被爆二世の

ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記(28

大阪高裁における国の姑息で信義にもとる訴訟遅延策を厳しく批判!

その上で高裁Aグループは7月7日弁論終結を確認

2015年4月20日(月)

 
    1年前の3月20日大阪地裁第7民事部において4人の原告全員が勝訴判決を受けたが、その内武田武俊さん(故人、長崎での入市被爆者)一人が国によって控訴され、大阪高裁(第6民事部・水上敏裁判長)に場を移して争ってきた。その武田さんの控訴審の、昨年12月12日以来3回目となる弁論期日を4月16日(木)迎えた。前回12月の弁論において裁判長は、双方の最終的な主張、反論等は2月28日を期限として提出すること、控訴人(国側)が求めている証人申請の採用は留保するが、却下することもありうるので、その可能性も含めて期限までの主張準備をするよう、と指示されていた。そのような状況から、今日をもって弁論終結となる可能性は高いと思い、あるいは期待して、私たちは大阪高裁別館81号法廷の傍聴席に着席した。

しかし、この日弁論終結とはならなかった。法廷で被控訴人(原告側)代理人を代表して豊島達哉弁護士が述べた意見、そして終了後の報告集会での説明によると、次のような経緯であった。

 

12月12日の前回弁論以降、年明け1月30日に大阪地裁第2民事部において7人の原告に対する判決言い渡しがあった。甲状腺機能低下症以外の疾患の3人の原告の訴えを退けるという大きな問題を持つ判決ではあったが、判断の基本、枠組みについては積み重ねられてきた司法判断を維持し、DS02等の国の線量評価方法には限界のあることを引き続き厳しく指摘するものであった。武田さんの弁護側は1月30日の判決においてもこのように判断されたではないかと、そのことを引用して追加の主張をした。

ところが国側は、指示された主張、反論期限をはるかに過ぎて、第3回弁論期日の直前、3日前(4月13日)になって上申書を提出し、今後さらに1ヶ月以上の時間を要して新たな反論を用意したいと言いだしてきた。内容は、弁護団が1月30日地裁判決を引用して主張したことは、新たな内容の主張の追加であり、これに対する反論をしたいとのことであった。言いがかりもはなはだしい。1月30日判決の引用は、直近の事実をも例に引いてこれまでの主張をより分りやすく徹底するためのものであり、内容的に新しいことが加えられたものではまったくない。原爆症認定訴訟に多少とも関わる者であれば誰にでも分る自明のことだ。また1月30日地裁判決のことを論拠にするのであれば、指示された期限までに反論、主張を準備することは十分可能であったのに、それはせず、今になってこれから準備に入っていきたいとはどういうことか。さらに国側は弁論期日前日(4月15日)になって突然新しい証書をいつくか送りつけてきてその採用を求めた。

あたかも新しい争点、論点が主張されたかのように描いて弁論続行を求め、裁判所の指示する期限などまったく無視して上申書や書証を提出する。傍若無人なことこの上ない、徒に裁判を長引かせることだけを狙った悪質で姑息な行為にしか思えない事態が、この間の経緯だ。

この日の法廷で豊島弁護士は、ここにきての国側の態度、4月13日付控訴人上申書を厳しく批判した。裁判所に対しては、国側の意見に左右されることなく速やかに口頭弁論を終結し、一日も早く控訴審判断を下すようにと訴えた。4月15日付国側書証は“時期に遅れた攻撃防御方法”として却下するよう求めた。

その中で豊島弁護士は、“被爆者には時間がないこと”をあらためて強く主張した。被爆70年の区切りの年、多くの被爆者が生きているうちに原爆症認定行政が根本的に改定されることを、裁判で争う必要のない制度になることを願い、待ち望んでいることを明らかにした。“被爆者には時間がない”。何よりもこの裁判を争ってきた武田武俊さん自身が、一審で勝訴しながら控訴されたたために遂に認定証書を手にできず、無年の思いで世を去られた事実が、そのことを訴えているではないか。裁判が長引けば、武田さんの願いを引き継いだご家族を更に苦しめることになり、多くの被爆者たちの気持ちも踏みにじることになる、と強調した。

 

国側の上申書等に対する意見表明の後、裁判官によるいつになく長い時間の協議が行われ、その上で今後の方向が示された。結論は、国側の上申は受け入れて弁論は続行する。但し国側の主張、意見の提出期限は5月末までとし、原告側の主張、意見も6月末までとして期限を切る。いずれにしても裁判を早く終わらせる姿勢は変えず、次回口頭弁論期日を7月7日とし、この日をもって終結とする、ということになった。国側の申し出も頭から拒否はしないが、早く終結をという原告側の意見にも配慮する、という折衷的な判断のようだ。尚、国側が昨年末求めていた証人採用は、明確に不採用とされた。


