被爆二世の
ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟・裁判傍聴記 ⑦
全国の運動を励まし、核廃絶の世界の期待に応えていくためにも
近畿の運動の一層の強化を! 6月1日「支援の集い」で確認 
大阪地裁第7民事部の医師証言も終了、10月結審へ!

2013年6月11日(火)


 6月1日(土)午後2時から大阪グリーン会館2階ホールにて「ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟の全面勝利をめざす支援の集い」が開催された。原告、弁護団、支援の人々あわせて85人が参集した。8月2日の第2民事部第一陣の判決をはじめ山場を迎えるこの夏に向けあらためて団結を強め、運動を強化していこうというのが開催目的だ。近畿訴訟の持つ意味、役割をもう一回り、二回り広いところからも学び確認していこうと、二つの講演が企画された。一つは阪南医療生協診療所長の真鍋穣医師による「核兵器の非人道性に関するオスロ会議に参加して」、もう一つは日本被団協の田中熙巳事務局長による「原爆症認定制度見直し検討会の現状と課題」。
 真鍋先生の講演は、今年3月、ノルウェー・オスロにて「核兵器の人道的影響に関する市民フォーラム」(3月1日~2日)と「ノルウェー政府主催・核兵器の人道的影響会議」(3月4日~5日)が連続して開かれ、被団協の田中事務局長と共にそれに参加された先生のレポートだった。核兵器の非人道的観点から非合法化をめざそうとする世界的な動きの中から今回の国際会議は生まれている。真鍋先生らは被爆者の被爆体験と原爆医療訴訟が明らかにしてきた長期にわたる健康被害を告発する資料を作成準備して参加され、その内容がこの日の集会でも紹介された。田中事務局長が日本政府代表の一員として政府主催会議に出席、発言もされるという画期的なこと、しかし日本国内ではそれが報道されていないこと、真鍋先生も市民フォーラムで報告をし、それまで日本の原爆症認定訴訟のことは知られておらず、新しい報告だとヨーロッパの活動家から受け止められたこと、等も紹介された。国連加盟国の過半数130カ国が参加した今回の会議は大きな成功であったと評価されていること、NPT再検討会議が議論されている間にも世界の核兵器禁止条約に向けた動きは大きな潮流になろうとしていることを、会議に参加しての実感を込めて報告された。
 オスロ会議以後の動向も話された。4月24日、スイス・ジュネーブでのNPT再検討会議第2回準備委員会で南アフリカ提案の「核兵器の人道的影響に関する共同声明」は74カ国もの賛同を得たが、日本政府はそれに加わらず海外から驚きと落胆と激しい非難を浴びたのは周知の通りだ。真鍋先生は日本政府の“犯罪性”が浮き彫りになったと断罪、海外の人達からは日本のNGOももっと頑張れと叱咤激励されていることなども語られた。
国内だけに目を向けているとなかなか理解できないことだが、世界は核兵器廃絶に向けて確実に動いていることを実感する、日本政府を変化させればそこに大きなインパクトを与えることになる、そのためには私たちの責任も重く、原爆症認定訴訟に勝利していくことも重要、重大であると、あらためて強調された。

