被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(58)
第7民事部の宮本義光さんの判決も年明け1月23日と決定!
ノーモア・ヒバクシャ訴訟は核兵器廃絶運動と一体となって勝利をめざす!
2017年9月20日(水)

 9月14日(木)と15日(金)の2日続きで、7月14日(金)以来2ヶ月ぶりとなるノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の期日を迎えた。9月14日(木)は大阪地裁第7民事部(山田明裁判長)。第7民事部は5人の原告だが、その一人宮本義光さん(78歳、大阪市在住)の裁判が先行して進められ、前回が結審となる予定だった。ところが国側の引き延ばし策とも思える申し出によって今回まで先延ばしにされてきた。やっと迎えた最終意見陳述。今回は宮本さん担当の小瀧悦子弁護士によって、パワーポイントを使ったプレゼンテーションが行われた。
 画像、映像を駆使した意見陳述はかっての集団訴訟では積極的に用いられたと聞くが、最近はそういう機会がほとんどなく、私がノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の傍聴記を担当するようになってから初めてではないかと思う。あらためてこうしたものの活用が必要であると検討され準備されていた。ところが、国側がこうした手法に強く難色を示しているらしく、裁判所も国の主張に配慮してか、容易には認められなくなっていた。7月13日(木)の高裁第13民事部・控訴審の最終意見陳述ではパワーポイントによるプレゼンテーションが相当な力を入れて準備されていたにも関わらず、直前になって認められないことになり、関係してきた人たちはみんな悔しい思いをし、期待していた私たちも少なからず落胆した。
 それが今回の第7民事部ではやっと認められたようだ。小瀧弁護士は「宮本さんの被爆状況について」と題したパワーポイント画像に基づいて陳述していった。宮本さんの被爆状況自体は既にこれまでの意見陳述や本人尋問でも明らかにされてきたことだが、やはりあらためて画像を使っての、視覚に訴えての説明には説得力を増すものがある。長崎原爆のキノコ雲、被爆地や爆心地を示す地図、宮本さんの被爆した稲佐町の学校や発電所の破壊状況、稲佐町から爆心まで何も遮るもののない遠景、お母さんの実家の浦上の被災情景や破壊された天主堂の姿、そして数日間を過ごした防空壕跡まで、十数枚の写真、資料がスクリーンに映し出されていった。
 宮本さんは爆心地から1.8㌔被爆なので直接被爆も激しいものだが、加えて稲佐町から浦上まで爆心地を通っての入市歩行、被災者とともに過ごした防空壕での10日間、飲料用に井戸水を使用したことなど内部被ばくも深刻なものだったはず。そうしたことも最後に訴えられて最終意見陳述は終えられた。

小瀧さん_convert_20170922203527

 裁判長が弁論の終結を宣言し、宮本さんの裁判はやっと結審を迎えることになった。判決は来春年明けの1月23日(火)午後1時10分からと示された。
 宮本さんはこの日もご夫妻で出廷。裁判後の報告集会にも参加された。宮本さん自身、今日の法廷で当時の写真を初めて目にすることになり、当時のことを思い出しながら感慨をもって見られたようだ。72年前のことを脳裏に浮かべ、「原爆はどうしようもないもんだ」「どうしてもああいうもんはやめさせなければいかん」「そのためにこれからも一生懸命やっていきたい」と、あらためて思いを語られた。

 宮本さん_convert_20170922203444

梶本さん_convert_20170922203420

 翌日の9月15日は大阪地裁第2民事部(三輪方大裁判長)の期日。第2民事部は今年4月から裁判所体制が変わり、前回6月15日は裁判の更新手続き陳述が行われたところだ。新しい裁判長になって今回が実質最初の弁論ということになるが、今回は代表して中森俊久弁護士によって陳述が行われた。中森弁護士は終始準備書面を読み上げる形で陳述したが、本当はこの陳述もパワーポイントのプレゼンテーションで行うことを前提に準備されたものらしい。ところが前日の第7民事部とは異なって第2民事部の今回はパワーポイントのプレゼンテーションが認められず、やむなく口頭での陳述となった。陳述は準備書面の要旨について行うようにとの話になっていたようだが、中森弁護士はかまわず全文を丁寧に読み上げ、20分近くを使っての陳述となった。このため、口頭陳述の中でパワーポイントの写真番号、写真の説明もすべて読み上げられることになり、傍聴席の私たちは、読み上げられる写真のあれこれをいろいろとイメージしながら聞くことになった。
 準備書面の内容は、被告国の、DS02を基準にした初期放射線の被爆線量数値のみに依拠した主張が、いかに誤っているかを総括的、総論的に明らかにしたものだった。新しい裁判長に対して原爆被爆の実態を正確に理解してもらうために、一からの説明として準備されたもののようだ。それもすべて具体的な事実、事象を簡潔に紹介しながらの陳述であり、画像の提示はないながらも、とても分かりやすいものであった。
 陳述は、広島と長崎の原爆投下、被害の概況から始まり、原子爆弾の被害が熱線によるもの、爆風によるもの、そして放射線によるものとそれぞれの状況説明が続く。そして放射線被害は初期放射線と言われるものだけでなく、残留放射線及び放射性降下物、内部被曝による影響もあると説明される。特に内部被曝はより深刻であるにも関わらず過小評価されてきたことが強調され、残留放射線や内部被による障害の証明として3つの具体的事例がより詳しく挙げられた。一つは原爆投下から13日も後に救護活動に入って被爆した三次(みよし)高等女学校の生徒たちの障害例。これはドキュメンタリー映画『おりづる』でも採り上げられた実例だ。二つ目は二人の兵士の写真に基づいた説明で、被爆後数週間も経ってから突然発症して死に至った実例が示された。そしてもう一つは、被爆後10年も経て白血病を発症し、若い命を奪われることになった佐々木禎子さんの実例が象徴的な原爆被害として説明された。
 被爆者は今もいつ発症するかもしれない健康への不安を抱いて生きている。偏見と差別によって家族や社会との絆を断たれた人たちも少なくない。原爆被害の多方面への影響の深刻さは想像を絶するものであり、国が主張するような初期放射線量だけで被爆の被害を捉えることなどできるものではないことを訴えて、陳述は締めくくられた。