いつものように大阪弁護士会館に会場を移して報告集会を行った。通い慣れた地裁の傍聴とは異なりあまり機会のなかった高裁はいろいろと勝手が違う。名称は、国の控訴だから国側が控訴人となり、原告(被爆者)側が被控訴人と呼ばれる。代理人席も地裁とは真反対に代わる。そのあたりのややこしさを解きほぐすことも含めて、今日の法廷でのやりとりが丁寧に説明された。そのおかげで私たちの理解も進むことになった。

それにしても国側のあまりにも傲慢なこの態度、やり方はこれが国民の負託を受けた国家行政機関のやることだろうか!と、怒りを新たにする。それでもとにかく弁論終結の日は今度こそは具体的に定まった。7月7日(火)結審に向けて、そしてその後の判決に向けて、“公正な判決を求める”高裁署名運動を中心に一層頑張っていく必要がある。

この日の報告集会では、その他にいろいろとあいさつや報告などが交わされて、多方面にて奮闘されているみなさんが励まし合う機会にもなった。近畿訴訟原告団長の和田文雄さんは体全体の疲労感を強く感じながらもそうした体調をおして毎回の裁判傍聴に参加されている。一昨年ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟で勝訴判決を受けることができたことへの感謝の思いを込めて微力でも力になりたいからと。今の原告のみなさんへの激励と国の態度に対する憤りが語られた。間近に迫った2015年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に参加される被爆者の方からは精一杯頑張ってくるとの決意が披露された。今月27日(月)告示5月17日(日)投票の大阪住民投票も大阪府市民の将来を決める重大な問題だ。大阪市をつぶさせないようにと、多くのみなさんの協力をと訴えられた。

最後に藤原精吾弁護団長から次のようなあいさつが行われてこの日の集会は締められた。国は国民の運動、要求に対する体制を強化し、反撃の姿勢を強めようとしている。具体的には、行政訴訟などで国側を代表して代理人を務める法務省省務部が今度局に格上げされる。私たちの原爆症認定訴訟はもちろん、原発再稼動問題も、沖縄の米軍新基地問題も、集団的自衛権問題も、あらゆることについて国としての体制、態度を強化しようということだ。私たちの運動もまだまだ決して大きくはなく、小さい。司法の判断だけを頼りにするのではなく、国民世論、国際世論に訴えて、運動を大きくしながら被爆者の救済が実現するよう進んでいこう。

 

今回の弁論期日の2日前、4月14日(火)、福井地裁で高浜原発3、4号機運転差し止め仮処分決定が下された。昨年5月21日の福井地裁大飯原発3・4号機運転差し止め判決に続く画期的な司法判断だ。海外の情報を得る機会の多い知人から今回の決定についての話題を聞かされた。海外でも今回の仮処分決定は高い関心を払われ、トップであるいは大きな扱いのニュースで報じられたそうだ。その際、意外にも、日本では2012年5月以来ほぼ3年間に渡って54基の原発全てが運転停止になっている(一時期の大飯原発を除いて)状態が海外ではあまり知られていなくて、そのことに対する驚きも合わせてニュースは広がったそうだ。外から見た方が意外と本質が鮮明に見えるのかもしれない。原発大国日本ですべての原発を停止させ続けていること、これはすごいことなのではないか。国民世論、市民運動の力こそがこのことを実現している。その力が背景にあればこそ原発再稼動を許さない二度に及ぶ司法判断は生み出されているのだと思う。

3月30日、沖縄県では翁長知事が名護市辺野古での米軍新基地建設作業を中止するよう指示を出した。防衛省が行政不服審査法に基づく執行停止の申し立てを行い、農水相が効力停止措置を決定するという茶番のような掟破りともいうべき措置によって、とりあえず工事は止まっていないが、安倍政権の被った打撃、衝撃は大きかったと思う。

暴走する安倍政権、何でもやりたい放題という印象は強いが、意外と政権基盤は脆く、国民世論、市民運動の高揚、一つひとつの司法判断、沖縄のような地方自治体の決定等々によって追い詰められ、危機感と焦燥感を強くしているのではないかと思う。

ノーモア・ヒバクシャ訴訟も勝利を信じて、必ず原爆症認定制度の抜本的改革も成し遂げられることを確信して、頑張っていきたい。

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ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟今後の日程

6月 6日(土)

14:00

大阪グリーン会館

訴訟支援のつどい

6月10日(水)

11:00

地裁第2民事部 1007号

弁論

7月 7日(火)

14:00

高裁第6民事部 別館8Ⅰ号

弁論終結

7月14日(火)

11:30

地裁第7民事部 806号

弁論

尚、5月20日(水)には広島地裁において、白内障を申請疾患とする原告に対しての判決言い渡しが、10月29日(木)には東京訴訟第一陣判決言い渡しが行われる。


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2015.04.22 Wed l ニュース(原爆症裁判) l コメント (0) トラックバック (0) l top