 田中事務局長は、厚生労働省の「原爆症認定制度のあり方検討会」の現状とこれからの課題について講演された。厚生労働省は本音のところで抜本的制度改正の意思はなく、検討委員の少なくないメンバーがそれに追随、同調している困難な状況について報告された。検討委員の中には「新しい審査方針」さえ科学的知見に基づかないとして元に戻そうと主張する委員もあるようだ。こうした状況打開のために被団協は、個々人の被曝線量を基準にした認定制度を廃止し、すべての被爆者を対象とした新しい認定制度に抜本改正していく提言を出すに至ったと、その事情と内容を説明された。
放射線起因性の判断には「積極的に認定する範囲」として3つの被爆条件と7つの疾患が定められた。しかし心筋梗塞などの疾患については「放射線起因性が認められる」という限定がつけられ、一定の距離、時間を超えた被曝の場合はまったく機械的に却下処分されているのが実態で、それが「8・6合意」以後も続く大量却下処分の主要な内容となっている。ここを変えていくのが当面の焦点だ。厚労省は「機械的ではなく総合的に判断している」と弁解するが、その具体的事例の開示を求めても一切示されることはない。実態がないから示すことができないのだ。ノーモア・ヒバクシャ訴訟に勝利し、「総合的に判断する」実態を作っていくことがとても重要になっている。訴訟勝利に向けて被団協も積極的に支援していくことが述べられた。あわせて被団協提案の「線量に基づかない認定制度」を実現していくために、全国でも声を大きくしていこうと呼びかけがなされた。
 二つの講演の後に弁護団事務局長の愛須勝也弁護士から「裁判闘争の現局面について」と題した報告、提起が行われた。愛須弁護士の報告は集団訴訟終結時の状況から始まり、近畿では集団訴訟後の新しい訴訟を義務付け訴訟という形で全国に先駆けて始めてきたこと、その後どんどん追加提訴が進められてきたこと、昨年からノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟と銘打って訴訟をとりくんできたこと、等のこの間の経緯について説明されていった。ノーモア・ヒバクシャ訴訟は全国に広がり、現在8地裁、原告数104人になって闘われている。(内ノーモア・ヒバクシャ訴訟として継続している原告が94人、判決確定者が3人、独自に係争している原告が7人) 厚生労働省との関係でも近畿訴訟は重要な意味をもっており、全国の中でもトップを切って裁判は進行しており、8月2日の判決は全国の裁判にも、認定制度の検討にも大きな影響をもたらすことになる、ことが強調された。障害に苦しむ全国の被爆者を励まし勇気づけるために、認定制度抜本改正を実現していくために、世界の核兵器廃絶運動の潮流に応えていくためにも、裁判を戦い抜き、勝利していこうと呼びかけられた。特に、我々は、すなわち近畿訴訟の原告、弁護団、支援ネットの人々は、全国も、世界をも視野に入れて、その起点になるべく運動をすめていこうとの提起だった。それだけの高い志と、誇りと、自覚を持っていこう!との熱いメッセージだったように思う。
「支援の集い」では途中、三浦直樹弁護士による素晴らしいピアノ演奏も披露され、心豊かになる一時も過ごすことができた。豊島達哉弁護士から現在近畿で係争中の原告は32人になること、今日の集会に参加されている4人の原告、これから提訴される予定の1人の被爆者、集団訴訟時の元原告(ご遺族含む)3人がそれぞれ紹介された。
最後に西晃弁護士から行動提起と閉会挨拶が行われて「支援の集い」は終了した。4つの行動提起の要旨は次の通りだった。①8月2日判決の訴訟全面勝利に向け裁判所への要請署名のとりくみ強化、②現在係争中の裁判勝利に向け傍聴支援のとりくみ強化、③各地の運動と連携しながら国・厚労省に対し認定基準の抜本改正を求めていくこと、④核兵器廃絶と脱原発依存社会実現に向け、2013年夏、それぞれの創意あるとりくみを展開しよう。

 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟は6月6日(木)大阪地裁第7民事部において、前回(5月16日)に引き続き医師証人尋問が行われた。11:00開廷、午前中は阪南医療生協診療所長の真鍋穣医師が証言台に立った。主尋問の質問は愛須弁護士が担当。真鍋医師の証言は大阪府阪南市在住の長崎の被爆者、武田武俊さんの認定申請の正当性を放射線起因性、要医療性について証言するのが目的だ。武田さんの認定申請疾患は肝細胞ガンであり、本来「放射線起因性が認められる」の条件さえ必要としない積極的認定疾患のはずなのだが、国・厚労省は被爆者健康手帳申請書類に記載された入市日が原爆症認定申請で記載されている日と異なっていることなどを理由に却下した。このことは2012年10月11日付の長谷川千秋さんのノーモア・ヒバクシャ訴訟傍聴日誌(32)に詳しく著されている。そのことにも触れながら愛須弁護士の質問は始められた。最初に武田さんの被爆状況から相当量の残留放射線による直接被爆、内部被曝の影響を受けていること、発症した急性症状も放射線影響によるものだと証言された。次に被告・国側がC型肝炎ウィルス感染を理由に放射線起因性を否定する主張をしていることから、そもそも肝臓がんの放射線起因性についてその医学的知見の基本から展開されていくことになった。慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに至る発生機序、内容、特徴についての解説がされていく。数多くの臨床実績に基づく証言が何よりも力強いものに感じられた。いくつもの実証的論文も引用しながらウィルス感染にもかかわらず肝機能障害、肝臓ガンに放射線起因性が認められることが説明されていった。原爆症認定制度の新しい審査方針でも東訴訟判決、集団訴訟判決に基づいて慢性肝炎・肝硬変が積極的認定対象疾病になったこと、そういう意味ではすでに決着のついていること、「放射線起因性が認められる」という限定をつけたこと自体に大きな誤りのあること、が厳しく指摘もされた。
被告・国側からの反対尋問はすべて慢性肝炎、肝硬変等に関わる論文解釈についてだけに終始した。争点は原告・武田さんの放射線起因性についてのはずではないのか。武田さん個人の被爆体験、発症経緯について、具体的に問い質すような質問、姿勢はないものかと思った。

