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被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(84)

これまで原爆症認定を受けた原告のみなさんのその後を調査・把握していこう!
2021年新しい年を近畿訴訟全員勝利の年に!
2020年12月2日(水)

 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟傍聴記の前号(11月6日/№83)最後に、10月24日(土)に核兵器禁止条約批准国が50ヶ国に到達、年明けの2021年1月22日(金)条約発効が確定したことを書くことができた。被爆者のみなさん、核兵器廃絶めざす運動に携わってきた国内外の人々は大きな喜びに包まれた。運動してきた人々だけではない。ニュースに接した広範な人々が歓迎の声をあげ、日本政府の条約参加を求めた。暗く困難な事態に見舞われ続けたこの一年だったが、その中で私たちに大きな喜びと希望を与えてくれる出来事となった。
 こうした状況の中で11月13日(金)、今年度最後となるノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟が大阪地裁第2民事部(森鍵一裁判長)・1007号法廷で行われた。大阪府在住のS・Tさん(74歳)が、原爆症認定の更新申請に際して大阪府が却下処分したのは不当だと訴えている裁判で、今回3回目の弁論期日となる。もともとの認定疾病は下咽頭がんだったが、後遺症として発症した嚥下障害、甲状腺機能低下症は原爆症認定の範囲ではないと大阪府が判断したものだ。2回目の弁論期日(9月7日)の内容はノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟傍聴記(82)(2020年9月13日)でレポートした。
 この日の法廷は口頭による意見陳述はなく、提出書面の確認と、主に裁判長と双方代理人との間で争点の整理と確認、それに伴う審理の進め方について協議された。傍聴席から聞くだけではなかなか理解しにくいやりとりだったが、閉廷後の報告集会で、担当の和田信也弁護士から丁寧で分かり易い説明が行われた。以下その要約。

 今回の原告のS・Tさんは下咽頭がんで原爆症認定された人。重い病気になったらいろいろな治療とか、薬とか、手術とかが施されるが、それに伴って次の段階の不調や病気を発症する例、あるいは合併症を発症例は多い。今回のS・Tさんも下咽頭がんは完治したが、しかし後遺症として甲状腺機能低下症、嚥下障害が出てきた。医学的には事例の多いケースと言われている。S・Tさんは当然原爆症認定の更新申請をしたが、大阪府は、甲状腺機能障害と嚥下障害は、もともと認定されていた下咽頭がんではないという理由で却下処分にした。こういうことをされると、不幸にしてがんが完治しなかった人はそのまま更新されるが、運よく治療が功を奏した人はその後どんな後遺症が出ても合併症が出ても全部打ち切られることになってしまう。それは不当だ。
前回の期日で裁判長はポイントとなるいくつかの点を示していた。一つは過去の裁判例から。かって仙台高裁において認定疾病から生じた後遺症を原爆症と認めた例がある。但しこの時の仙台高裁の例は、原爆症認定申請したのは手術後のすでに後遺症が発症している段階での申請だった。それを含めて認定していたので後遺症も認められた。今回は、原爆症認定申請時は手術も何もしておらず、後遺症もまだ出ていなくて、申請する側も認定する側も後遺症が出ることは分かっていなかった。仙台高裁の判決例とはそこが異なる。
 その上で、裁判長は次の点を示した。第一は、原爆症認定制度は、法律上、後遺症の分まで含めて認定する仕組みになっているのではないか。原爆症認定申請のための診断書(医療特別手当用)の「認定疾病に対する治療状況」記載欄には「認定疾病の治療によって生じた疾病(後遺症等)に対するもの」の記載欄がある。認定疾病とは別に「認定疾病以外に関する特記事項」記載欄もある。これは、後遺障害も含めて原爆症のことを考えている証と言えるのではないか。どうして、今になって「病名が違うから認定できない」と(大阪府は)主張することになるのか。
 二点目は、認定疾病は下咽頭がんで後遺症はその認定疾病ではないとされているが、しかし、後遺症についての治療が必要ということは認定疾病の下咽頭がんの治療が必要だと解釈できるのではないか。後遺症の治療が必要ということは、ひるがえって考えると、下咽頭がんにはこの治療が必要だという解釈が考えられる。前回、裁判長は以上のうちどちらを主張するのかと我々(原告側)に問われたので、私たちは両方主張すると答え、今回、詳しくその説明を出すことになった。
 その上で今日、裁判長は次のことを指示した。①原告の一連の疾病に関わるカルテは膨大な量になるので、原告側は下咽頭がん、甲状腺機能低下症、嚥下障害に該当する部分だけをピックアップして、分かり易い表にして提示すること。②被告国側はこれまで何の問題もなく更新申請を認定していたのに急に認定しなくなった。これまでのやり方と異なる。そのことについて厚労省から通達が出されていると聞くので、被告側はその通達文書を提出すること。裁判所もこのことについて勉強する。③もともとの下咽頭がんから後遺症として甲状腺機能低下症、嚥下障害が発症する医学的知見について、原告側は詳しい主張を準備すること。
以上のことを踏まえて、次回期日を2021年2月5日(金)と確認した。