豊島さん_convert_20170922203656

 報告集会では、この間の画像・映像を使ったパワーポイントなどの意見陳述についての裁判長とのやりとりについて状況説明がなされた。いずれにしても何かのルールや規則で制限されているわけではなく、これからも画像・映像を使った陳述は積極的に主張し求めていくことが必要だということになった。京都で私が関わっている大飯原発運転差止訴訟や、原発賠償京都訴訟などでは今でもパワーポイントを活用した意見陳述が当たり前のように行われている。

 第2民事部の次回期日は11月20日(月)と決まっていたが、さらに次々回期日も年明け1月22日(月)と進行協議で決められた。第2民事部は国家賠償を求めている淡路登美子さん含めて7人の原告だが、その内の一人M・Yさん(89歳)がこの間他界された。これで第2民事部の原告7人の内3人までが故人となられた。訃報を聞くたびに裁判の早期進行の必要性を痛感する。第2民事部でも審理の早くできる原告は切り離して先行させていくことが話し合われたようで、次々回1月の期日は午後2時から5時までと設定された。M・Yさん本人に代わるご遺族に対する本人尋問の可能性もあるとのことだ。



 9月15日(金)は早朝からまた北朝鮮によるミサイル発射のニュースが騒がしい状況を作りだした。北朝鮮の核実験やミサイル発射による挑発行為は許されることではなく、直ちに止めるよう強く抗議をしなければならないが、しかし、このことをもってアメリカによる軍事的威嚇や、日本の軍備拡大が正当化されるようなことがあってはならない。7月7日は国連で核兵器禁止条約が採択された。条約はいよいよ9月20日から調印開始される。核兵器禁止条約への調印、批准によって核兵器の削減、廃絶への大きな一歩を踏み出し、その行動と合わせて北朝鮮の核武装や軍事的挑発を批判、交渉による平和的解決を進めていくのが、被爆者も含めて平和を求める世界の人々の願いだ。
 報告集会では、大阪の被爆者のみなさんによる、大阪での「ヒバクシャの訴える核兵器廃絶署名」を進める連絡会結成に向けたご苦労が報告された。禁止条約調印開始の9月20日に焦点を合わせて記者会見も予定されている。「この署名運動は被爆者が先頭に立たなければどうしようもない。被爆者として最後の落とし前をつける決意でとりくみたい」と決意が披露された。大阪の連絡会にはノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟弁護団も構成団体として参加されるとのことだ。また、愛須勝也弁護団事務局長からは、被爆者の代表を国連に派遣するためのカンパ活動のとりくみなども紹介された。

山川さん_convert_20170922203504

 核兵器禁止条約の圧倒的多数の国々による批准と効力発効、この条約と「ヒバクシャの訴える核兵器廃絶署名」を力に核兵器の廃絶をめざすこと、その大きな運動を背景に東アジアの平和と安定、非核の地域化をめざしていく必要がある。何より、被爆国日本が核兵器禁止条約に調印し批准する、それができる政府をめざさなければならない。ノーモア・ヒバクシャ訴訟は、被爆者の完全救済と共に、核兵器廃絶に向けた運動の一翼も担って、一体のものとして、必ず勝利をめざしていこうと、報告集会で確認された。
 近畿訴訟は、来年1月16日が控訴審の判決(原告6人)、1月23日が地裁第7民事部の宮本義光さんの判決と決まった。その他の法廷、原告も順次審理が進行することになる。この秋から来年に向けての山場をみんなの力で頑張っていきたい。

藤原団長_convert_20170922203615

 この傍聴記を仕上げる直前になって臨時国会冒頭解散のニュースが飛び込んできた。森友問題にも加計疑惑にも蓋をしたまま、何の大義もない最悪の党利党略解散だ。その不当な解散、最悪の権利の濫用であること自体を多くの人々に訴えていかなければならない。しかし、実際に解散されてしまうのであれば、これを安倍内閣終焉の絶項の機会にしていく必要がある。憲法9条を堅持し、被爆者を含む高齢者と社会的支援を必要とする人々に寄り添う政府と政治を実現していかなければならない。そして何より、核兵器禁止条約に調印し、世界に向けて核廃絶を発信していく日本政府となるような、その展望を作り出すチャンスとしていきたい。
 次回のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は11月だが、その時には大きな政治変革の生まれている中で期日を迎えるようにしていこう。


ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程
2017年11月17日(金)11:00  806号法廷 地裁第 7民事部 弁論
2017年11月20日(月)15:00 1007号法廷 地裁第 2民事部 弁論
2018年 1月16日(火)11:00  202大法廷 高裁第13民事部 判決
2018年 1月22日(月)14:00 1007号法廷 地裁第 2民事部 弁論・尋問
2018年 1月23日(火)13:10  806号法廷 地裁第 7民事部 宮本判決
2018年 1月25日(木)11:00  806号法廷 地裁第 7民事部 弁論
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2017.09.22 Fri l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top