 午後は1:30再開、東神戸病院の滝本和雄が大阪市在住の長崎の被爆者S・Yさんの証人として証言台に立った。原告側主尋問は三浦直樹弁護士が担当。S・Yさんの認定申請疾患は甲状腺機能低下症とC型肝硬変。しかも爆心地から2.1キロメートルの直爆であり積極的認定対象のはずだ。しかしS・Yさんも本人と父親の被爆者健康手帳記載内容を理由に却下されており、その経緯は今年1月17日の原告本人尋問において明らかにされている。(被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟傍聴記①2013年1月23日)

 S・Yさんについても被爆状況から相当量の放射線を被曝していること、典型的な急性症状であることが証言された。C型慢性肝炎、肝硬変の特徴、発生機序、放射線起因性の知見について、大槻倫子弁護士が担当。午前中の真鍋医師と同様多くの臨床経験に基づいて、またいくつもの実証論文を引用しながら証言されていき、S・YさんのC型肝硬変の放射線起因性は断言された。続いてS・Yさんの甲状腺機能低下症についても、甲状腺機能低下症一般の放射線起因性についての説明と、S・Yさんの放射線起因性についての証言がなされた。

 滝本医師に対する被告側反対尋問も論文の解釈をめぐるものが大半だった。但し、滝本医師の場合二つの疾患を証言しているのでその分だけ反対尋問もしつこいように感じた。尋問の終盤、甲状腺機能低下症の放射線起因性を否定しようとする質問が続けられた時、原告代理人席から藤原精吾弁護団長が尋問に対する異議を申し立てた。甲状腺機能低下症の放射線起因性はすでに被告である厚労省自ら認め、積極的認定疾患にも定められていることだ。被告の反対尋問は甲状腺機能低下症と放射線起因性との関係をそもそも否定すべくそれを立証しようする質問になっている。尋問は個別の起因性について争われるべきであって、前提を否定するための内容であってはならない。質問の撤回を求める、というものだった。質問が撤回されることにはならなかったが、藤原団長の発言はやや疲れの広がっていた邸内を一瞬にして引き締め、それだけでなく午前中の尋問含めて被告・国側の尋問内容がはなはだ疑問の多いものであることをあらためて全体に印象づけることになった。

 滝本医師への反対尋問の途中で被告側代理人から「あなたは放射線起因性が否定できない限りは広く被爆者を救済すべき立場をとるのか」と尋ねられた。「根拠が曖昧でも証明するのか」と「根拠の希薄さや判断のいい加減さ」を強調したかったのだろうが、滝本医師は迷うことなく「そうです」と明言した。質問はそっくりそのまま被告・国側とその代理人に返されるべきだろう。原爆症認定審査は、被爆者救済の立場に立ち、被爆者の実態に即して行う、と厚生労働省自ら宣言していることではないか。
この日の審理は16:00過ぎ終了。第7民事部の医師証言も一人を除いてこれで終了し、10月15日予定の結審を迎えていくことになる。
16:30から会場を大阪弁護士会館に移して報告集会が行われた。今日証言されたお二人の医師は病院、診療所の本来の職務のため残念ながらいずれも欠席となった。
 最初に第5次却下処分取り消し訴訟の原告の一人である梅本光夫さん(大阪市在住の長崎の被爆者)と第二民事部の義務付け・取り消し訴訟の原告の二人の提訴取り下げが報告された。梅本さんは申請疾患が前立腺がんと読み変えられことになって晴れて認定を勝ち取った。これは画期的なことでノーモア・ヒバクシャ訴訟を闘ってきたことの成果の一つと、今年3月7日裁判後の報告集会で報告され、確認されている。(被爆二世のノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟傍聴記③2013年3月10日)
 8月2日の判決は、事前集会、入廷前行動、旗出し、中之島公会堂での報告集会の一連の行動を予定し、準備していくことが報告された。また第7民事部は今日で証人尋問終了、10月1日までに最終準備書面提出、10月15日が結審となる日程があらためて確認された。
 この日、東日本大震災からの瓦礫取扱いをめぐる問題を提訴して低線量被曝の危険性を訴えている黒田さん(大阪在住)が裁判傍聴と報告集会に参加された。原爆症認定訴訟のことを知り強く関心を持って参加したこと、今日の感想、そしてこれからも一緒にとりくんでいきたいとの挨拶が行われた。

 最後に弁護団幹事長の尾藤廣喜弁護士から下記のようなまとめが行われてこの日の報告集会は終了した。肝機能障害についても、甲状腺機能低下症についてもすでに決着のついていることなのに、今日の尋問のように国の態度はいつまで経っても変わらない。8月2日の判決はこうした国の態度に止めを刺すようなパンチの利いた判決を期待したい。そのためにできることはすべてやりきり、頑張っていこう!
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2013.06.16 Sun l 未分類 l コメント (1) トラックバック (0) l top