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 報告集会では愛須勝也弁護団事務局長からも状況説明が行われた。東京の東友会では原爆症認定された被爆者のその後の状況についても把握されていて、不当に更新が却下されたりしないようとりくみがなされている。そこの関係者からの話では今回の大阪のS・Tさんのようなケースは東京なら認定されるとのこと。厚労省は、原爆症認定集団訴訟以来のとりくみによって最初の認定条件は広げてきたが、今は、更新の機会に厳しく対処するようになってきた。今年2月25日の最高裁判決を受けて、厚労省は来年から医療に関わる行政を見直してくる可能性がある。そのため今回の近畿のこの裁判は全国的にも高い関心をもって見られている。
 近畿でも集団訴訟以来たくさんの勝訴判決を勝ち取ってきた。しかし、認定を受けて以降の実態が分からなくなっている。東友会はそこをしっかりと把握してカバーされている。近畿では結局切られてしまったケースがいっぱいあるのではないか。あらためて弁護団でも近畿の認定を受けた被爆者のその後の実態を追跡しようと計画している。
核兵器禁止条約が発効されるが、その第6条では核被害者の救済と環境回復が謳われている。そのこととも関連して全国的な課題としてとりくんでいきたい。
 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の、今年最後の報告集会は藤原精吾弁護団長の次のような内容のあいさつで締めくくられた。今年2月の最高裁判決は全体として被爆者に対する国の援護の責任はどこまでなのかが問われた問題。私たちはその責任を追及してきた。被爆者は3つの保障~いのち・暮らし・平和~を求めてきたが、被爆者援護法はごく一部しか実現していない。今の政権の社会保障行政に対する姿勢は自助、共助でしかない。そういう政治と向き合わざるを得ないたたかいだ。核兵器禁止条約の批准国が50ヵ国に到達した。「日本はなぜ参加しない」の声が広がっている。被爆者援護と条約批准は一体の問題だ。条約第6条は被ばくした人に対する国の援護を義務づけている。したがって条約加入は被爆者援護をさらに強めることになる。裁判をたたかう被爆者は少なくなってきたが、来年に向けて、二つの課題のたたかいを更に頑張っていきましょう。

 今年7月29日、84人の原告全員の勝訴判決を勝ち取った広島「黒い雨」訴訟は、原告、支援の人々、そして広範な国民の願いに背を向けて、2週間後の8月12日、国、広島県・広島市によって非情にも控訴された。5年もの年月を費やした一審判決の上に、さらに高齢の原告のみなさんに控訴審の負荷を負わせることになった。11月18日(水)、広島高裁で1回目の弁論期日が行われて控訴審が開始された。今からでも、国・広島県・広島市は控訴を取り下げろ、原告全員に速やかに被爆者健康手帳を交付しろ、の声を上げ続けて、連帯したたたかいを強めていきたい。
 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は2021年年明けの1月14日(木)、高裁第6民事部でT・Iさんの判決を迎える。昨年5月23日の地裁判決で不当な敗訴判決を受けたT・Iさんが、逆転勝訴をめざす判決だ。今年2月28日の眞鍋穣医師の証人尋問では、主尋問で緻密で徹底した証言が行われ、被告側が反対尋問を放棄せざるを得ない事態にまで追い込んだ。あの時のことは鮮明に記憶している。証人尋問のあの日の光景がそのまま判決に反映されることを期待したい。
 その他、ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は2021年度も5人の原告のたたかいが続く。文字通りの全員勝利をめざして新しい年を迎えよう。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2021年01月14日(木) 13:15 高裁第6民事部  202号法廷 T・Iさん判決言い渡し
2021年01月21日(木) 13:30 高裁第12民事部  74号法廷 高橋一有さん弁論
2021年01月26日(火) 14:00 高裁第14民事部  202号法廷 Y・MさんとO・Hさん弁論
2021年02月05日(金) 10:00 地裁第 2民事部 1007号法廷 S・Tさん弁論
弁論期日未定         最高裁上告審 苑田朔爾さん
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2020.12.30 Wed l ニュース(核兵器廃絶) l コメント (0) トラックバック (0) l top