人間は同居出来ないと思います。
2009.07.06 Mon l たるぼきん. URL l 編集

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